固体酸化物燃料電池(SOFC)の原理・仕組み、特徴とは? PEFCと比較して解説

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SOFC(固体酸化物燃料電池)の解説_PEFCとの違い

本記事を読まれている方の中には、ご家庭に「エネファーム」と呼ばれる装置がある方もいらっしゃるかと思います。都市ガスなど炭化水素燃料を消費して電気を発電する装置なのですが、このエネファームに利用されている燃料電池はPEFC固体高分子形燃料電池)とSOFC固体酸化物形燃料電池)の2種類が主流です。
同じ炭化水素を消費しているものの、これらは仕組みが違う以上、発電の効率が良い運転方法も異なります。

実は、現在市販されているSOFCは継続的に運転する電力源としての役割が得意であり、対するPEFCは間欠的に運転する給湯や暖房などを温めるための熱発生源としての役割が得意、という特徴があります。
燃料電池の特徴を知ることで、もしかしたら皆様の住宅や施設に適切なエネファームシステムを選択することに繋がり、省エネへの貢献や、光熱費の削減ができるかもしれません。

またPEFCは燃料電池自動車などにも搭載されているので比較的知名度がありますが、SOFCとの違いが実はよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。
今回はSOFCの動作原理・仕組みや特徴(メリット/デメリット)について、PEFC型燃料電池と比較し相違点を踏まえながら、解説していきます。

1.固体酸化物燃料電池(SOFC)の動作原理・仕組み

固体酸化物燃料電池(以下、SOFC)は方式により外観や配置が異なるため、簡略化して説明します。

 

(1)PEFCと比較した共通点

燃料ガスの水素大気中の酸素が反応し水が生成される点は、PEFCなど他の燃料電池と共通です。また、その反応の反応する分子の比は[水素:酸素=2:1]で同じですし、燃料や酸素を消費した場合に得られる理論起電力や、同じ量の燃料や酸素を消費した際のエネルギーの量などは、実は異なる方式の燃料電池でも同じ値となります。(実際には条件によってセル1つあたりの主力電圧も、セルを組み合わせるスタック単位での発電効率も変動します)

 

水素を燃料にした燃料電池の化学反応イメージ
【図1 水素を燃料にしたSOFC内部での化学反応イメージ】

 

図1では水素が酸素と化学反応を起こし、水が生成される様子を模しています。
eは電子を表しており、発電時はこの化学反応を基に電力を生み出します。

燃料電池の登場より前は電気エネルギーを取り出す手法として、エンジンなど内燃機関やタービンによる発電など、燃焼に起因する熱エネルギーによる気体の膨張圧縮(カルノーサイクル)を経て、電気エネルギーを取り出すのが一般的でした。
一方、燃料電池では、化学反応から直接電気エネルギーを取り出すため、燃焼と気体の膨張圧縮による変換損失を考慮しなくても良いという特徴があります。よって、燃料電池による発電はカルノーサイクルを前提にした考え方から見ると、画期的と言えるでしょう。

[※関連記事:「3分で分かる技術の超キホン 燃料電池とは?知っておきたい基礎知識を凝縮まとめ解説」の “2.燃料電池が注目される理由” も併せてご参照下さい。]

 

(2)PEFCと比較した相違点

図2では一酸化炭素が酸素と化学反応を起こして二酸化炭素が生成される様子を、図3ではメタンが酸素と化学反応を起こして二酸化炭素と水が生成される様子を模しています。

 

一酸化炭素を燃料にした燃料電池の化学反応イメージ
【図2 一酸化炭素を燃料にしたSOFC内部での化学反応イメージ】

 

メタンを燃料にした燃料電池の化学反応イメージ
【図3 メタンを燃料にしたSOFC内部での化学反応イメージ】

 

SOFCの特徴として、発電時に電解質を透過するイオンが、酸化物イオンO2であることが挙げられます。
一方PEFCでは、電解質を透過するイオンは水素イオンH+である点が相違します。

SOFCでは燃料でなく酸素をイオン化して反応させるため、水素以外のガス、たとえば一酸化炭素やアンモニアなども燃料にできるという特徴があります。ただし実際の研究では、電極表面に炭素が析出して発電効率が低下する現象が起きることがあるため、水素を燃料に用いる発電と比較すると、技術的な難易度が高いようです

