【品質保証塾・初級編】品質保証には海外勤務のチャンスが多い?
品質保証は海外と関わる機会が多くあります。
部署名に『海外』とつく部署もたくさんありますが、もしかすると海外営業や海外出荷予定管理のような部門よりも海外へ出張や駐在をする機会が多いかもしれません。
『品質保証』という部署名は、地味な印象も感じてしまうかもしれませんが、実は様々な経験を積むことのできる素晴らしい部署なのですよ。
今回は、品質保証がいかに海外のチャンスが多く、どのような経験を積めるのかをご紹介していきます。
目次
1.品質保証に海外勤務のチャンスが増えている理由は?
まず品質保証に、なぜ海外チャンスが転がっているのか?バックグラウンドについて説明していきます。
【背景1】サプライチェーンの国際化
今日の製造は、サプライチェーンのグローバル化が著しく、全世界の国々を相手にビジネスをしています。
日本から物を仕入れて、日本で製造して、日本のお客様に売るという形態は、今日の製造業においては、もう古いかもしれません。世界中の企業から安くて高品質の物を仕入れて、世界各国にある工場で生産、そして世界中のお客様へ届けるのです。
そのため、海外サプライヤーから仕入れた製品で不具合があれば、外資系企業と関わります。
海外の顧客に納めた製品で不具合があれば、外資系企業からクレームを受けることになります。
即ち、世界中の企業と品質問題の解決を目指しコミュニケーションをとっていかなくてはいけません。
品質保証で働くには、グローバル視点で働く力が必要となります。
【背景2】生産拠点のグローバル化
海外に工場を建てることにより様々なメリットを受けることができます。
一番は、やはり物価の安い地域に工場を建てることで、現地のローコストな材料費、人件費、税金などによりコストの削減につながることでしょう。
その他にも、海外に拠点を持つことで、新市場の開拓に取り組むことができたり、マーケットに近い地域に工場を建てることで輸送費用を抑えられたり、企業やブランドイメージの向上などが見込まれます。
そのため、製造業においては、海外工場をもつ企業も多数存在し、品質保証は海外工場で発生した品質問題にも関わる機会が多いです。品質保証として働いていると、頻繁に海外工場とのやり取りを経験できます。
【背景3】製造業において品質保証は必要不可欠
製造業において、品質保証部門の存在は必要不可欠です。
組織が生み出す製品やサービスの品質を向上するため、設計や製造などの『物をつくる側』ではなく『第三者』の視点で活動を行なう品質保証がいる必要があります。
どうしても『物をつくる側』の視点になると、時間までに作らなきゃ、面倒くさいからいいやなど、品質への配慮が足らないまま、ものづくりが進んでしまい、結果大きな品質問題へと繋がってしまうケースもあります。顧客、法律、ルールなどをしっかり守り『第三者視点』でものづくりを支える品質保証の存在は、製造業においては不可欠です。
つまり、グローバル化が進む今日の製造業に、品質保証は必要な存在であり、品質保証が海外と関わる機会も多く存在することになります。
以上より、今日の製造業の状況と、製造業において品質保証は必要不可欠な存在だとおわかりいただけたと思います。では実際に、品質保証がどのように『海外と関わりがあるのか』についてご紹介していきます。
2.グローバル標準化への貢献
海外拠点が数多く存在する企業の場合、品質保証における標準をグローバルスタンダードにしていく必要があります。
各拠点で品質保証体制や仕組みがバラバラだと、生み出される製品やサービスの質にも偏りがでてきてしまいます。細かな規定やルールは各拠点で異なるものの、大枠の品質保証の体制や仕組みはグローバルスタンダードとして運用していかなくてはなりません。
そのため、国内拠点の品質保証として働いても、グローバルスタンダードに関わる仕事がたくさんあります。
例えば、仕組みの企画側にいる場合は、日々仕組みの改善に取り組んでいますが、もし変更(改善)があった場合は、各地への説明会などを開催する必要があります。何が変わって、今後はどうしていかなくてはいけないのかを説明し、仕組みや標準への理解度を上げるのです。海外駐在員に説明するときもありますが、時には外国籍の方に説明しなくてはいけないケースもあります。
