3分でわかる技術の超キホン 車載用電池の種類と特徴、開発要素を整理

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車載用電池
自動車産業の最近の動きでは、脱炭素社会へ向けた技術開発として電気自動車(Electric Vehicle:以下EV)の開発が盛んに進められています。
日本をはじめ欧州、米国、中国、韓国など多くの国において開発にしのぎを削っています。EVの要となる主な要素技術が小型インバータ技術、高効率モータ技術と車載用電池技術などの電動コンポーネント技術です。

今回は、この中で車載用電池技術の基礎知識をご紹介します。

1.電気自動車(EV)開発の歴史

EVの歴史は古く、ガソリン車から遡ること40年の1830年代に原型が開発されたと言われています。かのトーマス・エジソンも制作したとのこと。
しかし、ガソリン車の技術開発が進み、1900年代には一旦EVが市場から姿をなくしてしましました。
その後、1980年代後半に二酸化炭素など排気ガスによる大気の汚染問題が大きくなり、世界の各国でゼロ・エミッション規制の流れが拡がりました。そこで再びEVに脚光が浴び、自動車メーカーが開発を進めることになりました。
そして、EVの開発の要の一つである車載用電池に関しても、自動車メーカー、電池メーカーが独自もしくは共同で開発を進めています。
 

2.車載用電池の種類

車載用電池は、現在主流として充電による蓄電池(二次電池)を利用しています。
将来の理想形は、ハイブリッド車のようなガソリンなどを用いない発電、蓄電を行いながら車を動かすことが求められていますが、現在の主流はプラグインを利用した二次電池のタイプです。
また車載用電池には、このような充電が必要なタイプではなく、燃料電池を使用したFCV(燃料電池車)用のタイプも存在します。

現在開発され商品化されているものには主に以下のものがあります。
 

(1)鉛蓄電池

内部に電解液の希硫酸が入っており、この中に一つのセルが短絡防止用のセパレータ上に、二酸化鉛(PbO₂)の陽極板海綿状鉛(Pb)の陰極板と、陽極板保護用のガラスマットで構成されており、これらのセルを複数セル電解液に浸した構成です。
1セル当たり2Vの電圧を発生します。最も古く、1859年に発明された二次電池です。

特徴としては、比較的に安価な材料で、火災などのリスクも少なく、短時間に大電流の放電が可能で、メモリ効果がないというメリットがあります。
一方、重量が重く、充放電の繰り返しで性能が劣化するデメリットがります。原料が鉛のため廃棄する上で環境に問題があります。

鉛蓄電池

 

(2)ニッケルカドミウム電池

電解液に水酸化カリウム(KOH)、正極に水酸化ニッケル(Ni(OH)₂)、負極に水酸化カドミウム(Cd(OH)₂)を使用する構成です。公称電圧は1.2Vです。1900年頃に製品化されており歴史も古い二次電池です。

特徴としては、過充電や過放電に対して比較的に強いメリットがあり、内部抵抗が小さく大電流の放電が可能です。
その一方、メモリ効果があり、自己放電が比較的に大きいなどのデメリットがあります。またカドミウムを使用しているため廃棄する上で注意が必要です。
 

(3)ニッケル水素電池

電解液に水酸化カリウム(KOH)、正極に水酸化ニッケル(Ni(OH)₂)、負極に水素吸蔵合金(M)、セパレータを使用する構成です。1990年に製品化されました。

前項のニッケルカドミウム電池と同様に公称電圧1.2Vで、カドミウムを使用していないことや電池容量も大きいことから置き換えが進んでいます。
ただし過充電や過放電時にニッケルカドミウム電池より弱いことや満充電時に発熱を伴う、水素吸蔵合金を使用するためコストがかかるなどの面があります。

ニッケル水素電池

 

(4)リチウムイオン電池

正極にはリチウム遷移金属複合酸化物負極には炭素系材料が使用され、電解液に炭酸エステル系の有機溶媒などにリチウム塩を溶解した非水電解質を用います。
動作としては電解液中をリチウムイオンが正極と負極を行き来することで充電、放電を行う構造です。

特徴としては、他の二次電池と比較してエネルギー密度が1.5~5倍高い。公称電圧も3.6Vと高く、メモリ効果がなく自己放電が少ないといったメリットがあります。
逆にエネルギー密度が高いため危険性も増します。また電解液に有機溶媒を使用するため高温で発火する恐れもあります。保存特性においても他と比較して劣り、満充電での保存では劣化が急激に進むというようなデメリットもあります。

リチウムイオン電池は、日本において1991年に製品化がなされ、競うように他のメーカーの商品化が続きました。

リチウムイオン電池

 

