水素社会に必要な主要技術とその要素技術を整理してみる

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水素社会に必要な技術を解説

国連で決められた国際目標であるSDGs (Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の17のグローバル目標のうちの7番目は「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保」です。水素社会は、この目標を達成するための貢献ができます。

グローバル目標と合致した産業を発展させることは、健全で持続可能な社会を作ることと、暮らしの糧を得ることの両立を可能にします。

本コラムでは、水素社会にかかわる産業や技術について考えてみたいと思います。

 

1.水素社会の技術領域とは?

新しい製品やシステムを考える場合には、収益性のみだけではなく、ライフサイクルにおいて、それらが環境に与える負荷を検討・評価することが重要です。一方、そのような分析をすることにより、新しい産業や技術のニーズを掘り起こすことができます。

水素社会に必要な技術領域を、ライフサイクルから分解すると図1のようになります。

各領域に関連する産業や関連技術についてさらに分解していきたいと思います。

 

水素社会の技術領域
【図1】水素社会の技術領域

 

 

2.水素社会のライフサイクル各段階で必要とされる主要技術

水素社会において、水素をエネルギー源として活用していくためのコアとなるキー技術として代表的なものが燃料電池です。燃料電池では、水素を化学的な変換によりエネルギーとします

一方、水素エンジンや水素発電では、水素を燃焼させることによりエネルギーを得ます

図1のライフサイクルの各段階において、関係する主要技術を図2に挙げました。

 

水素社会で必要とされる主要技術
【図2】各段階で必要とされる主要技術

 

*CCS: Carbon dioxide Capture and Storage、CO2の回収・貯留技術
 

3.水素社会の主要技術に対応する要素技術

図2の主要技術に対して、対応する技術要素を分析したものが図3です。

 

水素社会の技術要素事例
【図3】水素社会の技術要素事例

 

4.全体技術の変遷と固有技術の適用

製品が大きく変わる時は、技術の構成も変わります。
図4に示すように、新たに適用される技術、適用されなくなって消える技術、そして既存の技術でも適用が拡大するものと縮小するものがあります。
 

技術の変遷
【図4】技術の変遷

 

一方、冷却技術などのように表面的には姿を変えても、基盤技術として生き残り活用が続く技術もあります。また、技術には要素技術(設計・評価、製造)や制御技術などに加えて、品質管理技術も含まれます。

水素社会に関連する技術領域に関しても同様です。
新しい固有技術の獲得と、これまで培った固有技術をいかに活かし組み合わせていくかというアイデアが必要になります。そのためにも、関連技術も含め、必要とされる技術を分析することが重要です。
中には、実際にやってみないと分からないという場合もあります。いわゆる製品化開発段階に対して、その前に行う研究開発段階で、必要な技術要素や制御が明らかになるようなケースです。

 

5.水素社会の実現のために必要な取り組み

水素社会の実現のためには、水素供給のための社会インフラの整備や、水素をエネルギーとして使用するための法規制、基準・標準の整備なども重要です。
水素製造にカーボンニュートラルの植物系の原材料を使用する場合には、食料供給への影響を防ぐようなものを使用することが求められます。また、社会インフラの管理・利用には、情報処理・統合制御分野の技術も必要となります。

燃料電池設備では、電気を水素として貯蔵できます。水素の状態と電気の状態の切り替えを行い、エネルギー供給状況に応じた貯蔵と利用の最適化を行う制御システムができれば、発電所のダウン時や、再生エネルギーー発電の変動による能力低下時に、そのようなシステムにより電力供給が可能となります。

水素社会技術は分析していくと分かるように、広範で複雑な技術を必要としますが、その一方で、そこには大きいビジネスチャンスが存在します。

今後、環境保全戦略、エネルギーセキュリティ戦略、そして産業競争力向上戦略において、産官学の協調活動も含め、社会全体での取り組みが重要となります。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)

 

 

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