【品質保証塾・入門編】品質保証の仕事とは?仕事の種類と対応部門、業務内容を解説
製造業には欠かせない『品質保証』という仕事ですが、「品質保証ってどんな仕事をしているんだろう?」なんて思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
設計しているわけでもなく、製造をしているわけでもない。商売を取ってくるわけでもないのに、製造業に品質保証は欠かせない存在です。
今回の記事では、この『品質保証』の仕事の実態に迫っていきます。
目次
1.品質保証の平均年収
就職情報サイト「求人ボックス」の情報(2023年2月6日更新データ)1)によると、品質保証の給与は、正社員で平均年収463万円であり、全国的に高い水準とされています。
正社員の給与分布で一番多いのは408万円〜482万円の水準で、全体の給与幅は333万円〜932万円と比較的広い分布であり、勤務先や求められるスキルによって給与が大きく変わってくると見受けられます。
即ちスキルを高め転職を狙うなどして、年収を上げることのできる可能性を秘めています。
1)「求人ボックス 給料ナビ 品質保証の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」より
2.品質保証の大切なマインド
品質保証に従事するにあたって、とても大切なマインドをご紹介します。
(1)PDCAサイクルを回す
PDCAとは『P:Plan (計画)』『D:Do (実行)』『C:Check (評価)』『A:Action (改善)』を示し、業務を効率的にして、より良い組織へと変えていく手法になります。
品質保証観点でのPDCAは以下のようなものになります。
- Plan:品質の目標を計画/策定
- Do:計画に基づき実行に移す
- Check:目標が達成しているのか評価/確認
- Action:改善点を見つけ出し改善を行い、次の計画に活かす
このPDCAを繰り返すことを『PDCAサイクル』と呼び、組織を更によくする手法となります。
(2)客観的事実を用いる
品質保証で大切なのは『こう思った』というような主観をなくし、客観的に事実を見ることです。
例えば、データや数値といった事実から、推測を立てたり、問題提起を行ったりすることが大切となります。
思い込みをなくさないと「対策ができた!」と感じても再発してしまう恐れがあるためです。『なぜそれが対策といえるのか』『その対策の効果はあるのか』など、データや数値から根拠を述べる必要があります。
(3)品質第一精神を大切にする
組織には様々なしがらみが存在します。組織では Q(Quality) , C(Cost), D(Delivery) の最適解を見つけ出し、日々仕事が動いていますが、品質保証は Quality First でいなくてはなりません。
費用や納期を遅らせてでも、品質優先で仕事をします。費用や納期は他の部門が考えればよいです。品質保証は『品質第一』で仕事をしましょう。
3.品質保証の仕事
(1)全体統括(品質統括部門)
組織全体の品質に関する情報を管理するのが主な仕事です。各部門や事業部から上がってくる不具合情報(不具合内容や数量など)を集計して、不具合状況を監視します。
そして、その情報を経営者へ報告したり、マネジメントレビューの段取りを行ったりします。
全体の統括であるため、一件毎の不具合対応等などでは動きませんが、組織として重大な品質問題を扱ったり、経営者からのトップダウンを落とし込んだりする仕事は責任が伴います。
(2)QMS事務局(品質企画部門)
一般的に組織には、QMS(Quality Management System:品質管理システム)という、組織が製品やサービスの品質を向上させるための『仕組み』が備わっています。
このQMSを管理するのも品質保証部門の仕事です。ISO9000認定を受けている企業には、QMS事務局として働いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
QMSの回覧承認の確認であったり、QMS自体の改善を手がけたりします。その他にも、内部監査を行う際には監査員として各部門が正しく業務ができているのか確認を行う場合もあります。
(3)品質評価(信頼性評価部門・ソフトウェア評価部門)
設計部門が作り上げた製品が正しく動作するのか、簡単に壊れたりすることはないのか、信頼性評価を行うのが主な仕事です。
設計部門でも詳細な評価は行いますが、品質保証部門ではある程度完成した製品(試作品や量産同等品など)を扱うことが一般的です。世界各国の規格や、顧客要求事項に基づき評価を行い、試験をPassできるのか確認を行います。
評価の一例としては、ユーザーが使用する環境を考慮して、低温/高温環境で問題なく動作できるのか恒温槽を使用して確認をしたり、何回もボタンを押しても壊れないのか、粉塵が舞い上がる環境でも動作するのか等が挙げられます。その他にも、製品によってはソフトウェア観点での評価も行われます。バグは無いかユーザーが操作したり、第三者評価検証が行われるケースもあります。
このような評価を経て問題ないと判断されたら『保証できる』とお墨付きを与えられ、世の中に製品が出回ります。
(4)開発中の品質対応(開発品質保証部門)
組織によっては、「開発品質保証」と「量産品質保証」とで部署が分かれているケースがあります。
まず「開発品質保証部門」では、開発中における品質対応や、組織の決まりや基準に準じた開発が行われているのか監視することが主な仕事です。
組織には、QMS等の独自規定が定められているケースが大半ですが、その規定や基準に基づいて開発が行われているのかを、品質保証目線で監視することも仕事の一つです。その他にも、外部からの要求事項や規格に従っているのか(ISO等)も確認が行われます。
例えば、内部監査やアセスメントが行われる場合はプロジェクトにおいてエビデンスを集めたり、現在の開発がスケジュールやコンプライアンス観点で問題なく行われているのかを監視することも大切な仕事の一つです。
(5)量産後の品質対応(量産品質保証部門)
どんなに完璧な品質基準や規格を持っていても、どんなに多くの評価を行ったとしても、モノを造れば必ず不具合は発生してしまいます。この不具合対応を行うのが「量産品質保証部門」の仕事です。
例えば、顧客からクレームが入ったら選別を行って他の製品は問題ないことを確認したり、顧客からより詳細な不具合情報を入手したり、不具合回収から解析・原因調査・対策・再発防止の全体アレンジと顧客報告資料の作成および報告を行ったりするのが仕事です。
単純に不具合対応だけではなく、量産後には顧客による監査も行われるため、その取り仕切りや検出された問題の是正と報告も行うことがあります。その他にも、規格や法規が変わった場合の対応などもあります。
量産後の品質に関わる問題に対応するため、その仕事は多岐にわたります。
(6)購入部品の品質対応(購入品品質保証部門)
製造業では1〜10まで全て自社で製造・設計することは少なく、必ずどこからか材料や部品を買って、成形したり組み立てたりします。
その製品を構成する材料や部品の品質対応を行うのが主な仕事になります。
例えば、部品を会社として使っても問題ないと判断できるのか認定作業を品質保証視点で確認を行ったり、材料や部品が問題で発生した品質問題の是正処置対応を行ったりします。
そのため、材料や部品を供給するサプライヤーとの繋がりが強い部門になります。サプライヤーから受け取った改善報告書の精査や、時には実際にサプライヤーの工場へ行き、監査を行ったりします。
4.まとめ
本日のまとめです。一言で『品質保証』といっても様々な仕事があるのがわかっていただけたら幸いです。
- 品質保証の平均年収は全国的にも高水準
- 給与幅は広く、所属企業や持つスキルによっては高年収も目指せる
- 品質保証で大切なマインドは『PDCAサイクル』『客観的事実』『品質第一精神』
- 品質保証といっても企画・開発・量産など幅広い品質保証業務がある
次回は、品質保証業務における理想の人物像や求められるスキルについて考えてみます。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)