3分でわかる FET(電界効果トランジスタ)とは?原理・特徴・用途の要点解説

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FET(電界効果トランジスタ)の解説

今回は、電子回路部品のうち、FET(電界効果トランジスタ)について説明します。

1.FET(電界効果トランジスタ)とは?

電子回路を構成する部品のうち、FET(Field Effect Transistor)(電界効果トランジスタ)は、名前の通りトランジスタの一種です。
トランジスタは、一般的には「バイポーラトランジスタ」のことを言い、FETについては「ユニポーラトランジスタ」と呼ばれることもあります。
しかし、それぞれの動作原理は、かなり異なっています。

ここでは、半導体部品としてのFETについて基本的な部分をみていきましょう。

 

2.FETの原理

FETは、トランジスタのベース電極に相当するゲート電極を有していますが、その電極をトランジスタは電流によって制御しているのに対して、FETは電圧により制御しています。

まず、FETは「接合型」と「MOS型」という2種類に分かれています。
図1のように、回路記号も異なります。

 

FETの原理
【図1 接合型FETとMOS型FETの回路記号】

 

また、トランジスタのベースに対応する端子が「ゲート」、コレクタに対応する端子が「ドレイン」、エミッタに対応する端子が「ソース」と呼ばれます。
 

(1)接合型FETの構造・原理

図2は、接合型FETの構造と原理(仕組み)を示す図です。

 

トランジスタのベース
【図2 接合型FETの構造】

 

図2では、P型半導体のゲート電極にN型半導体のドレイン電極とソース電極を接続しています。

今、ゲート―ソース間に電圧が加えられずに、ドレイン―ソース間に電圧(ドレイン側が+)が加えられたとすると、ドレイン―ソース間は単なるN型半導体となり、電子(-の電荷)はソース電極側からドレイン電極側に移動し、ドレインからソースに電流が流れることになります。すなわち、FETはオン状態になります。
 

《空乏層の大きさによる電流の制御》

図3では、ゲート―ソース間に電圧(ソース側が+ゲート側が―)が加えられています。
すなわち、ゲート側から見れば逆電圧が加えられています。

 

FETオン状態
【図3 接合型FETと空乏層】

 

この状態では、電子(-の電荷)は、ソース電極側に引き寄せられ、ゲート側には正孔(+の電荷)が引き寄せられます。結果として、電流は流れにくくなり、P型半導体とN型半導体の間には、電子も正孔も存在しない空乏層ができます。

ゲートの逆電圧を増やしていくと空乏層は大きくなり、ドレインとソース間の電子の通り道が狭くなります。
この通り道を「チャネル」といい、この図では、電子が移動するので「Nチャネル」といいます。
正孔が移動する場合は「Pチャネル」です(図でN型とP型が入れ替わった場合)。

このように、FETは、ゲートにかける電圧を制御することで、ドレインとソース間の電流を制御することができます。
 

(2)MOS型FETの構造・原理

図4は、MOS型FETの構造と原理(仕組み)を示す図です。
MOS」とは、”Metal Oxide Semiconductor”のことで、ゲートの電極の下に酸化物層(通常はSiO2)があることが特徴です。

 

MOS型FET(ドレインとソース間の電流)
【図4 MOS型FETの構造】

 

図では、P型半導体の中に多数の正孔(+の電荷)と少しの電子(-の電荷)が入るようにしておきます。
P型半導体の中の不純物を調整することにより、電子(-の電荷)を入れることができます。

図4では、ソース側にマイナスの電圧、ドレイン側にプラスの電圧がかかっています。
しかしながら、このままではP型半導体の中を電子(-の電荷)が移動することはできません。(正孔によって阻まれる)
したがって、この状態ではソース―ドレイン間の電流は流れません。
 

《反転層の形成》

MOS型FET(ゲート―ソース間に電圧)
【図5 MOS型FETと反転層】

 

図5は、ゲート―ソース間に電圧(ゲート側が+ソース側が―)をかけた図になります。
すると、ゲート電極のプラスにP型半導体の中の電子(-の電荷)が集まってきます。
このようにして電子が集まると、酸化膜の直下に本来P型であるはずなのに、電子のほうが多くなるためN型として動作する領域ができます。これを「反転層」と呼びます。

反転層が形成されると、ドレインとソースとがN型の半導体で導通してしまい、ドレインからソースに電流が流れます。
ゲートにプラスの電圧をかけると、ドレインからソースに電流が流れる状態、すなわちオン状態になります。
また、ゲート電圧の大きさにより、ドレイン電流の大きさを制御することも可能となります。

図5のようにN型の反転層(Nチャネル)が形成されるものを「NMOS」と呼びます。P型の場合は「PMOS」となります。

 

[※関連記事:《MOSFET/CMOS/JFET他》電界効果トランジスタの構造と仕組みがわかる!

 

3.FETの役割と用途

FETは、トランジスタと同様に、増幅作用スイッチングという役割があります。

ただ、FETとトランジスタは、それぞれ特徴が異なるので使用目的よって使い分けられています。

主な特徴の違いは、トランジスタが電流駆動であるのに対して、FETは電圧駆動です。
スイッチング速度は、トランジスタより速いです。
また、オン抵抗が高いためゲートを駆動する電力は少なく済むため、消費電力が少なくなります

したがって、スイッチングの用途には、FETがよく用いられています。
CPUなどのデジタルICにおいては、ほとんどMOSFETが用いられています。

近年はFETの性能が上がり、低消費電力化の流れもあって、デジタルICに加えてアナログICにもMOSFETが使用されるようになっています。

今や、FET、特にMOSFETは、最も重要な半導体部品の一つといえるでしょう。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
 

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