【品質保証塾・入門編】品質保証業務に向いている人物像は?求められるスキルは?
『品質保証』と聞いて皆さんは、どのようなイメージを持つでしょうか?
厳しい、キツイ、大変などなど…あまりポジティブではないイメージを持つ方も多いかもしれません。実際、品質保証で仕事をしていると困難にぶち当たることもあるのではないでしょうか。
今回は、品質保証で働くことに向いている人物像をご紹介していきたいと思います。
目次
1.品質保証で働くということ
どの職種もそうですが、特に品質保証は一人の力で出来る仕事は少ないです。
例えば、設計者であれば一人黙々と図面を作成することができますが、品質保証は全体の取りまとめ業務が多く、マネジメント寄りの仕事であることが多いです。(もちろん全てではありません)
それゆえ、高い交渉力やコミュニケーション能力が求められることも多いです。
更に関わる範囲は多岐にわたります。設計者は自分が担当する範囲のプロフェッショナルでいる方が多いですが、品質保証が関わる領域は、営業活動〜設計〜生産技術〜製造〜出荷〜アフターサービスと非常に広いため、ジェネラリスト思考が求められます。
そのため、一つのことに専門知識を持っているのではなく、様々なことを『広く浅く』知っていることが重要となってきます。
上記のように、全体をマネジメントする力や、広く浅く知っている必要があったり、事実ベースで物事を考えられる力が求められてきます。
品質保証の詳細な仕事内容については、「品質保証の仕事とは?仕事の種類と対応部門、業務内容を解説」のページにまとめているので参考にしてみてください。
2.品質保証に向く人物像やスキル
それでは実際に品質保証で重宝される人物像やスキルについて説明していきます。
(1)コミュニケーション能力が高い人
前述の通り、品質保証においてはコミュニケーション能力が高い人が向いています。
品質保証は品質問題を扱うことが多いですが、どれも一人の力だけで原因調査や対策をすることはできません。不具合品を回収する営業や輸出入部門、原因調査を行う解析部門、工場にいる方々にも協力いただくこともありますし、とにかく関わる部門が多く存在します。
また、時には不具合報告をお客様へしなくてはならない場合もあり、初対面であってもフラットに接することができたり、良い関係性を築き上げることが重要です。
品質問題というのは誰しも扱いたいと思うわけではなく、時には『面倒くさい』『うちの仕事ではない』と思われる方もいらっしゃいます。誰とでも良い関係を築き上げることで、協力してもらいやすくなり、上手く仕事が進んでいきます。
(2)交渉力がある
品質保証で働くのであれば、何事も『品質第一:Quality First』で働かなくてはなりません。しかし、他部門からコストや納期の兼ね合いから、品質を保証するための業務に猛反発を受けることもあります。
例えば、問題が発生してしまい選別を行わなくてはならないとします。しかし選別もタダで行えるわけではなく、外注業者に作業を発注したり、出荷を止めて確認を行わなくてはならなかったりするのです。そうなると、顧客へ納期遅延のリスクや選別費用などが発生してしまう恐れがあります。
こういう時に、社内外の関係者が納得するような『交渉力』が求められます。
何故この対応が必要なのか、この対応を行わない場合はどういったリスクが潜んでいるのか等、関係部門の理解を促す交渉力が重宝されます。
その他にも、クレームを受けた際はお怒りになられているお客様もいらっしゃいます。お客様に安心していただけるように、納得してもらう必要もあるので、交渉力をもつ人材は品質保証部門で重宝されます。
(3)細かい作業が得意
品質保証の仕事は、不具合が発生した場合に根本的な原因を究明し、再発防止を徹底することも仕事の一貫です。何も情報がないところから不具合の原因を究明するよりも、日頃から蓄積している情報をヒントに究明していく方が効率的ですよね?
