【品質保証塾・初級編】品質保証でのキャリアプランとは?ステップアップのための戦略を考える

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品質保証とキャリアプラン(キャリアアップ)

今回は『品質保証としてキャリアアップするにはどういう道を歩むべきか』についての記事です。

筆者は2度の転職経験があり、関わってきた業界も複数あります。その経験を通してきて、品質保証としてどのようにキャリアアップをしていくべきか、戦略を解説していきたいと思います。

『キャリアパス・ステップアップ』と検索しても、なかなか実体験に基づいた情報は少ないのではないでしょうか。大多数は、転職サイトやアフェリエイトへ誘導するための記事であるような気がします。

他業種、他業界を渡り歩いてきたからこそ見えてきた経験を、ここでは述べていきたいと思います。

1.組織に関わる法規や要求を知ろう

組織に関わる法規や要求事項を知ることはとても大切です。もちろん、現場で起きていることに対処することは大切ですが、やみくもに改善に取り組もうとしても、失敗に終わるケースがほとんどです。

組織を取り巻く法規や要求を知ることで『最低限、どこまでやれば良いのか』がわかります
目先のことに追われるのではなく、広く俯瞰的な視点で『何を・どのように・どこまで、保証すべきなのか』を知って仕事に取り組むと良いでしょう。

設計や技術者は、自分に関わるルールについては詳しいものの、幅広く全体のルールは意外と詳しくなかったりします。その部分を品質保証の知識で埋め合わせしてあげると、様々な部門から頼られる存在となります。

また、法規やISOなどの要求事項は、他業種でも通用するケースが多いです。
例えば、ISO9001(製造業における品質マネジメントシステムの要求事項)や消費者保護法、製品安全法などの知識をつけると良いでしょう。

品質保証として法規の知識を身につけると、以下のようなメリットがあります。

  • 法律遵守: 法規に従うことは、製品やサービスの安全性や品質を保証すると同時に、法律違反を防ぐことができます。
  • 顧客信頼の向上: 法律や要求事項に基づいた品質管理システムを採用することで、顧客の信頼を得ることができます。
  • 競争優位性の向上: 法律に基づいた品質保証システムを整備することで、競争力を向上させることができます。
  • リスク低減: 法律に抵触することなく品質保証システムを運用することで、法的責任や財務的リスクを低減することができます。

品質保証の経験がない方は、とにかく法規や要求事項、規格などの知識をつけてみてください。社内の仕組みは、必ず法規や要求事項などを元に組み立てられています。

 

2.社内の仕組みを把握しよう

次にオススメしたいのは、社内の仕組みを理解することです。
ISO認証を受けている企業には必ずQMS(品質マネジメントシステム)が存在します。その他にも、航空宇宙産業であればAS9100、自動車産業ならIATF16949A-SPICEなど外部からの要求事項に従い、社内の仕組みに落とし込まれています。

社内の仕組みを理解することの大きなメリットは、組織全体にわたって大まかな流れを知ることができるためです。どの部門が何をしているのか、どういうテンプレートのドキュメントに何をまとめなくてはならないのか、承認回覧はどのように行うのか、業務の全体像が見えてきます。

そのため、中途採用や新入社員といった組織を知らない方であったり、他部門から品質保証に転籍してきた従業員は、まず社内の仕組みを把握することがオススメです。

組織が作り出した仕組みは「お客様へ満足のいく製品やサービスをつくり続けるためのもの」であり、組織のノウハウが詰まった集大成です。この仕組みを知ることで、品質保証体制の、組織としての在り方を知ることができます。

その他にも、品質向上するために、組織としてどのような取り組みをしているのかも分かります。
知識を蓄えると、不要な手順を削減し、効率的な手順を導入することができるようになったり、活躍の幅は広がるでしょう。

 

3.品質保証が他業界に飛び出すデメリットと乗り越える戦略

大企業であれば、同じ会社でもつくっているモノが異なるなんてよくある話だと思います。例えば、電子部品をつくっている会社が、自動車部品もつくっていたりする企業もあるのではないでしょうか。

他業界で経験を積むには、同じ会社内にある他事業部に異動をしたり、他の会社へ転職したりすることで実現することができるでしょう。実際に、筆者は自動車業界→半導体業界へと転職した経験があります。

そこで感じたデメリットと、乗り越えるための戦略を品質保証目線で書いていきたいと思います。

やはり一番のデメリットは「今まで通用していた経験が通用しなくなる」です。業界が違えば、品質保証の在り方も大きく異なります使う知識や技術も異なり、品質保証体制も全然違います

品質保証の転職デメリット

もし、他業界に飛び出てステップアップを考えている方は「どこでも通用する品質保証のスキル」を磨くことをオススメします。既に上記で上げたような、法規や外部要求事項の知識は、業界が変われどある程度、通用する知識になるので、しっかりと学んでおくことをオススメします。

法規や要求事項以外にも、数学的な知識を知っていると重宝されます。 品質保証では、統計的な手法がよく使われます。そのため、統計的な知識を有することで、業界が違っても活躍できる幅が広がります。
その一つにQC検定という品質管理の技能を測定するための試験があるので、興味のある方はチャレンジをしてみると良いでしょう。