SOFCの電解質になる物質として、イットリア(酸化イットリウムとも、Y2O3)と、ジルコニア(酸化ジルコニウムとも、ZrO2)からなる「イットリア安定化ジルコニア」(YSZ;Yttria Stabilized Zirconia)という材料が挙げられます。

現在販売されているSOFCでは、都市ガスを内部改質で二酸化炭素と水素に分解して、水素を燃料として利用することが多いです。一方で、反応用ガスとしてアンモニアやメタン、メタノールを直接セル内に供給する研究も行われています。

 

2.PEFCと比較したSOFCのメリット・デメリット

SOFCとPEFCの違いとして、水素以外を燃料にできるかどうかを挙げましたが、他にも様々な違いがあります。ここでは、PEFCと比較したメリット・デメリットとして、SOFCの特徴を解説していきます。

 

(1) PEFCと比較したSOFCのメリット

① PEFCと比較して発電効率が高い

燃料電池の代表的な方式と知られる4つ(PEFC、PAFC、MCFC、SOFC)の中でも、SOFCの発電効率は最も高いです。
例として、PEFCが30%〜40%の発電効率であるのに対し、SOFCでは40%〜65%程度の発電効率で稼働させることができます[1]

 

② 継続的に発電するのが得意

SOFCで発電する場合、反応を起こすために高温にする必要があることから、余熱・排熱を利用した発電システムと相性が良いという特徴があります。このように排熱を利用して、ガスタービンやエンジンなどからも発電するシステムを「コジェネレーションシステム」と呼びます。SOFCは、コジェネレーションシステムという理念と、相性が良い燃料電池と言えるでしょう。
実際にエネファームとして利用する際、SOFCを採用した製品システムは、PEFCなど他の燃料電池を用いたシステムより、CO2排出量が抑えられるというデータもあります[2]

 

③ 白金触媒が不要

PEFCなど一部の燃料電池では、白金触媒を用いることで水素と酸素の反応速度を速め、低い温度でも発電できるようにしています。
一方SOFCは、発電時にセル内の温度を700-900℃に昇温することで、水素と酸素の反応速度を速めます。これによりSOFCでは、白金触媒を用いずに発電が可能です。

 

(2)PEFCと比較したSOFCのデメリット

① 耐衝撃にはあまり強くなく、移動型には不向き

SOFCでは、電解質や空気極・燃料極の材質に、セラミックが用いられています。そのため、振動などの物理的衝撃には強くないとされています。この特徴により、SOFCは自動車など路上の影響を受ける移動体の電力源には不向きであると言えるでしょう。

ただし、近年は飛行移動体との相性が良いと注目を集めています。長時間持続的に発電する強みが生きる点、耐衝撃性の弱みが問題になりにくい点から、特にドローンの動力源にSOFCを用いる研究も行われています。

 

② 間欠的運転には不向き

SOFCは動作温度が他の燃料電池よりも高い温度であるため、一度温度が室温まで下がってしまうと再度発電可能な温度に昇温するまでに時間がかかります。そのため、発電のオンオフを繰り返す運転(間欠運転)には向いていません。また熱膨張と収縮を繰り返す(熱衝撃)ことで発電セルに応力がかかる点も、セラミック材質では耐久性低下の一因になります。そのため、材料開発の面でも、熱衝撃耐性を高める研究がされています。
この特徴により、たとえば使用電力が減った場合に、SOFCセル内の温度を下げて一旦発電を止めることも難しいため、不規則に電力需要が変わる状況ではもったいない発電方式と言えるでしょう。そのため、余った電力を電力各社やガス会社が買い取るシステムも考案されています[3]

 
最後に、まとめとして、PEFCとSOFCの主な特徴とメリット・デメリットの比較表を記します。

PEFCとSOFCの主な特徴とメリット・デメリットの比較

【表1 PEFCとSOFCの主な特徴とメリット・デメリット】

 

燃料電池技術に関する次回の記事では、SOFCの構成部品やセル・スタック構造について解説します。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)

 


《引用文献、参考文献》


 

 

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