【半導体製造プロセス入門】リソグラフィー装置の基本① (露光装置/光源)

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リソグラフィー装置の基礎知識

「半導体製造装置」と聞いてまず思い浮かぶのがリソグラフィー装置です。

リソグラフィーはもともと「フォトリソグラフィー」と呼ばれる写真製版の技術です。つまり印刷技術が発展して現在のような非常に高度な技術となりました。

今回は、リソグラフィー装置である露光装置を中心に紹介します。

1.リソグラフィー工程とリソグラフィー装置

「リソグラフィー装置」とは、リソグラフィー工程で使用される装置群のことをいいます。

リソグラフィー工程は図1に示される手順で行われます。

リソグラフィープロセス1
【図1 リソグラフィー工程 】

 

(1)レジスト塗布

ウエハーに「レジスト」と呼ばれる樹脂を塗布します。
ここで使用されるのは「スピンコーター」と呼ばれる回転式塗布装置です。
 

(2)露光

レジストの上部に「フォトマスク」と呼ばれるフィルムの役割をするガラスの板を設置して、上部から紫外線やX線を照射します。ここで使用されるのはスキャナーやステッパーなどの露光装置です。

フォトマスクにはマスク作成装置で作成した回路形成に必要なパターンが描かれていて、このパターンがレジストに転写されます。
 

(3)現像

次に現像を行います。ここで使用されるのは「デベロッパー」と呼ばれる現像装置です。

露光後に不要な部分を除去して必要な部分のみを残します。
レジストがネガ型の場合、紫外線やX線が当たった部分が硬化します。また、レジストがポジ型の場合は、逆に紫外線やX線が当たらない部分が硬化します。
現像後はエッチング装置を使って必要な加工を行います。
 

(4)硬化レジスト除去

硬化レジストを除去します。
ここでは「アッシング装置」と呼ばれる装置を使用します。

 

以上、(1)から(4)までの作業を繰り返し行い、ウエハー上に構造を一つ一つ積み上げて、必要な回路を形成していくことになります。
 

2.露光装置

(1)露光装置の精密さ

露光装置は極めて複雑で精密な装置です。
「人類史上最も精密な機械」と呼ばれることもあり、価格も高いです。
最先端のものになると1台100億円を超えるものもあります。

図2に露光装置の概略図を示します。
光源からの光は均一なビームに変換等され、レチクルステージとレンズを透過した後、ウエハーステージに照射されます。

露光装置
【図2 露光装置の概略図 】

露光装置はすべて枚葉式です。バッチ式は原理的に存在しません。
したがって、1枚当たりのスループットをいかに上げるかが重要となります。
また、装置の価格が高額なため、投下資金の早期回収を目的として24時間365日稼働が当たり前です。
そのため、装置ができるだけ停まらずに稼働すること(可用性・信頼性が高いこと)や停まってもすぐに再開できること(メンテナンス性が高いこと)も重要です。
 

(2)等倍投影と縮小投影

露光装置は光学系の違いによって、「等倍投影」と「縮小投影」の二種類があります。

等倍投影」はマスクのパターンがそのまま反映されます。
光学系をシンプルに構成でき装置の価格が安いという特徴がありますが、マスクの大きさが半導体チップと同じ大きさとなるため、あまり微細化に向いていません。そのため、現在ではほとんどの露光装置が縮小投影の方式をとっています。

縮小投影」では、光学系にパターンの縮小機能を持たせています。
たいていマスクパターンの大きさの1/4ないし1/5の大きさに縮小したパターンがウエハー上に焼き付けられます。これによりマスクの大きさを大きくすることができるので、微細化に向いています。
しかし、光学系が複雑になるために装置の価格が高くなりがちです。
また、縮小投影で使用される大きなマスクは、等倍のフォトマスクと区別してレチクルと呼ばれています
 

(3)ステッパーとスキャナー

露光方式の違いによる露光装置の分け方もあります。それが「ステッパー」と「スキャナー」です。

ステッパー」は、正方形の領域を1回の光照射(ワンショット)で露光します。

これに対して、「スキャナー」は細長いスリット状の領域を横方向に走査(スキャン)しながら、光を照射して露光します。

スキャナーは、微細化がしやすいという特徴があります。最先端のプロセスが必要な場合にはほとんどがスキャナー型の露光装置が使われています。
反面、スキャナーでは走査を行うため、ウエハーを移動させるか、光学系を移動させるかをしなければなりません。現実問題としてレンズは大変巨大なものとなるので、レンズを精度よく移動させるのは不可能です。
そこで、ウエハー側の走査を精度よく行う必要があります。さらに、ピント合わせはウエハーステージの高さ(Z軸の高さ)を変えて行うため、XYZ軸すべてを精密に制御する必要があります。
 

(4)合わせ精度とミックス・アンド・マッチ

前工程では複数の層を重ね、積み上げて構造を作っていくので、パターン同士の位置合わせ(アライメント)を厳密に行う必要があります。このアライメントの精度を「合わせ精度(重ね合わせ精度)」といいます。

すべての層において最先端の露光装置が必要かというと、そうではありません。
積み上げていく層によっては微細化が要求されない場合があり、前の世代の露光装置を使った方がコストが低減でき合理的です。このような考え方を「ミックス・アンド・マッチ」といいます。