品質保証部門では、日々の検査データや数字を管理する仕事もあり、そのデータから不具合の予見がないか確認を行っています。そのため日々細かいデータと向き合い、分析を行うことも仕事の一貫で、地道な作業が求められる場合もあります。
このような背景から、細かい作業が得意で、地道なデータ収集や分析が苦にならない人材は重宝されます。地道な積み重ねが、組織の効率性を向上させたり、業務改善に繋がるのです。結果、不具合が起きにくい組織体制を作り上げ、お客様より信頼を得ることのできる組織へとなります。
(4)物事を俯瞰的に見れる
品質保証は、一つだけに精通しているのではなく『広く浅く』全体のプロセスを知っている必要があります。そのため、営業活動から製品設計、工程設計、製造、出荷、アフターサービスと関わる領域は様々です。
このような仕事をしているため、物事を俯瞰的・多角的に見ていく必要があるのです。
専門部門だけでは気付かなかった潜在的リスクを指摘したり、主観的に判断してしまいがちな人に客観的に意見を言える力が必要です。
例えば、実際に不具合を流出させてしまったのが製造部門だとしても、単純に製造部門が悪いと判断するのではなく『工程設計段階でリスクは無かったのか?』『出荷部門でも問題は気付けたのではないか?』と広い視野で問題点を抽出していける力が大切です。
また、品質第一で顧客視点で指摘することも大切となってきます。組織が『完璧な対策だ!』と思っても、お客様から見ると「なんだ、このしょぼい対策は!再発する恐れがあるじゃないか!』と思われてしまうかもしれません。外部視点で、物事を検討する力が求められます。
(5)論理的思考ができる
品質保証では、様々な品質問題を扱いますが、主観的・感情的に物事を判断するのではなく、冷静に論理的に物事を判断していかなくてはなりません。
対策になっていると思っていたや、あの部門は嫌いだから指摘をするといった判断ではなく、対策効果はあるのか数字や事実から判断したり、なぜ問題が発生したのか・なぜ二度と問題が発生しないと言えるのか根拠を元に、論理的に『保証できる』ことを証明しなくてはなりません。
この論理的思考力と交渉力を活かし、利害関係者(社内プロジェクトチーム・お客様・サプライヤー関係者など)と品質における主張を行います。
(6)専門知識を持つ
前述では『広く浅く知る必要がある』と申し上げました。
それはその通りなのですが、だからこそ『専門知識』を有する品質保証は、とても重宝されます。
元設計者であれば、設計と同等に技術的根拠について協議できますし、生産技術出身であれば、工程設計について細かく精査することができます。また、社内外の利害関係者とコミュニケーションを取るときには、自社製品についての知識や工程設計の知識が必要となります。
例えば、半導体メーカーの品質保証に従事するのであれば、パターン設計・フォトマスク設計から酸化・レジスト塗布、露光・エッジング、パッケージング…といった、どこで何をしているのか、どういう検査で保証しているのかなど、専門的な知識が必要となります。
(7)タフな精神力を持つ
上記のように、品質保証は全体のマネジメントを行ったり、社内外でコミュニケーションが必要となります。時には細かな作業が求められることもあり、地道な仕事が多いことも事実です。人から厳しい意見を貰うことも多く、めげない力が大切になります。
また、品質は何かをしたからといって簡単に向上するものではありません。日頃の地道な改善を通して、少しずつ向上していくのです。そのため、成果が目に見えにくいことも多いため、絶対に諦めない力が大切となってきます。
タフな精神力をもっている人は品質保証に向いています。
(8)行動力がある
不具合はオフィスではなく、現場で起きています。
不具合調査を進めるうえで三現主義(現場、現実、現物)を徹底して仕事を進めることが大切です。そのため、何かが起きたら実際にラインへ出向き、現場の作業者と会話したり、不具合品を手に取ってみたりすることが大切になってきます。発生した現実を正しく認識することで、オフィスでは気付けなかった問題点に気付くことができます。
さらに、実際に関係者との会話を通して信頼関係を築くことができます。
日頃から良い関係性を持っておくことで、問題が発生した時に助けてもらったり、他部門が困っていたときに品質保証として力を貸したりできます。
品質保証で働くときは『行動力』を意識して仕事をすると良いでしょう。
3.まとめ
今回のまとめです。今回は品質保証で働くうえで大切な人物像をお伝えしました。
もちろんこの記事に書かれている内容は、他部門でも通用するスキルになりますので、意識をしながら働くと他部門でも通用する人材になることができるでしょう。
- 品質保証は全体の取りまとめ業務が多く、マネジメント寄りの仕事であることが多い
- 品質保証で働くにはコミュニケーション能力が高い人が重宝される
- 細かな作業が得意な人は品質保証に向いている
- 物事を俯瞰的に捉え、論理的思考ができる能力は品質保証業務をするうえで大切
- 元設計や元生産技術といったように専門知識を備えると強い
- 諦めないタフな精神と行動力で周囲と信頼関係を築き上げる
次回は、品質保証と品質管理の違いについて解説します。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)