【品質保証塾・入門編】品質とは何か?品質保証の前提知識と基本的な考え方を解説

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品質保証の基本

突然ですが皆さんは『品質』と聞くと、どういうイメージを持ちますでしょうか?

物がすぐ壊れたり、ずっと使えたり…サービスが良かったり、悪かったり…

なんだか言語化して説明するのは難しくないですか?
今回の記事では『そもそも品質とは何なんだろう?』という疑問から『品質はなぜ大切なのだろう』という品質の基本的な考え方を解説したいと思います。

1.品質の定義とは?

品質の定義

今では製造業のみならず、病院やサービス業でも有名な「ISO9000:2015」(2015年に制定されたISO9000という意味)では ”品質” を次のように定義しています。

  • 3.6.2 品質(quality)
    対象(3.6.1)に本来備わっている特性(3.10.1)の集まりが、要求事項(3.6.4)を満たす程度
  • 3.6.1 対象(object), 実体(entity), 項目(item)
    認識できるもの又は考えられるもの全て
  • 3.10.1 特性(characteristic)
    特徴付けている性質
  • 3.6.4 要求事項(requirement)
    明示されている、通常暗黙のうちに了解されている又は義務として要求されている、ニーズ又は期待

(以上、ISO9001:2015より抜粋)

 
これだけを読んで「品質」を理解するのは、かなり難しいのではないでしょうか。
もう少し柔らかい言い方にしてみましょう。

 
対象」というのは、製品であったり、組織が提供するサービス、組織が持つ仕組みや従業員等のリソースの事を意味します。

そして「特性」とは、そのもの自体がもつ性質や特徴のことです。
例えば、製品の物質的な性質/特徴(機械的、電気的、化学的等)であったり、感覚的な性質/特徴(嗅覚、触覚、視覚、味覚等)。その他にも、礼儀正しさ・誠実さといった行動的なものもありますし、早い/遅いといった時間的なものや、”速い電車”といった機能的なものもあります。

最後に、「要求事項」とは利害関係者が求めるニーズや期待を意味します。

 
「品質」を柔らかい言い方で表してみると『組織が提供する製品やサービス(対象)の機能や特徴(特性)がお客様のニーズ(要求事項)にあっているのかどうか(程度)』となります。

一般的な例でいうと、お客さんがオーダー(要求事項)したメニュー(対象)を定められた時間(特性)で提供できるかどうかが『品質』となり、提供できるレストランを『品質が良い』と呼びます。
もちろん、味や店員の態度などもありますけどね。

 

2.品質はなぜ大切なのか?

いうまでもなく皆さんは『品質の悪い』製品やサービスは使いたくないと思います。

すぐ壊れてしまったりするのも問題ですが、それが原因で怪我をしたり、火災等の災害が発生してしまったら最悪のケースです。

たった一つの問題で組織の信頼を失ってしまうことだってあります。1人のユーザーの信頼はもちろん、大問題に発展しニュースに取り上げられてしまったりでもしたら、社会的信頼を失ってしまうのです。

一度崩れ去った信頼を取り戻すのは非常に困難。売上が減ってしまい、組織の経営が厳しくなったり、従業員の雇用を維持することができなくなる場合だってあります。

もちろん全ての問題が信頼の欠落に繋がるわけではありません。しかし『小さな問題だから大丈夫』と疎かに扱ってしまうと、後々大きな問題に繋がったり、お客様から大きなクレームが入ってしまったりする恐れもあります。

1回目の問題は『しょうがないよね。次回は気を付けてね。』で終わるかもしれませんが、それが2回・3回…と繰り返し発生してしまうと、お客様も怒ります。

大きな問題に繋がる前から『品質を意識』する組織を築き上げることで、より強靭な組織を創り出し、お客様や社会からの信頼を獲得することができます。小さな積み重ねを通して、次の商売に繋がったり、異なるお客様に紹介をいただいたり、組織の利益・発展に繋がります。

 

3.品質を構成する大切な要素『要求事項』

前述の通り、品質とは『組織が提供する製品やサービス(対象)の機能や特徴(特性)がお客様のニーズ(要求事項)にあっているのかどうか(程度)』でした。

どんなに組織が良い製品だと思っていても、お客様のニーズ(期待値)に合致していなければ、それは『品質が良い』とは呼べません。『要求事項』は、品質を構成する大切な要素となります。

しかし『要求事項』と言っても様々ですよね。色や感触であったり、速さであったり、接客の質であったり。もっと詳しく『要求事項』を掘り下げていきたいと思います。

 

3つの要素「QCD」から成る顧客要求

QCDと顧客要求

主に顧客要求は、製造業では良く耳にする『Q(Quality:品質)』『C(Cost:費用/価格)』『D(Delivery:納期)』から成ります。
 

Q(Quality:品質)

顧客要求事項で品質を捉える際は『品質特性』として捉えましょう。品質特性とは、お客様が求める製品やサービスの品質要素を具体的に評価できる表現にしたものです。

例えばボールペンなら「滑らか」「鮮やか」「持ちやすい」「長持ちする」「かっこいい」といったものです。

実際に製造業では、上記のようなお客様が求める品質は仕様書などに落とし込まれます。そして、具体的にどのような寸法であるとか、色味であるとか、耐久性であるとかが明記されます。

それ以外にも「不具合が少ない」だとかで評価を受けるケースもあり、目標値に対して不具合が何件あったかでレーティングされる場合も珍しくありません。

 

C(Cost:費用/価格)

次にあるのが費用/価格です。これはイメージがつきやすいのではないでしょうか。
「〇〇〇円で作ってほしい」とか「〇〇円は高く感じる」などです。

実際には見積書などで具体的にいくらかかるのかを算出し、それをもってお客様と商売が始まったりするケースが多いかと思います(例外はあります)。

この価格も顧客要求を構成する大切な要素になります。例えば100円くらいで買いたいと思っているお客様に1,000円の商品を勧めたところで、お客様が求めるニーズに合致しません。

 

D(Delivery:納期)

そして最後にあるのが納期になります。

どこにも負けない低価格で全く壊れない高品質であろうと『届かない』と意味がありません。お客様が求める納期までに製品を納めることが大切になってきます。

例えば、全然部品が届かなくて工場がストップしてしまったらどうでしょう?お客様に多額のロスコストを負わせてしまいますね。

案外忘れがちですが『納期』も要求事項を構成する大切な要素になります。

 

4.まとめ

いかがでしょうか。
始めは、なかなか言語化が難しかった『品質』を少し説明できるようになりましたか?
ちょっとでも身になっていただけたら幸いです。
 

さて、今回のまとめです。

  1. 品質とは『組織が提供する製品やサービス(対象)の機能や特徴(特性)がお客様のニーズ(要求事項)にあっているのかどうか(程度)』のことをいう。
  2. 品質を下げることは組織の信頼性にも繋がり、品質を挙げることは組織の信頼を高め、利益にも繋がることができる。
  3. お客様のニーズ(要求事項)は大きく『Q(Quality:品質)』『C(Cost:費用/価格)』『D(Delivery:納期)』から成る。

 
次回は、品質保証をするための組織の在り方や仕組みについて解説します。

 

(アイアール技術者教育研究所 Y・S)

 

 
 
 

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