【自動車部品と制御を学ぶ】これで自動車用センサの全貌がわかる!

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自動車用センサーの解説

別のシリーズコラム「センサのお話」では、センサというものに対する考え方や、いくつかのセンサの原理を説明しました。

今回のコラムでは、自動車で使われているセンサの種類の全貌を、まとめて説明したいと思います。

自動車用センサの検出対象と目的

自動車用のセンサには、運転者に情報を与えるものと制御に使われるものがあります。
何のために、何を知るためにセンサを使うのかという観点から、以下図(A)に、自動車用センサの検出対象と目的をまとめました。
 

自動車用センサ

センサは状態の変化を知るためのものですが、センサのコスト、搭載可能な場所、検出目的、そして特性(感度、精度、応答性など)により、状態の変化をどの物理量変化量や化学変化量で検出するのか、直接的に検出するのか、あるいは相関のある変化量を用いて間接的に検出するのかが選択されます。

例えば、回転検出の場合、同期していれば、どの位置でどのタイプの回転センサを使っても良いというわけではありません。同期して回転していても回転力伝達機構に捻じれや振動が有る場合、狙った制御の演算に用いる回転信号精度が得られないこともあります。
一方、逆にそれほどの精度・応答性が必要とされない場合には、回転センサを用いずに、回転と同期する圧力変化を他の制御で用いている圧力センサにより検出して利用することができます。

以下、図(A)で「検出対象」として挙げた各項目について説明します。
 

検出対象① 車両の状態

車両の基本的走行特性(走る・曲がる・止まる)が狙いどおり制御できているか知るために「車両の状態」を検出します。

車両の前後、上下、左右傾き、回転の変化速度を知るためには、加速度センサジャイロセンサ(角速度センサ)ヨーレートセンサが用いられます。また、車輪のスリップを検出するためには、車速センサ車輪速センサが用いられます。

加速度センサ

車両での制御では、基本制御や制御の補正のために「温度」が重要な因子であり、吸気、排気、EGRガス、各種オイル、燃料、冷却水、あるいは触媒などの温度を知るために温度センサを用います。

エンジン車では燃料量を知るため、燃料タンクに燃料レベルセンサを備え、電気自動車ではバッテリの充電/放電電流状態を知るために、バッテリセンサを用います。

その他、車両状態を見るセンサとして、車両衝突を検出する加速度センサもあります。

 

検出対象② 部品の状態

エンジンやトランスミッションなどの部品の状態を知るためや、それらを制御するためのアクチェータ(作動装置)の状態を知るためにセンサを用います。

回転や回転位置を知るためのセンサとしては、カムシャフト角・回転センサクランクシャフト角・回転センサターボ回転センサ電動機(モータ)回転角センサなどがあります。

制御に用いる空圧、油圧、そして燃料圧を知るために圧力センサを用います。
ディーゼルエンジン用コモンレールシステムの燃料圧検出には2500気圧(250MPa)以上の圧力を検出するセンサもあります。

空気圧の状態を知るためのセンサにはエンジンの吸気圧センサ(ブースト圧センサ)、燃料タンク室のタンク内圧センサ、そしてタイヤ空気圧センサなどがあります。

燃焼制御では空気と燃料の混合の最適化のために、吸入空気量を知るためのエアフロセンサ(空気流量センサ)を用いますが、圧力や温度の影響を補正するために、センサ本体に圧力センサや温度センサを搭載しているものもあります。
エンジン周りのセンサ
制御状態を検出するには、いろいろな方法があります。
例えば、エンジンの吸排気バルブのリフトタイミングを、油圧とリンク機構を用いてフィードバック制御している場合、用いるセンサの選択肢として、バルブの位置センサ、リンク機構の位置センサ、油圧ピストンの位置センサ、あるいは制御油圧の圧力センサなどがあります。
あるいは制御状態を検出せずに、制御効果として現れる排気ガスの変化をO2センサやNOxセンサで検出して狙いどおりの変化を示すかモニタリングするという方法もあります。

