3分でわかる 濡れ性とは?撥水性/親水性の基礎知識

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濡れ性とは

本コラムシリーズの「界面活性剤とは?」の回では、異なる物質の境界で働く界面活性剤の基礎知識について説明しました。

今回は、界面科学における重要な前提知識「濡れ性」(ぬれ性)について簡単に解説いたします。

1.「界面」と「表面」

まず、「界面」と「表面」の違いを見てみましょう。

界面」とは、気体/液体、気体/固体、液体/液体、液体/固体、固体/固体など、異なる物質の境界となる面のことです。そのうち、気体と隣接する固体や液体の界面のことを「表面」と呼びます。
例えば、気体/液体の界面、気体/固体の界面は、それぞれ「液体の表面」「固体の表面」と言います。
コップに注がれた水の表面は、厳密に言えば、空気と水との界面です。

今回のテーマである「濡れ」は、液体と固体の界面で見られる代表的な現象です。

 

2.濡れ

よく洗浄されたガラス表面は、水によく濡れます。
その原因はガラスの表面構造に由来しています。

一般に、熔融してできた珪酸塩ガラスの表面では、ある程度の水分が附着しているものと考えられますが、この水はOHの形でSiイオンと結合しています。そして、OHは水素結合によって、さらに他の物質と附着する性質を持っています。そのため、ガラスは親水性(水になじみやすい)の表面をもっており、きれいな状態であれば水によく濡れるということになります。

一方、フッ素コーティングなどで処理された表面は、水をはじきます(図1)。

 

ガラス表面状態の模型図
【図1 ガラス表面状態の模型図】

 

3.「接触角」θ:Contact Angle

接触角」とは、静止液体の自由表面が固体壁に接する場所で、液面と固体面とのなす角です。

濡れ性、即ち接触角θを支配しているものは、液体、固体それぞれの表面張力νLG、νSG、及び固体/液体間の界面張力νSLのバランスです。
固体表面の濡れは一般に接触角で評価し、比較されます(図2)。

上述の「界面活性剤とは?」の回では、表面張力の説明があります、
その一部を抜粋すると、『表面にある分子は内部の分子と比べて大きな自由エネルギーを持っており、より不安定な状態にあります。その結果、表面をできるだけ小さくしようとする傾向が現れます。』ということになります。

液体を固体表面に滴下すると、液体は自らの持つ表面張力で丸くなり、次のYoung式(式1)が成り立ちます。

 νSG= νLG *cosθ+ νSL  ・・・(式1)

接触角とYoungの式
【図2 接触角とYoungの式】


 

4.「撥水性」と「親水性」

接触角は、 0°から180°までのいずれかの値をとります。
接触角が小さいものは濡れが良くて、はじきが悪いです。
逆に接触角が大きくなると、はじきが良くて、濡れが弱くなります。(図3)

接触角と濡れ性の関係
【図3 接触角と濡れ性の関係】


 

撥水性」(はっすいせい)とは、水をはじく性質のことをいいます。
固体表面が水に濡れやすい場合、その固体は「親水性」であるといいます。
逆に水をはじく場合は「撥水性」である、といいます。

つまり、接触角が高いものは撥水性が高く(親水性が低く)、接触角が低いものは撥水性が低い(親水性が高い)です。

親水性と撥水性の区分は相対的なものですが、接触角が90°以下か90°以上かということによって、親水性か撥水性が区分されることもあります。
さらに、接触角が5°以下で「超親水性」、150°以上になると「超撥水性」と呼ばれることもあります。
 

(1)撥水性

水との接触角が90°より大きい場合を「撥水性」といい、110°より大きく150°より小さい場合を「高撥水性」、150°より大きい場合を「超撥水性」といいます。

よく知られるフッ素コーティングで処理された表面は「高撥水性」になります。
 

(2)親水性

水との接触角が90°より小さい場合を「親水性」といい、光触媒(例:TiO2)などを利用した超親水性材料では、接触角はほぼ0°になり得ます。
 

5.撥水性コーティングと親水性コーティングの違い

濡れ性は、例えば車のコーティングなど、「塗料」の分野では避けられない技術テーマです。

では、撥水性と親水性コーティングの違いはどこにあるのでしょうか?
撥水コーティング(塗料)
実際、接触角が90度前後では、水滴が接触した際に表面に残り、水滴に含まれる汚れ物が残留して、汚れが促進されてしまいます。

親水性コーティングでは、接触角が小さくなることで、水滴が接触した際に、汚れ物が水滴と固体表面の間に入り込み、汚れを洗い流す効果によって汚れにくくなります。

一方、撥水性コーティングでは接触角が大きくなるにつれ、水滴が接触した際に汚れ物を水滴に吸着させながら転がり落ちるため、汚れが残留しにくくなると考えられます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
 

 
 

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