機械工学

エクセルギーとは?熱力学の基本理論からわかりやすく解説|エクセルギーの求め方は?

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エクセルギーとは

昨今たびたび深刻な被害をもたらしている気候変動は人類の活動がもたらした地球温暖化によるものと考えられており、エネルギーの使い方を抜本的に見直し、改善していく必要があります。
本コラムでは、エネルギーを考える上での指標である「エクセルギー」の基礎知識について解説します。


※このコラムは熱力学の基本理論に立脚しています。
 前提知識を学びたい方は、連載・「機械設計マスターへの道」の熱力学の基礎知識①~⑤をご参照ください。


1.エクセルギーとは?

エクセルギー」(exergy)とは、「着目する系(熱力学的な境界で区分される空間または質量)が環境と熱的に平衡状態になるまでになし得る最大仕事」、つまり系から取り出すことが可能な最大エネルギーのことであり、「有効エネルギー」と呼ばれることもあります。
したがってエクセルギーの単位は、エネルギーと同じJとなります。

異なる種類のエネルギーを共通の指標で表して比較するための「ものさし」ともいうことができるものです。

なお「エクセルギー」という言葉の語源は、「取り出すことができる仕事」を意味するギリシャ語に由来し、1950年代にラントという名のドイツ人の熱力学研究者が作った用語とされています。

 

2.エンタルピーとエクセルギー

ある基準の温度、圧力状態から変化したときに系に蓄えられたエネルギーの総量を表す言葉として「エンタルピー」(enthalpy)があります。エンタルピーHは、内部エネルギUと仕事PVの和として表されます。
(※エンタルピーの基礎知識は、上記コラム②を参照)

エンタルピーのすべてをエネルギーとして有効に取り出せることは不可能です。
系から取り出すことが可能な有効エネルギーすなわちエクセルギー、エネルギー総量であるところのエンタルピー、無駄になるエネルギー(無効エネルギー)の関係を模式的に表すと下図のようになります。
  
 

エンタルピーとエクセルギー
【図1 エンタルピー/エクセルギー/無効エネルギーの関係】

 

3.エネルギーの種類とエクセルギー率

全エネルギー(エンタルピー)から有効に取り出すことが可能なエネルギーがどれくらいかを示す割合を「エクセルギー率」といいます。

エネルギーには様々な種類のものがありますが、家屋や建物で消費されるエネルギーとしては、電気(照明、空調)と熱(給湯、冷暖房)の2種類があります。現状では電気や熱の発生源として化石燃料を用いる割合が未だ多いので、化学エネルギーも加えた3種類について、エクセルギーの観点からエネルギーのより効率的な使い方を検討していくことが重要となります。

化学エネルギーのエクセルギー率はガスの場合で0.95程度といわれています。液体(灯油など)、固体(石炭など)の順にエクセルギー率は0.95より高くなります。

電気のエクセルギー率は1.00、すなわち電気エネルギーは100%利用することが可能です。ただし、電気を作るまでに消費される無効エネルギーは含めていません。あくまで電気エネルギーに変換された後の話しです。

熱エネルギーのエクセルギー率は化学エネルギーや電気エネルギーに比較して非常に低く、エネルギーとして利用するときの温度差が小さい(熱落差が小さい)ほどエクセルギー率は低下します。

 

熱落差とエクセルギー
【図2 熱落差とエクセルギー】

 

4.カルノーサイクルと熱エネルギーのエクセルギー率

熱エネルギーのエクセルギー率を考えるときにカルノーサイクルが参考になります。
カルノーサイクルは等温変化と断熱変化で構成される理想的な可逆変化で現実には存在しません。
(※カルノーサイクルの基礎知識は、上記コラム④を参照)

しかし、熱エネルギーのエクセルギー率がなぜ低いのかを理解する上で、カルノーサイクルにおけるカルノー効率の計算式が役立ちます。
カルノー効率をηc、熱源側の温度T1[K]、低温側(環境)の温度T2[K]としたとき、

 ηc = 1-T2/T1

 T1 = 100[℃]、T2 = 2[℃]のとき ηc = 1-(2+273)/(100+273) = 0.263
 T1 = 20[℃]、T2 = 2[℃]のとき ηc = 1-(2+273)/(20+273) = 0.061