(5)全固体電池

今まで説明した電池と大きく異なる点が、電解液ではなく、これに代わるものとして固体電解質を使用してセパレータの役割も行うタイプのものです。この全固体電池は各社で現在量産化技術が十分に確立しておらず、本格的製品化に十分至っておりません。構成は、リチウムイオン電池に近い構成ですが、電解液を使用しないものです。
固体電解質に利用されるものには構造や材料の観点から「薄膜型酸化物系」や「バルク型硫化物系」などが採用されて製品化されています。

全固体電池

 

(6)燃料電池

これまで説明した電池は二次電池と呼ばれています。これに対して燃料電池は、国内でも一部車両に利用されている技術で、充電の代わりに燃料として、水素と酸素を補給する必要があります。
酸素は空気中から取り入れますが。水素は充填する必要があります。排出物として水が発生します。

方式については、固体高分子型アルカリ電解質型溶融炭酸塩型リン酸型固体酸素型などが開発検討されています。
燃料電池を搭載した車は、エコカー・クリーンカーとして自治体での促進化が進められています。

燃料電池

 

《車載用電池の種類と特徴・まとめ》

種類 メリット デメリット
鉛蓄電池
  • 安価
  • 温度変化に強い
  • 信頼性が高い
  • 重い
  • 充電時間が長い
  • 繰り返し充電で性能劣化
ニッケルカドミウム電池
  • 安全性が高い
  • 瞬間大電流が供給可
  • 環境に問題
  • 体積当たりの蓄電量がリチウムイオン電池などに劣る
ニッケル水素電池
  • 安全性
  • メモリ効果がない
  • 過充電/過放電に強い
  • 自己放電が大きい
  • ニッケルカドミウム電池より危険性が高い
リチウムイオン電池
  • 軽くて質量比の容量が大きい
  • 動作電圧が高い
  • エネルギー密度が高い
  • メモリ効果がない
  • 長寿命
  • 高価
  • 過充電による損傷
  • 温度変化に弱い
全固体電池
  • 使用温度範囲が広い
  • 安全性が高い
  • サイクル寿命に優れている
  • 急速充電が可能
  • 電極と電解質との界面抵抗が大きく出力を上げにくい
  • 電極と電解質間が固体のため密着力が外力で維持することが困難
燃料電池
  • エネルギー効率が高い
  • 排出ガスに汚染物質がほとんどない
  • 振動・騒音が少ない
  • 充填のため水素ステーションなどが必要
  • 触媒に白金が必要でコストが高い
  • 高圧な水素タンクが必要
 

3.車載用電池の開発要素

(1)電池性能の向上

電池性能を測る指標には以下のようなものが挙げられます。

  • バッテリ容量(Ah)
    充電が可能なエネルギー量で一定の電流値による放電での時間で表す。
  • 充電率(%)(SOC : State Of Charge)
    満充電に対する充電量の割合を表す。充電回数に影響
  • エネルギー密度(Wh/Kg)
    電池の重量当たりの蓄電可能なエネルギー量を表す。航続距離に影響
  • 出力密度(W/Kg)
    電池の重量当たりに瞬時に入出力できる電力量で表す。加速性能に影響

 

(2)小型化、軽量化

EVの車体への搭載上、小型化及び軽量化は重要な要素です。小型化により電池の積載量も増加に加え、軽量化も相まって航続距離の向上に寄与します。
 

(3)安全性

すべての製品要素に共通しますが、発火、発煙など火災、および故障による被害の拡大の障害を防ぐために安全性への配慮が重要です。
 

(4)その他

その他の開発要素としては、市場拡大には低価格であることというコスト面、また量産化が容易に行えるという生産性の面での技術開発が重要です。
 

4.車載用電池に関する今後の技術動向に注目

先ほど全固体電池に触れましたが、この分野では製品化、量産化が可能な無機固体電解質の開発などについて、各社熾烈な研究開発競争が繰り広げられています。特に全固体電池に関する特許分野では中国・韓国・米国などが過去3年くらいの間に提案件数が軒並み上昇しており、日本が突出して高く保持していましたが防御に回りそうな状態になっています。
二次電池の分野では、充電の方式として走りながら充電するための効率の良い手段や蓄電能力の向上といった分野が今後も盛んに研究開発されていくことが予想されます。
燃料電池の動きについても、コストや安全性に加え水素ステーションも含めたインフラの整備など課題解決が必要です。

今回は車載用電池について述べましたが、この分野の電池の問題点解決の必要性は、ドローンをはじめ今後さらに市場が広がる製品にも共通する問題であり、幅広く要望されています。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)
 

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