この他、エンジンの燃焼状態(燃焼始め)を知るために用いるノックセンサ着火センサ(光学式)、筒内圧センサなどがあります。

 

検出対象③ 排ガスの状態

O2センサNOxセンサなどを用いて、ガス濃度を検出します。
排ガスとセンサ(NOxセンサ)
λセンサ(ラムダセンサ、空気・燃料比センサ)は、ガソリンエンジンの燃焼制御において三元触媒の活性領域を使用するために用いられます。

また、尿素水噴射方式のNOx選択還元触媒では、アンモニアが余剰に生成されて排出されていないかを知るためにアンモニアセンサが用いられます。

 

検出対象④ 故障の状態

例えば、オーバーヒート時に運転者に対応を促すために、温度センサによりオーバーヒート状態を検出し、表示します。

環境保全の関係では、排ガス制御機能の過度の劣化や故障が起きた時に、決められた方法で故障診断をして運転者に表示をしなければなりません。(OBD、オンボード故障診断規制)

例えば、排ガスフィルタの目詰まりや焼損により排ガスの悪化が生じた場合には、フィルタ前後の圧力差を検出する差圧センサや、PM(排気微粒子)の増加を検出するPMセンサなどを用いて検出をおこない、故障表示をします。

燃料電池自動車(FCEV)では、発電のために酸素(空気)と水素を用いますが、故障による水素漏れを検出するために、水素センサを備えています。

 

検出対象⑤ 車両外の環境

車両が受ける天候影響(温度、降雨、横風)や障害物(他車、歩行者、動物など)の状況を検出します。

障害物検出(距離、種類)のためのセンサとしては、超音波センサミリ波レーダ(76GHz,24GHz)、LiDAR(ライダー、Laser Imaging Detection and Ranging、レーザ画像検出と側距)、カメラ(単眼、複眼、近赤外線、遠赤外線)などがあります。

運転中の雨を検知
 

検出対象⑥ 車両内の環境

車内空調エアコン制御のためのセンサとして、車室内、車外気、あるいは乗員の温度状態分布などを知るために各種の温度センサ(赤外線温度センサを含む)や赤外線カメラなどが用いられます。

日射しの影響も考慮して制御する場合には、フォトダイオードを用いた日射センサが使われます。

 

検出対象⑦ 運転者の操作

車両の制御のためには、運転者の意図を知ることが必要です。
アクセルペダルとブレーキペダルのセンサ「走る・曲がる・止まる」に関する運転者の操作・意図を知るために、アクセルペダル位置センサステアリング角度センサ、そしてブレーキペダル位置センサが用いられます。
高度な車両制御では運転者の運転特性を制御に反映する場合があり、上述三つのセンサによる情報を総合して運転特性を分析・判定します。

各種スイッチや調節装置において運転者の音声やジェスチャにより操作の意図を知り自動的に操作を行うシステムでは、意図の検出のために集音マイクモーションセンサが必要となります。

 

検出対象⑧ 運転者の状況

運転者のわき見や急な病気など運転に不適当な状態を、カメラやハンドルに取り付けたセンサ(ねじりトルクセンサなど)を用いて分析し、警告や制御を行います。

例えば、まぶたの開き具合やまばたき頻度、あるいは口や顔の向きなどを分析し、わき見などをせず前方を注視しているか(できる状態か)を判定します。

 

検出結果の利用とコネクティッドカー

自車の制御のために検出した情報は、他でも共有・利用ができます。
「コネクティッドカー」と呼ばれる技術分野では、ネットワークで繋がることにより、自車のセンサで検出した車間距離情報は、「他車への情報提供」や「交通状況改善(渋滞緩和、安全向上)」にも利用できます。

例えば、ワイパーの自動制御のための雨滴センサ(フロントグラスの振動ピックアップセンサ)による検出結果は、ビッグデータとして集められ、リアルタイムの降雨分布情報として活用ができます。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
 

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