パワー半導体の基礎知識(eラーニング)
パワー半導体の基礎知識(eラーニング)
本講座の狙い
この講座では一般的に「パワー半導体」(パワーデバイス)と呼ばれている半導体デバイスを題材にして、半導体デバイスの動作原理の概要を紹介します。
「パワー半導体の基礎知識」の講座概要
様々な機器に搭載されている「半導体デバイス」は、多岐にわたる高度な学問と高度な技術の集積によって実現されています。
半導体デバイスの動作原理は、固体電子論などの奥深い学問に基づいているため、各理論を系統的かつ厳密に学ぼうとすると、かなり強い意欲があっても、途中で息切れして挫折してしまいます。
一つの打開策としては、先ず初めに、最重要事項だけの飛び石の上を行ったり来たりしながら全体を俯瞰して、その後で、各自の興味や必要性に応じて、各事柄の理解をじっくり深めるという方法が有効です。
そこで、この講座では一般的に「パワー半導体」(パワーデバイス)と呼ばれている半導体デバイスを題材にして、半導体デバイスの「動作原理の概要」を紹介します。
本講座のタイトルには「パワー半導体」という言葉がついていますが、半導体デバイスの「最も基本的な事柄」は、パワー半導体でも、集積回路を構成している超微細MOSFETでも同じなのです。
本教材第1~6章では、半導体デバイスの一般的な利用例としての自動車と、そこでのパワー半導体デバイスの役割を紹介します。後半は、理系大学受験レベルの数理的な理解力のある方に向けて、半導体デバイス開発の向けた基礎理論理解のために重要なバンド理論について解説しています。
本講座の狙い
本講座の目的は、半導体デバイスの基礎を学ぶ必要がある方々に、半導体デバイスの「役割」と「動作原理」に関する最も基本的な事柄を、分かり易く紹介することです。
また、特に技術系の方など、バンド図によりパワー半導体内での電子のふるまいを理解したい方には、周辺知識を含めて理解いただくことも目指します。
想定受講者
- 本講座は、高専・大学、半導体関連の製造業、商社などにおいて半導体デバイスの基礎を初めて学ぶことになった方々、或いは半導体デバイス物理の専門書に書かれている内容の最重要事項を明確に把握したいと思われている方々を対象としています。
- 第1章~第6章において、本講座が前提としている予備知識はオームの法則(V=IR)と高校の化学:化学結合論ですが、これらの知識が欠けていたとしても、本講座の解説をゆっくりと読み進み、図表を眺めながらじっくり考えて頂ければ、半導体デバイスの役割の例や動作原理の重要事項はご理解頂けると思います。
- 第7章~第9章は、バンド図の読み取りやいくつかの半導体用語の概念の理解が必要ですが、それらを調べながら読み進めて頂くことで、高専生や理工系大学の学部生レベルの知識で対応頂けるものになっています。
「パワー半導体の基礎知識」の主な項目
第1章~第6章は、電気自動車を例にして、そこに用いられている代表的なパワー半導体を紹介し、半導体デバイスの基本的な役割を解説します。
第1章 電気自動車EVとパワー半導体
- 劇的なパラダイム・シフト
- 電気自動車EVの基本要素
- インバーターとコンバーター
- モーターとバッテリー
- インバーター回路の構成と動作原理
- インバーターとパワー半導体
- 車載半導体
- パワー半導体
第2章 空乏層の性質
- 空乏層とは?
- 空乏層の形成
- 空乏層幅の不純物濃度依存性
- 絶縁破壊電圧と比抵抗の不純物濃度依存性
第3章 パワーMOSFETの用途と動作原理
- MOSFETの構造
- MOSFETの動作(水流モデル)
- 微細MOSFETとパワーMOSFET
- パワーMOSFETの特徴
- MOSFETのオフ状態、オン状態
- パワーMOSFETの寄生抵抗
- 電子走行距離の定量的イメージ
第4章 パワーMOSFETの新しい構造
- パワーMOSFETの改良
- IGBT(insulated-gate bipolar transistor)
- トレンチ型MOSFET
- スーパー・ジャンクション型MOSFET
- パワーMOSFETの更なる発展
- ワイドバンドギャップ半導体の進歩
第5章 ダイオードの整流作用
- ダイオードとは?
- ダイオードの構造
- ダイオードの整流作用
- 簡単なAC/DCコンバータ(半波整流回路)
- 複雑なAC/DCコンバータ(全波整流回路)
- 出力電圧の平滑化(全波整流回路)
- ダイオードの電流・電圧特性
- ダイオードのスイッチング損失
- ワイドバンドギャップ半導体を用いたSBD
第6章 ワイドバンドギャップ半導体
- ワイドバンドギャップ半導体に対する期待
- ワイドバンドギャップ半導体の物性
- 絶縁破壊電圧とオン抵抗
- 半導体材料の主流がSiになった理由
- 超高純度・超高品質・大口径の結晶成長
- デバイス製造プロセス技術
- パワーMOSFETのチャネル抵抗
- 配線金属との接触抵抗
第7章~第9章では、半導体デバイスの動作原理を物理学的に理解するために不可欠なエネルギー・バンド図(以下、バンド図)を紹介し、バンド図の描き方(考え方)の理解を深めてから、「MOSFETの動作原理」や「界面準位の特性」などについて説明します。
第7章 pn接合の整流作用とバンド図
- pn接合の整流作用
- n型Siにおけるフェルミ・レベルEnf
- 不純物濃度が非常に高い場合
- pn接合のバンド図(接合直後、平衡状態)
- 拡散電位
- 空乏層幅の不純物濃度依存性
- pn接合(平衡状態)のバンド図作成手順
- pn接合のバンド図(逆方向特性、順方向特性)
- pn接合の電流・電圧特性(整流作用)
第8章 金属・半導体接合の整流作用とバンド図
- 金属・半導体接合
- 金属とn型Siのバンド図(Φm>Φs)
- 金属・n型Si接合(接合直後、平衡状態)のバンド図
- エネルギー障壁の不純物濃度依存性
- 逆方向特性、順方向特性
- ショットキー接合の利点と課題
- エネルギー障壁の材料による違い
- オーミック接触のバンド図
- トンネル現象を用いたオーミック接触
第9章 MOSFETの動作原理とバンド図
- MOSFETの構造
- SiとSiO2のバンド図
- MOS構造のバンド図
- MOS反転層のバンド図
- MOSFETのオン・オフ状態
- NMOS(オフ状態、オン状態)のバンド図
- 蓄積層
- デバイス動作時における蓄積層の働き
- 界面準位
- 界面準位が反転層内電子に与える影響
- 界面準位密度の低減
- ホットキャリアー注入の影響
※Tech e-Lシリーズは通常1講座あたり0.5~1時間程度の受講時間を目安に作成していますが、本教材は第1章~第6章で1時間、第7章~第9章で1時間~2時間程度を想定しています。