3分でわかる フォトレジスト開発の基礎知識

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フォトリソ

AI向けの半導体を提供するNVIDIA(エヌビディア)がマイクロソフトを抑え、売上高で世界TOPになりました1)。2023年の半導体ランキングでは、1位TSMC、2位NVIDIA、3位Intelの順となっています2)
TSMCは半導体ファンドリーで、熊本にあるTSMCの工場では、24年末に線幅12nmの半導体の量産3)を開始する予定です。また、先端半導体の国産化を目指すラピタスでは、回路線幅2nmのロジック半導体の量産4)を計画しています。原子のサイズが0.1nmくらいなので、原子レベルのサイズに迫ってきています。

本記事では、この線幅を実現する微細加工技術であるフォトリソグラフィー工程とフォトレジストの基礎知識を解説します。

1.回路パターンの形成プロセス(微細加工技術)

半導体の回路パターンを形成するためには、大きく分けて4つの工程があります。

  1. 絶縁体となる酸化膜や金属配線の金属膜を成膜する薄膜形成工程
  2. レジストという感光性樹脂で回路パターンをつくるフォトリソグラフィー工程
  3. レジストの覆われていない部分を、エッチングするエッチング工程
  4. イオン注入や熱拡散によりN型、P型の領域を作る不純物拡散工程

 
その中でも、微細加工技術の要となるのが、フォトリソグラフィー工程とエッチング工程です。

フォトリソグラフィー工程は、レジストを塗布し、露光、現像することでウエハ上にレジストパターンを形成します。
その後のエッチング工程では、レジストの残っている部分は保護膜となりエッチングされずレジストがない部分はエッチングされてパターンを形成します。

 

2.フォトリソグラフィーの基本

では、もう少し詳しくフォトリソグラフィー工程について説明します。
フォトリソグラフィー工程は、レジストの露光、未露光の溶解差でレジストパターンを形成します。
主に以下の3つの工程で構成されます。

 

(1)レジストの塗布

ウエハを回転させながらレジストを塗布スピンコート)します。
事前にウエハ表面を疎水性処理することで、レジストとの密着性を高めることができます。

 

(2)露光

熱処理(プリベーク)を行い、残存する溶媒を蒸発させ、「ステッパー」や「スキャナー」と呼ばれる投影露光装置や、「アライナー」と呼ばれる等倍露光装置を用いて紫外線を照射します。
石英ガラスでできたマスクのパターンをウエハ上に転写することで、露光部と未露光部を形成します。

 

(3)現像

アルカリ現像液にウエハを浸して現像します。
現像後は熱処理(ポストベーク)を行い、現像液やリンス液を蒸発させるとともに、レジストとの密着性を高めます

 

リソグラフィー工程
【図1 リソグラフィー工程】

 

【関連記事】リソグラフィー工程をもっと詳しく知りたいへ(連載「半導体プロセス入門」)

 

3.光源の波長とフォトレジスト開発

パターンの微細化のためには、解像度を上げることが求められます。
解像度を上げるためには露光装置の光源波長を短くする必要があります。
そこで、光の波長が[g線(436nm)→ i線(365nm)→ KrF(248nm)→ ArF(193nm)→ EUV(13.5nm)]と短波長にシフトしていきます。
光源の波長が変わると、レジストもその波長に応じて最適化されていきました。

レジストには、光を当てた部分が反応し、レジストが残るゴム系のネガレジストと、レジストが溶解するノボラック系のポジレジストがありますが、今回はポジレジストについて説明します。

 

レジスト材料・レジスト液の進化

光源の波長がg線、i線の世代では、ノボラック樹脂をベース樹脂とし、感光剤に1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(NQD)系化合物を使用した、エッチング耐性のあるベンゼン環を有したレジストがメインでした。ノボラック樹脂はアルカリ水溶液に可溶ですが、感光剤のNQDと混合すると不溶となります。そこに光を当てるとNQDが分解され、アルカリ水溶液に溶解します。

このように感光剤の化学変化を利用した溶解差からパターンを形成する方法が使用されてきましたが、解像度に限界があり、マスクとなる石英が良好な透過率を維持するKrFエキシマレーザー光源の時代に入ります。
これまで汎用されていたノボラック樹脂ではKrF、ArFの200nm付近の光を吸収しすぎるため、新しいベース樹脂が登場します。それが、ポリヒドロキシスチレン(PHS)をベース樹脂とした化学増幅型フォトレジストです。化学増幅型フォトレジストは、露光により酸を発生させ、酸触媒反応により脱保護を行い、現像液の溶解を促進させます。
これにより、露光部と未露光部の溶解性差がはっきり現れ5)、高解像度化を実現しました。

 

露光波長の変遷とレジストの対応
【図2 露光波長の変遷とレジストの対応】

 

4.今後の技術動向に注目

光源の短波長化と共にレジストの開発は進められてきましたが、先端のEUV(極端紫外線)では、酸素や窒素のような気体もEUV光を吸収するため、露光機内は真空状態を維持する必要があります。
レジストから出るアウトガス成分がマスクや露光機のミラーを汚染するなどの新たな課題も残されています。今後の開発動向に注目していきましょう。
 
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 J・K)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 日本経済新聞「NVIDIA、半導体売上高で初の世界首位 AI向けで独走」(Webサイト)
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN181AC0Y4A210C2000000/
  • 2) セミコンポータル「2023年世界の半導体企業、トップは2年続けてTSMC」(Webサイト)
    https://www.semiconportal.com/archive/editorial/market/240227-chipranking.html
  • 3) ニュースイッチー日刊工業新聞
    「半導体再建”ラストチャンス“…供給網強靱化へラピダス・TSMCの動きは?」(Webサイト)
    https://newswitch.jp/p/39901
  • 4) Minutes by NIKKEI「半導体製造「ラピダス」ってどんな会社ナノ?」(Webサイト)
    https://www.nikkei.com/prime/minutes/article/DGXZQOCD036QH0T01C23A0000000
  • 5) 日本ゴム協会誌85 巻 (2012) 2 号「フォトレジスト材料における高分子材料技術」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/85/2/85_33/_pdf
  • 6) 技術評論社「はじめての半導体リソグラフィ技術」

 

 

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