3分でわかる技術の超キホン 界面活性剤とは?機能・仕組みを洗剤の例で解説

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界面活性剤

「界面活性剤」は、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は古くから日常生活に関わる身近な存在です。
今回のコラムでは界面活性剤の基礎知識について、洗剤の話を中心にご紹介します。

1.界面活性剤とは?

まず界面活性剤について説明します。

界面活性剤surface active agent, surfactant)は、文字通りに界面張力を弱めて、界面を活性化する物質のことです。

界面張力の一つである表面張力は、液体や固体が表面をできるだけ小さくしようとする性質を有し、その本質は分子間力から発生した引力です。
 

(1)界面張力(表面張力)

物質内の分子と分子の間にはお互いに分子間力が作用しています。
たとえば、液体中の分子は、あらゆる方向から他の分子からの分子間力の作用を受け束縛され、自由エネルギーが低い状態にあります。一方、表面上にある分子は、内部の分子からは引力作用を受けますが、外の気体分子からは殆ど力の作用を受けません。
すなわち、表面にある分子は内部の分子と比べて大きな自由エネルギーを持っており、より不安定な状態にあります。その結果、表面をできるだけ小さくしようとする傾向が現れます。
 

(2)界面活性剤(両親媒性分子)の機能と原理

一つの分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(疎水基)を持つ物質は「両親媒性分子」と呼ばれ、これが界面活性剤の成分です。

両親媒性分子が界面上に並ぶことによって不安定な状態が緩和され、界面自由エネルギーが小さくなります。また、両親媒性分子は水中にミセルやベシクル、ラメラ構造を形成することによって、油性の汚れなどを水中に混ぜる働きをします。

両親媒性分子構造
【図1 両親媒性分子構造】

 

(3)洗剤が汚れを落とす仕組み

では、洗濯の場合を考えましょう。
皮脂などの油性汚れがついた洗濯物を水に入れて、そこに洗剤を加えると、界面活性剤の分子の疎水基が汚れや繊維に吸着して、水の表面張力が弱まります。そして、洗濯物へ素早く浸透していきます。(図2 (a) 浸透湿潤作用)

次に、界面活性剤の分子が汚れを取り囲むと、汚れの外側は親水基で覆われます。汚れは、表面を覆う親水基の働きで水の方へと引っぱられ、繊維から離れます。
洗剤の濃度を高めていくと親水基を外側に、親油基を内側にしたミセルを形成します。このミセルの内部には油性の汚れものを取り込むことができます。

この界面活性剤の存在下では、性質の違う物質が均一な水溶液になります。(図2 (b) 乳化作用)
親水性物質と疎水性物質を均一化する作用を界面活性作用といいます。

簡単に言うと、洗濯用洗剤は、まず界面張力を低下させてその水溶液をすばやく布地に染みこませ、汚れ(油性物)をはがして水溶液中に分散させます。そして最後に水で流すと、汚れが流されるという仕組みになっています。

(a)

浸透湿潤作用

(b)

乳化作用
【図2 洗濯の仕組み:(a)浸透湿潤作用 (b)乳化作用】

なお、表面張力は温度が上がれば低くなります。
これは温度が上がることで、分子の運動が活発となり、分子間の斥力となるからです。
この性質が「頑固な汚れを洗浄する場合は温水が良い」とされる原因となります。
 

2.界面活性剤の分類(種類)

界面活性剤は親水性部分の性質によってイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに分けられます。
更に、陽イオン、陰イオン、両性及び非イオン界面活性剤があります。
 

(1)陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)

古くから使われる「石鹸」は、陰イオン界面活性剤の代表的なものです。
陰イオン界面活性剤は、水中で陰イオンを解離します。
親水基として多数の酸構造を持つものが多くあります。

例:石鹸(脂肪酸ナトリウム) RCOO-Na

石鹸分子
【図3 石鹸分子】

 

(2)陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)

水中で解離したときに陽イオンとなります。
リンス、柔軟剤などのような親水基としてテトラアルキルアンモニウムを持つものが多いです。

例:アルキルトリメチルアンモニウム塩 RN+(CH3)3X
 

(3)両性界面活性剤(双性界面活性剤)

両性界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を持っています。

例:アルキルカルボキシベタイン R(CH3)2N+CH2COO

 

(4)非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)

親水部が非電解質、つまりイオン化しない親水性部分を持つものです。

例:脂肪酸ジエタノールアミド RCON(CH2CH2OH)2
  アルキルモノグリセリルエーテル ROCH2CH(OH)CH2OH

 

今回のコラムでは衣類用洗剤を例として解説しましたが、他にも歯磨き、食器用洗剤、ボディソープ、シャンプー/リンス、柔軟剤、帯電防止剤、手指の殺菌剤なども、界面活性剤を用いた身近な例として挙げられます。

次回は、食品分野における界面活性剤の利用についてご紹介します。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 
 

 

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