この場合でも、アライメントの精度は保たれる必要がありますが、実際には装置間での相性が出てきます。つまり、それほど微妙ということです。
 

(5)リソグラフィー装置とクリーンルーム

リソグラフィー工程では、周囲のわずかな振動でも精度に影響がでるので、露光方式を問わずウエハーステージには高度な防振機能がついています。さらに、工場の近くに鉄道があるだけでもその影響を受けるので、クリーンルームの建設の段階から気を付ける必要があります。
近年では振動対策を強化したリソグラフィー工程専用のクリーンルームを設けることが多くなっています。

リソグラフィー工程専用のクリーンルームは、振動対策だけではなく、普通のクリーンルームよりも環境条件がさらに厳しい場合が多いです。
例えば温度や湿度なども普通のクリーンルームよりも厳しく管理されています。また、照明も普通のランプではなく紫外線を含まない黄色の照明が用いられます。このため、リソグラフィー工程専用のクリーンルームは「イエロールーム」と呼ばれることもあります。

より厳しい管理が必要な理由は、使用するレジストが温度や湿度に敏感で、さらに紫外線に反応しやすい性質のものだからです。そして、このレジストの敏感さは年々高くなっています。敏感であればあるほど紫外線照射の時間を短くすることができ、リソグラフィー工程全体のスループットを上げることができるためです。

レジストは大変高価です。一度硬化したレジストは元に戻ることはありません。不要な硬化を防ぎ、レジストの無駄を低減するためにも、不要な紫外線を防止する必要があるのです。
 

3.マスク形成技術

露光において、写真フィルムの役割を果たす「マスク(フォトマスク)」について簡単に説明します。
フォトマスクは、以前は半導体メーカーで内製していたのですが、微細化が進み技術的に高度化が進んだため、高い技術力を持った専門メーカーに外注していることが多いです。

一般的な紫外線露光用のフォトマスクは、石英基板にクロムと呼ばれる金属をメッキしたものが用いられます。この石英基板に電子線をあてて直接描画します。このような装置を電子線直描装置といいます。これは電子線を走査させて石英基板に絵を描くようにパターンを描いていくものです。

また、解像度を向上させるためにマスクに様々な工夫を行っています。これらも超解像技術の一種です。このため、最先端の何十枚もあるフォトマスク一式の総価格は1億円を超える場合もあります。

なお、電子線直描装置はどちらかというとスループットが低く生産性が悪いですが、技術開発が進み、さまざまな工夫が試みられています。
 

4.リソグラフィー装置の光源

リソグラフィーで使用される光源について簡単に説明をします。

(1)光源の短波長化

半導体製造は年々微細化が進んでいますが、これは光源の短波長化が進んでいるからです。
「波長」とは、光速を光や電波の周波数で割った物理量です。
光の性質として周波数の低い順、波長の長い順に赤外線、可視光、紫外線、X線、電子線となります。リソグラフィーでは主に紫外線やX線、電子線が使用されます。

なぜ、光の波長が短くなると微細化が可能になるのかというと、露光装置に使用するレンズの解像度は、光の波長が短くなると比例して小さくなるという性質があるからです(これをレイリーの式といいます)。
なお、「解像度」とは、レンズに入ったパターンをレンズから出ていくパターンにどれだけ再現できるかを表す物理量で、小さいほど微細なパターンを再現できます。
その他にも解像度を向上させる方法として、レンズの明るさを変える方法や、超解像技術(液浸露光など)などがあります。ただ、レンズの明るさはほぼ理論限界に達しており、また、超解像技術については現在の光源を延命させるために補助的に用いられる場合が多く、光源そのものの短波長化の流れは止まりそうにありません。

光源には主に、当連載の前回「熱処理装置の種類・方式を解説」でもとりあげた、エキシマレーザーを使用します。しかし、レーザーアニールよりもパワーは要求されません。現在は、紫外線からX線のエキシマレーザーが実用化され、実際の半導体製造に使われています。電子線も研究段階にあります。
 

(2)光源とレジスト

光源が変わるとレジストの材質も変わります。
逆に言うと、レジストの材料開発の成果が短波長化を促進しているとも言えるでしょう。
つまり、光源の波長に合わせてレジストの種類を変えているということになります。

具体的には、上述したようにミックス・アンド・マッチが現在のトレンドなので、同じ工場で複数の種類のレジストを使っていることになります。
また、レジストの種類によっては毒性のあるものもあり、レジストの資材管理がより重要になってきます。
 

5.光学系に依存する露光装置

露光装置の光学系も波長によって変わります。
一般的に光学系の設計はコンピュータを使用する現在でも難しく、露光装置に使用される光学系はさらに大変複雑です。また、レンズ材料も特殊なものが使用されます。

紫外線照射ではカメラのレンズと同じ屈折光学系ですが、X線照射になると反射光学系という特殊な光学系を使用する必要があり、新たに設計しなおさなければなりません。
これらの要因も露光装置の価格を押し上げている一因となっています。

 

リソグラフィー装置には、様々な種類の装置がありますが、今回紹介したステッパーやスキャナーは「半導体製造装置の顔」ともいえる存在です。
技術の限界を指摘する声もありますが、これからしばらくは発展を続けるでしょう。

次回は、主要なリソグラフィー装置である「コーター」「現像装置」「アッシング装置」をご紹介します。
 

(アイアール技術者教育研究所 F・S)
 
 

 

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