また、評価や分析のスキルを身につけておくことで、活躍の幅を広げることができます。上記のような数学的な評価・分析の他にも、装置や測定器を使った分析であったり、現場で作業者の技能を客観的に測定する手法などがあげられます。

最後に、製品のライフサイクルの理解、顧客ニーズへの理解は、どの業界でも求められます。他業界にいっても、概念は同じであるため、どのようなポイントを品質保証として抑えておくべきか、しっかりと学んでおくべきだと思います。

 

4.研修でしっかりと基礎知識を身につける

もし新入社員や中途採用社員であるのであれば、必ず「新入社員研修」が行われると思います。新入社員研修は、座学であることも多く、専門的な話よりも会社概要であったり、一般的な製品知識であったりしますが、この研修でしっかりと基礎知識を身につけることをオススメします。

品質保証は、組織全体にわたって活動を推進することが特徴です。そのため、統一された品質マインドを持っておくことが、とても大切になってきます。品質保証として必要な知識やスキルは何かを研修を通して知っておくことで、何かに行き詰ったときの「拠り所」となってくれるでしょう。品質保証で扱う問題は、簡単に解決する問題が全てではありません。初心に返ることで、新しい発見や気付きを生みます。

また、一般的な知識を知ることで、組織として適切な品質管理手法を学ぶことができます。どういう製品を扱っていて、どういうお客様へ納めているのか、どういった問題が起きやすく、どういうように解決をしていくのかなどといった、概要をしっかりと把握しておかないと、専門的な仕事をやろうとしても、なかなか前に進むことができません。概要を知っていると、業務をしていくうちに「このケースでは、この手法を使うべきなのか」と点と点が繋がり合い、より理解を深めることができます。

退屈な座学かもしれませんが、品質保証の仕事範囲は組織全体に及ぶため、このような一般的な知識が、後々役に立つケースが多いです。しっかりと研修を受けておくことをオススメします。

 

5.あとは場数を踏むことも大切

もちろん、専門的な知識を積み重ね、着々とスキルアップをすることも大切ですが、製造業のノウハウ(製造ライン、工法、仕組みなど)は社外秘であることも多く、一般的な書籍で学ぶことが困難なケースが多いです。

品質問題は、外部から悪い印象を持たれかねないセンシティブな内容であり、簡単に組織の外に情報がいかないようになっています。そのため、品質保証としてスキルを伸ばすためには、実践の経験を積むことが大切になってきます。実際の品質問題やトラブルに対処するための戦略や方法を学び、少しずつ経験値アップを図ります。
三現主義と品質保証
新しい職場であったり、逆に慣れ切った職場だと、なかなか人とのコミュニケーションが億劫になってしまうかもしれませんが、とにかく三現主義(現場・現実・現物を確認すること)を徹底し、専門家とのネットワークを構築していくことで、様々なタスクをこなすことができるようになります。他のエキスパートとのコミュニケーションや協力は、品質保証でキャリアアップをするために、非常に大切になってくるでしょう。

実際に発生した品質問題の経験を積むことで、スキルアップすることができます。

 

6.品質保証の認定資格を取得する

品質保証の認定資格とは、品質保証に関するスキルや知識が評価され、それが認められた資格のことです。この認定資格を取得することで、品質保証に関する専門性が認められるため、仕事やキャリアアップに有利になるでしょう。

一般的に、品質保証の認定資格は、政府や業界団体が主催する試験やトレーニングプログラムを通じて取得することができます。例えば、ISO 9001認証資格、ASQのCertified Quality Engineer(CQE)などがあります。
品質保証に関する資格
このような認定資格を取得することで、品質保証に関するスキルや知識を確認し、自分自身の能力を評価することができますし、他のプロフェッショナルとのネットワークを構築することもできるので、活躍できるチャンスを掴みやすくなります。

 

7.まとめ

今回は、品質保証としてキャリアアップするためのポイントを記載してみました。
一つの企業に留まり、活躍の幅を増やしていくことも良いですが、一度他業界に出てみた身としては、転職によって異なる経験を積んでみることもオススメします。

  • 法規や要求事項の知識は業界・組織の垣根を超えて活用できるスキル
  • まず社内の仕組みを理解することで、業務の全体像を知ることができる
  • 他業界では、今までの経験が通用しないケースもあるので、デメリットになる半面、しっかりと一つ一つを対処していけば、活躍の幅が広がる
  • 品質保証は活動範囲が広いため、研修などで習得する基礎知識が役立つことも多い
  • 企業のノウハウを扱う品質保証は、一般書籍で知識を積むことが難しく、とにかく場数を踏むことで、様々な知識や経験を習得できる
  • 品質保証の認定資格を取得することで、専門性が認められ、キャリアアップに有利となることもある

 
次回は、品質保証の転職についてご紹介します。
 

(アイアール技術者教育研究所 Y・S)

 

 
 
 


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