【機械設計マスターへの道】伝熱3形態の最重要ポイントを整理(熱伝導/熱伝達/放射)[熱力学の基礎知識⑤]

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伝熱、熱移動

今回は「熱移動」(Heat Transfer)、すなわち高温部から低温部へ熱が伝わっていく現象である「伝熱」の基本について解説します。

伝熱のしくみには、「熱伝導」「熱伝達」「放射」という3つの基本的な分類があります。
熱流束や熱伝導率など、伝熱に関する計算についても取り上げますので、参考にして下さい。

1.熱伝導 (Heat Conduction)

固体内部における高温部から低温部への、あるいは高温固体から低温固体への熱移動を「熱伝導」といいます。物質を構成する分子や原子が熱により振動して生じた熱エネルギーが低温部の分子や原子に伝わっていく現象です。

熱伝導は気体や液体でも生じますが、流れを伴う場合には2.の熱伝達となります。

 

熱伝導の基本式「フーリエの法則」とは?

図1のような固体(平面壁)内部を熱が高温部から低温部へ伝わるときの伝熱量(伝熱速度)Φ[W]は、次式で表されます。この関係を「フーリエの法則」といい、熱伝導の基本式です。

 Φ=-λ(dT/dx)A ・・・(1)

ここにdT/dx[K/m]は温度勾配、A[m2] は伝熱方向の断面積、Φは単位時間当たりの伝熱量、すなわち伝熱速度となります。
単位面積当たりの伝熱量 q=Φ/A[W/m2] を「熱流束」といい、λ[W/(m・K)]を「熱伝導率」いいます。

λが大きいほど熱が伝わりやすくなります。
λは一般に、金属では大きく、水や空気では小さくなります。またウレタンフォームやグラスウールなどは、λが極めて小さい(鉄の約1/1500程度)ので断熱材として多く使用されます。

図1で、壁温を高温側T1、低温側T2、壁厚Lとすれば、(1)式より
 Φ=-λA(T2-T1)/L=(T1-T2)/(L/λA)=(T1-T2)/R  ・・・(2)

ここに、R=L/(λA) [K/W] Rは「熱抵抗」(または伝熱抵抗)で、熱の伝わりにくさを示す指標です。

熱転導

熱流束や熱伝導の計算は重要ですので、正しく理解しておきましょう。
 

2.熱伝達(Heat Convection)

1)熱伝達

流体から固体へ、または固体から流体への熱移動を「熱伝達」といいます。

図2に示すように、流体が温度差のある固体に接触する箇所には、「温度境界層」という温度が急変する薄い層ができます。

固体の断面積がA一定とすれば、流体Ⅰから固体への伝熱速度Φ1は、流体Ⅰの温度T1と流体Ⅰ側の固体壁面温度Ts1の差に比例し、固体から流体Ⅱへの伝熱速度Φ2は、流体Ⅱ側の固体壁面温度Ts1と流体Ⅱの温度T1の差に比例します。
この比例定数α1[W/(m2・K)]を「熱伝達率」(または熱伝達係数)といいます。

 Φ1=αA(T1-Ts1) , Φ2=αA(Ts2-T2)  ・・・(3)

 

2)対流熱伝達

流れのある流体内の伝熱を「対流熱伝達」といいます。

流体内部の温度差によって密度差が生じて流体内部流れが発生し、高温部から低温部へ向かって熱移動が起きる場合を自然対流熱伝達、攪拌やポンプなど外的な力により流れが生じて、それにより熱移動が行われる場合を「強制対流熱伝達」といいます。
自然対流の場合は密度差により生じる浮力、強制対流の場合には流速が、伝熱速度に影響を及ぼします。

 

3)熱貫流

様々な工業プロセスで用いられる熱交換器では、図2のように流体⇒固体(壁)⇒流体という熱移動が行われます。このような伝熱を「熱貫流」といいます。

流体Ⅰ→固体の熱伝達率α1,表面積A1、固体壁の熱伝導率λ、平均面積Aav、固体-流体Ⅱの熱伝達率α2、表面積A2とするとき、
 1/UA=1/α1A1+1/λAav +1/α2A2  ・・・(4)
 伝熱速度 Φ=(T1-T2)/(1/UA)   ・・・(5)
U[W/(m2・K)]を「熱貫流率」といいます。

熱貫流

 

4)熱伝達の検討に用いられる無次元数

熱伝達率αや熱貫流率Uは、流体の種類、温度や流速など流動条件、流れの状態、固体の表面形状などの影響を受けて変化します。
このため様々な条件に対して提案された理論式や実験式を使用して係数を求めます。
これらの理論式や実験式には次のような無次元数を用いて整理されたものが多くあります。ここでは紹介だけします。

①ヌセルト数Nu

 Nu=αL/λ
L:代表長さ[m]

ヌセルト数は、対流熱伝達と固体熱伝導を比較する意味を持つ無次元数です。
 

②プラントル数Pr

 Pr=ν/κ
ν:流体の動粘性係数[m2/s] κ:熱拡散率[m2/s]  κ=λ/(ρCp)
(λ:熱伝導率[W/(m・K)]、ρ:密度「kg/m3」、Cp:定圧比熱[J/(kg・K)])
熱拡散率は、熱的な平衡状態が得られる速さを表す量で、動粘性係数と同じ単位を持ち、温度境界層に関する支配的な物性値です。

プラントル数は、流体の運動と温度の伝播を比較する意味を持つ無次元数です。

 

3.放射(Thermal Radiation)

高温の物体は熱放射線という電磁波の形で熱エネルギを放射し、そのエネルギの大きさは、絶対温度の4乗に比例します。
離れた場所にある高温物体からの、この電磁波による熱移動を「放射」または「ふく射」といいます。
太陽の熱エネルギで地球が暖められるのもこの現象によるものです。

温度T「K」の物体から放射される熱流束q[W/m2]は次式で表されます。
 q=εσT4  ・・・(6)

(6)式を、ステファン-ボルツマンの法則といいます。

σは、「ステファン-ボルツマン定数」といい、5.67×10-8[W/(m2・K4)]の値をとります。
黒体放射係数」とも呼ばれ、熱放射線をすべて吸収する黒体とよばれる仮想的な物体からの放射係数です。

εは、実在する物体の性質に応じた係数で、「熱放射率」といいます。
εは金属の研磨表面では0.03~0.2と小さいですが、コンクリートでは0.9程度、ガラスで0.9~0.95程度、水で0.96、と大きな値になります。

 
以上、今回は熱移動の基本的な3形態について解説してみました。
特に熱伝導と熱伝達については、その違いについてよく理解しておくようにしましょう。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)
 
 

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