このようにT1の違いによって、熱エネルギーのエクセルギー率が大きく変わることを、カルノー効率の式を用いることで理解することができます。
実在するサイクルにおけるエクセルギー率を求めるには複雑な計算が必要となり、熱源の温度低下や排熱先の温度上昇の影響によりエクセルギー率はさらに低くなります。例えば2℃の外気温に対して20℃の温風で暖房する場合のエクセルギー率は0.03程度(カルノー効率の50%程度)になります。

 

カルノーサイクル(p-V線図/T-S線図)
【図3 カルノーサイクル】

 

5.無効エネルギーとエントロピー(エクセルギーの求め方)

エントロピー(entropy) は、次の式で定義される状態量です。

 ⊿S = ⊿Q/T (Q:熱量、T:温度)

系の状態1(変化前)と2(変化後)におけるエントロピーをそれぞれS1,S2とすると、自然界における熱の流れであるところの不可逆変化に対しては S2-S1>0
つまりエントロピーは増大することはあっても減少することはなく、自然界の熱の流れは、エントロピーの総和が増大する方向に進む、ことを意味しています。

ある系に与えられた熱量を ⊿Q[J]、熱源側の温度T1[K]、環境温度T2[K] としたとき、
⊿Qは系の全エネルギー(エンタルピ―)の増加量 ⊿H[J] に等しいので、
カルノー効率の式を用いて、系に与えられたエクセルギーEx[J]を次のように求めることができます。

 Ex = ⊿Qx(1-T2/T1) = ⊿Q-T2x⊿Q/T1 = ⊿H-T2⊿S

エクセルギーを、エンタルピーから環境温度とエントロピー増加量の積を引いた値として表すことができます。つまり、無効エネルギーは、エントロピー増分が大きいほど増大することを表しています。

無効エネルギーを低減するためには環境温度を下げるか、エントロピー増分を小さくするために同じ熱量増分を与えるための温度を上げる、すなわち熱落差をなるべく大きく取ることが必要であることがわかります。

 

6.コンバインドサイクル発電(エクセルギー率を改善した事例)

火力発電の方式で、ボイラで水を沸騰させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回転させタービンと直結した発電機で発電する方式を従来型(コンベンショナル)火力発電といいます。
タービンを回した後の蒸気は冷却されて水に戻りボイラ給水ポンプ(BFP)でボイラへ送られ再び蒸気になります。これを「ランキンサイクル」といいます。ボイラで得られる蒸気温度は、各種改良の結果、700[℃]級のものも実用化されていますが、それでも発電効率は40%程度です。

これに対し、最近は圧縮ガスを1500[℃]の高温燃焼器で燃焼させ、高温ガスでガスタービンを回転させ(ブレイトンサイクル)、直結した発電機で発電し、燃焼した後の600[℃]程度の排熱でボイラを熱して蒸気を作り蒸気タービンでさらに発電するという「コンバインドサイクル発電」が主流となっています。最新のコンバインドサイクル発電では発電効率60%のものも実用化されています。

これは、高温ガスを利用することで、環境温度に対する熱落差を大きくとって、熱エネルギー利用におけるエクセルギー率を改善した事例ということができます。ただ高温燃焼とするだけではガスタービンの排熱を捨てることになりエクセルギー率が低下しますので、排熱回収ボイラ(HRSG)で蒸気を作り、2段構えで発電を行います。

 

コンバインドサイクル発電
【図4 コンバインドサイクル発電】

 

以上、本コラムでは、古典的な熱力学との関連、そして熱エネルギーのエクセルギー率を向上させるためには熱落差を大きくとることが重要、という点を中心にして解説しました。

熱エネルギーの効率的な利用方法を考えるときに、エクセルギーは重要な指標となります。
システム設計、省エネ設計などに役立てるためにエクセルギーを詳しく学びたい方は、エクセルギーの専門家による技術セミナーを受講されることをお勧めいたします。

 

(アイアール技術者教育研究所 S・Y)

 


《引用文献、参考文献》

  • アベイラブルエナジー研究会「エネルギーの新しいものさし エクセルギー」,(社)日本電気協会新聞部

 

エクセルギーを学べる技術セミナー情報
 

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