また、関わる海外拠点の標準を理解する必要もありますが、そのときは外国語(基本的には英語です)で書かれた文書を読まなくてはいけないこともあります。
グローバル企業に勤める品質保証は、海外と関わる機会がたくさんあります。
3.海外工場監査の対応
時に品質保証は、海外工場で行われる顧客の監査対応の支援を行うこともあります。
一般的には、海外工場で駐在している日本人が対応しますが、内容によっては対応しきれないことも多いです。そういった場合は、国内外の工場や拠点にいる品質保証部員がフォローにはいることもあります。
監査は実際に生産ラインを確認すること以外にも、体制監査(品質の国際規格に準じた品質保証体制が確立されているか、要求事項がしっかり落とし込まれる体制はあるかなど)が行われることもあり、生産ラインに詳しいだけではなく、一般的な知識やスキルが求められることもあります。
また、顧客の監査以外にも、組織が独自で行う内部監査や、認証機関(ISOなど)から受ける監査対応などがあります。
実際に工場の監査で品質保証は以下のようなタスクが行われます。
- 工場の品質管理システムを見直して評価を行い、会社の基準と規制要件を満たしていることを確認する。
- 工場が確立された手順に従って業務が遂行されているか確認を行い、品質基準を満たす製品を生産していることをオンサイトで確認する。
- 製品の品質に関連するデータ・エビデンスの収集と確認をする。
- 工場に製品の品質を維持するための十分なリソースと設備があることを確認する。
- 工場の従業員が職務を遂行するための適切なトレーニングを受けていることを確認する。
- 工場の是正および予防措置プロセスを見直して、品質問題への対処ができていることを確認する。
- 監査の結果を経営陣に伝え、プラントの品質管理システムに必要な改善を、必要に応じて実施する。
- 特定された問題を追跡し、問題が解決され、改善が行われたことを確認する。
監査対応は事前の準備が必要であったり、海外拠点にいるチームやローカル社員とコミュニケーションを頻繁にとって活動を進めていく必要があります。
このような経験を通して、グローバルスキルを磨くことができます。
4.いまは英語が苦手でもOK?業務を通じて英語力もUP
前述の通り、今日の製造業では世界各国に工場や事業所を構える企業が多いです。
ものづくりをしていると、必ず不良は起きますし、品質を監視する品質保証の存在が必要です。
そのため、工場であれば必ず品質保証は在席していますし、事業所でも顧客窓口になる品質保証は存在します。海外駐在を経験できる品質保証は数多く存在するのです。
しかし、必ずしも入社時から英語が得意な品質保証は多くありません。
元々理系大学で英語に触れる機会が少なかったり、開発職で国内にしかいたことがない社員も多いです。
5.まとめ
今回は、製造業のグローバル化が進んでいる背景から、製造業で品質保証が必要な理由、そして品質保証がどのように海外と関わりをもっているのか説明しました。
品質保証は海外へ駐在や出張する機会も多く、貴重な経験を積むことができます。
- サプライチェーンのグローバル化が発展し、安く効率よく材料や製品を輸送でき、コスト削減につながっている
- 物価の安い国に工場を建てることで、人件費や税金の削減につながる
- 『第三者視点』で仕事をする品質保証の存在は製造業において必要不可欠
- 品質の安定化にためにはグローバルスタンダードを運用し、品質の偏りがない、ものづくり体制を構築する
- 海外工場への監査も頻繁に行われ、品質保証として海外拠点に協力支援することも多い
- 必ずしも最初から英語が得意なわけではなく、業務を通して英語力を上げる品質保証部員も多い
次回は、品質保証のキャリアプランについて解説します。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)