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品質保証は現場勤務だと、様々な経験を積めることは以前の記事でわかっていただけたと思います。しかし、本社勤務だから悪いというわけではなく、本社勤務でもたくさんの経験を積むことができます。
今回は、本社で品質保証業務をすることで得られる経験を中心に、本社品証が普段どのような仕事をしているのか紹介していきます。
目次
現場で仕事をしていると、本社勤務の品質保証の仕事ぶりが見えないってこと、よくある話なのではないでしょうか。現場で働いていると「自分らがものづくりを支えている」という自信もあるため、オフィスで働いている人を「何もやっていないくせに!」などと思ってしまう方も多いのかもしれません。
今回は、実際に本社勤務も工場勤務も経験のある筆者が、本社勤務の品質保証がどのような仕事をしているのか、フラットな目線で書いていきたいと思います。
工場で品質保証をしていると、品質保証の業務も品質管理の業務も混合されているケースが多いです。しかし、実際は品質保証と品質管理で大きな違いがあります。
品質保証は組織全体にわたって活動を行い『顧客視点』で品質向上に取り組み、品質管理は工場でのものづくり中心で活動を行い『作り手視点』で品質向上に取り組んでいます。
[※詳細は別コラム 品質保証と品質管理の違いは? をご参照ください。]
本社の品質保証部門は、現場で起きる一件一件の品質問題に対応するのが仕事ではなく、組織全体にわたって品質管理を行うことが主な義務になります。
その一環として、品質マネジメントシステムを構築・改善し、適切な手順や方法を確立することで、より強固な品質保証体制を築き上げる仕事があります。
品質マネジメントシステムとは、組織の製品やサービスの品質を管理するためのシステム(仕組み)になります。品質マネジメントシステムは、全社もしくは事業部毎に適用される、全体を包括する仕組みになるため、非常に重要な業務になります。
本社の品質保証部門は、品質マネジメントシステムの構築、運用、維持、改善を担当することも主な業務となります。この業務には以下のようなものがあげられます。
このようなタスクを実行することで、品質マネジメントシステムが適切に運用され、製品やサービスの品質向上に寄与します。
では何がメリットかというと、組織全体の品質保証体制を知り、改善することができるのです。工場や事業部で独自のルールや仕組みを持っている場合も多く、全社的な品質保証体制を知る機会は少ないです。
本社勤務をすると、全体を見渡しながら広い視野で『会社としての』品質保証体制を知ることができます。
基本的に、このような品質保証体制はISO規格などに基づき構築されています。規格の知識を身につけることで、他社にも通用する汎用性のあるスキルを磨けます。
組織によって構造がことなることもありますが、本社の品質保証の特徴は、全社的な品質保証活動に携われ、上流から品質保証活動に参入できることでした。
例えば、従来品と全く仕様の異なる新製品が登場した場合は、品質要件の定義を行わなくてはなりません。
製品やサービスに必要な品質基準を、明確に定義することを意味します。一般的に、これには製品の性能、信頼性、安全性、適合性などが含まれます。これらの定義は、製品やサービスの開発、生産、販売、提供する際のガイドラインとして使用されたり、設計を行なう際の仕様書などとして使われます。
品質要件を定義することで、確実に製品やサービスが期待される品質を提供することができるのです。
「品質管理計画」とは、品質を保証するために、品質要件や品質管理手法、技術的手法、品質管理責任者などを明確に定義した計画となります。この計画は、品質要求レベルを達成するために、組織全体で活用されるのです。品質管理の方針や手順、指標を明確にすることで、製品やサービスの製造や提供過程で行う検査や確認作業を実施することができます。
品質保証では、製品やサービスの品質を保証するために、品質管理計画を策定し、その計画の実施結果を評価することも仕事の一環です。KPIなどを設定し、必要に応じて改善に努めます。
本社勤務の品質保証は、海外拠点(工場や事業所)とも頻繁にやりとりを行います。例えば、全体の品質状況の監視を定期的に行う会議や、大きな品質問題が発生したときに突発的に行う会議があります。
本社側は細かな品質問題の是正などは担当しません。しかし、品質問題の是正には、リソース(人、物、金)が必要となるケースもあるため、経営陣が揃っている本社側が状況を把握し、必要に応じて上層部へエスカレーションを行います。
海外拠点と会議を行う時の主な事例は、下記のようなものがあります。
もし、海外拠点のみで対処しきれない状況に陥っている場合は、本社側がサポートします。例えば、必要な技術者を派遣したり、資金を提供したりなどです。
前述の通り、海外拠点・国内拠点を含め、様々な拠点から情報を収集することも、本社品質保証部門の役割です。それらの情報や、市場の状況などを、本部長や役員へ報告を行います。
一般的には『マネジメントレビュー』や『品質会議』などと呼ばれ、ISO9001(品質規格の名称)にて要求されている活動となります。
マネジメントレビューでは、一般的に次のようなことが報告されます。
このような情報を経営層へ定期的に報告することで、大きな問題の未然防止になったり、問題が発生してしまっても解決までの時間が短縮できるのです。
本社の品質保証は、工場の生産ラインと向き合い品質保証活動に取り組むのではなく、組織全体にわたる品質保証活動に貢献できるのが特徴でした。
そのため、多種多様な製品の品質問題を知ることができたり、組織全体の仕組みや国際規格などの経験を積めるのが特徴でした。
各拠点の特徴や傾向、品質状況などを、広く俯瞰的に知ることができるので、ジェネラリストな視点で物事を捉える力がつきます。
組織全体にわたって、物やお金の流れをしれたり、管理側の視点で経営を積めるので、出世には欠かせない経験(?)ができます。
いかがでしたでしょうか。
今回は、本社勤務の品質保証のメリットをお伝えしました。工場現場では、なかなか知ることができない経験を本社勤務だとできますね。
次回は、品質保証業務での海外勤務・駐在についてとり上げたいと思います。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)