【QCストーリー解説①】テーマ選定、現状把握/目標設定までの進め方と検討事例

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QCストーリーとQCサークル
日本のものづくりは、現場の改善活動で支えられています。
この改善活動を理論的に進める道具がQCストーリーですが、特に製造現場の改善活動で活発に実践されているのが問題解決型QCストーリーです。

今回は、「テーマの選定」と「現状の把握と目標の設定」の各ステップの進め方について説明します。

問題解決型QCストーリーの流れ

問題解決型のQCストーリーは以下の8つのステップで構成されます。
このコラムでは、ステップ1、ステップ2の具体的な進め方について事例を紹介しながら説明します。

  • ステップ1:テーマの選定
  • ステップ2:現状の把握と目標の設定
  • ステップ3:活動計画の作成
  • ステップ4:要因の解析
  • ステップ5:対策の検討と実施
  • ステップ6:効果の確認
  • ステップ7:標準化と管理の定着
  • ステップ8:反省と今後の課題

 

ステップ1:テーマの選定の進め方

「テーマの選定」の主な実施手順は以下の通りです。

  • 実施手順1 問題点の洗い出し
  • 実施手順2 問題点の絞り込みとテーマ名決定
  • 実施手順3 テーマ選定理由の再確認

以下に、自動車部品のロータ&プーリの製造ラインのチームの活動に基づいた事例で説明します。
 

ステップ1-1:問題点の洗い出し

まず、現在の問題点はなにか洗い出しからはじめましょう。
この生産ラインの当初の目標について、QCサークルメンバー全員で現状の実績をまとめてみました。

問題点の洗い出し

残念ながら、上記の①、②、③、④全て目標に達していないことがわかりました。
それでは、このチームとしてどのテーマに絞り込むか次に話し合いましょう。
 

ステップ1-2:問題点の絞り込みとテーマ名決定

問題点の洗い出しが終わった後に、問題点を評価し、絞り込みを行いましょう。
テーマ名決定は、重要性、緊急性、費用、効果の総合的な観点から絞り込み、一人の意見ではなく改善チーム全員で評価することが大事です。

全員で意見を出し合い意見を総合しました。
◎5点、○3点、△2点、×0点として、総合評価点を算出しました。

問題点の絞り込み

以上の結果、最高点の「ロータ&プーリラインの不良率削減」をテーマ名として今後の改善活動に取り上げることにしました。
 

ステップ1-3:テーマ選定理由の再確認

テーマの選定が終わりましたが、選定理由をメンバーで再度確認しましょう。
その結果を以下にまとめました。

  • 不良率5%前後で推移している現状は、本社の品質管理部より強く改善を要請されている。
  • 新人の〇〇さんにとっても、不良率削減の活動は今後の育成になる。
  • 本年度の会社方針は、ラインの徹底改善である。

以上の結果、「ロータ&プーリラインの不良率削減」のテーマは会社方針にも一致しており、品質管理部の要請にも対応でき、新人の育成にもつながる為、活動の方向としては合っていることを確認できました。

 

ステップ2:現状の把握と目標の設定

次のステップは、「現状の把握と目標の設定」です。
現状の把握では、“悪さ”を明確にすることが肝心です。

「現状の把握」ができましたら、具体的な活動の「目標の設定」を設定しましょう。

「現状の把握と目標の設定」の主な実施手順は以下のとおりです。

  • 実施手順1 製造のプロセス(工程)の把握
  • 実施手順2 データを収集しグラフ化
  • 実施手順3 問題点の絞り込み
  • 実施手順4 目標の設定

 

ステップ2-1:製造のプロセス(工程)の把握

まず、現状の把握には工程の全体像を明らかにすることが必要です。

そこで、工程フロー図を作り、現場でどこの不良が多いか確認することにしました。机の上での検討でなく、現地、現物で事実をつかむことが大切です。

以下の「内製工程」のどこで不良が発生しているか検討することになりました。
内製工程の例
 

ステップ2-2:データを収集しグラフ化

それでは、各工程で発生している直近の半年の不良個数のデータを現場で集めましょう。
工程全体でどこの工程での不良が多いか優先付けをしましょう。

半年の月平均のライン全体の不良件数をパレート図に書いてみました。
この結果、不良のワースト1は、全体の56%を占める溶接不良であることがわかりました。
この傾向は毎月ほぼ同じなため、溶接不良削減を中心に検討を進めることにします。

パレート図による不良件数の分析

ここで、溶接不良の種類について知っておきましょう。
レーザ溶接について、ここでは4種類の不良に着目しました。

溶接不良の種類

 

ステップ2-3:問題点(不良)の中身の絞り込み

溶接不良の中でどのような不良が多いか不良の中身を掘り下げ、絞り込みましょう。

溶接不良の種類によって、不良データを層別します。
この結果、以下の外観的な不良で84%を占めていることがわかりました。

《 不良の中身の絞り込み 》

① アンダーカット不良がNo.1(両端部が溶接されていない)  
② ポロシティ不良がNO.2(泡のようなものが発生)

問題点の中身の絞り込み

 

ステップ2-4:目標の設定

現状の溶接不良の中身が絞り込まれたので、具体的な目標を設定します。

不良率目標を会社目標の1%としたいところですが、ハードルが高いため、今回は第1回目の活動として目標を3%とします。
ここで、ワースト2のアンダーカット&ポロシティ不良を1/5以下にすれば、計算上、全体不良率は4.9%⇒3%に削減することから以下のように目標を設定しました。

《 目標 》

何を:ロータ&プーリラインの不良率
どれだけ:不良率を3%以下(現状は4.9%)                   
いつまでに:3か月後

QCストーリーの目標設定

 
以上、QCストーリーにおける「テーマの選定」と「現状の把握と目標の設定」の各ステップの手順について、簡単な事例で紹介しました。
 

この続きのステップは、次回のコラム「活動計画の作成、要因解析、対策の検討・実施までの進め方」で解説します。

 
(アイアール技術者教育研究所 T・I)
 


◆併せて読みたいコラム(QCストーリー・初心者向け)

 
 

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