【QC検定3級対策】品質マネジメントシステム|標準化/標準規格、7つの原則、ISO 9001:2015要求事項など

Pocket

QMS_品質マネジメントシステム

QC検定は、JSA日本規格協会グループが主催する品質管理の知識を問う筆記試験です。
内容は品質管理とは何か?から始まり、改善活動の基礎知識、統計的なプロセス管理など多岐にわたります。
受験者数は年々増加しており、毎年の受験者数が10万人を超える製造業ではメジャーな試験です。
[※関連記事:【技術系資格ナビ】QC検定(1〜4級の難易度/合格率/勉強方法/メリット)はこちら]

この連載では、各級の頻出範囲について例題を交えて解説を行います。この連載を通じて、QC検定の受験準備をしてみましょう。

3級の試験範囲は日本規格協会のHP(品質管理検定レベル表)をご確認ください。

【3級解説:第15回】品質マネジメントシステム

今回は3級の試験範囲(実践分野)から「品質マネジメントシステム」を解説します。

 

標準化とは?

標準化」とは、あらかじめ形や寸法、用法などを統一することです。
経済産業省のHPでは「標準化とは、「もの」や「事柄」の単純化、秩序化、試験・評価方法の統一により、製品やサービスの互換性・品質・性能・安全性の確保、利便性を向上するもの」とされています。

標準化した決まりごとを「標準規格」といい、音楽CDがどこのメーカーの製品でも同じオーディオで聞けたり(JIS S 8605)、どこの国で生産されたネジでも使用できたり(ISO 68)、非常口のマークがどこの国でも決まっていたりする(ISO 6309)のも標準規格の一例です。

この国際的な標準規格を定めているのがISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)という非政府機関です。一方、このISOの規格を日本国内用に翻訳したものがJIS(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)です。

 

社内標準化とは?

このような標準化を社内で行うことを「社内標準化」といいます。
JIS製品を生産している企業では、認証を受ける際に様々な取り決めがなされていますので、それにしたがって生産を行います。
一方、社内で効率よく生産を行うために業務をルール化することなども社内標準化にあたります。
この社内ルールのことを「社内規定」「社内規格」「社内標準」などと呼びます。
これらを策定・見直ししていく作業を「SDCAサイクル」と呼びます。

 

工業標準化とは?

工業標準化」とは鉱工業分野の標準化のことで、日本では産業標準化法(旧工業標準化法)に基づき日本産業規格(JIS)が制定されています。

工業標準化のメリットとして下記が挙げられます。

  • 経済・社会活動において互換性の確保などから利便性が向上する
  • 品種削減による生産の効率化する
  • 取引の単純化などにより公平性を確保する
  • 新しい知識や新技術の普及の支援により技術進歩が促進される

登録認証機関から認証を受けた事業者は、産業標準化法に基づき製品や包装にJISマークを表示することができます。認証を受けるためには、製品試験や品質管理体制などについて認証機関から審査を受けて合格する必要があります。

JISマークには次の3種類があります。

JISマークの種類(鉱工業品用、加工技術用、特定側面用

 

品質マネジメントシステムとは?

品質マネジメントシステム」(QMS)とは、企業や組織が顧客に対して提供する製品やサービスの品質を継続的に改善していく仕組みです。
前述のISOやJISで要求事項が決まっており、第三者機関で要求事項を満たしていると認証を受ければ「品質マネジメントシステムを実施している企業」という国際的な証明になります。

 

品質マネジメントシステムの7つの原則とは?

ISO 9001の要求事項の序文に品質マネジメントの7つの原則が明記されています。
この7つの原則は後述の要求事項の基盤となる考え方になります。

 

①顧客重視

顧客の期待に応え、さらにそれを超えるような製品やサービスを提供し続けなければならない、という原則です。

 

②リーダーシップ

リーダーは組織全体が同じ目的をもって行動するように求められ、必要な情報の伝達や人々の貢献を鼓舞・奨励・認めるなどの活動を行います。

 

③人々の積極的参加

品質マネジメントシステムの構築には全ての階層の人々の全面的な参画が重要です。
そのためには組織に参画する人々の満足度の評価やコミュニケーションの促進などの適切な処置を行う必要があります。

 

④プロセスアプローチ

プロセスアプローチとは完成した製品だけを議論するのではなく、製造の中で製品の品質などを決める要因やパラメーターを洗い出し、要因管理により品質を向上させる活動です。
プロセスの段階で管理ができれば不良品の製造を防げ、効率化に繋がります。
製造工程だけではなく、営業活動や開発活動でも目標に対する活動を1つのプロセスと見なすことで目標を効率よく達成できます。

 
[※関連コラム:《ISO9001》品質マネジメント7つの原則|リーダーシップとプロセスアプローチはこちら]

 

⑤改善

品質マネジメントシステムはPDCAサイクルを念頭に置いて活動を行うことが重要です。
PDCAサイクルを回すことで継続的な改善が行えます。

 

⑥客観的事実に基づく意思決定

意思決定には主観的な情報ではなく、客観的な情報で意思決定を行うことが重要です。
客観的な事実を収集するためには、収集方法のルール化や測定機器の校正などデータの信頼性についても配慮が必要です。

 

⑦関係性管理

組織が持続的に成功するためには、顧客・外注委託先・投資家・従業員などの利害関係者との関係性を良好に保つのも重要です。

 

ISO 9001:2015 品質マネジメントシステムの要求事項

ISOで定めている品質マネジメントシステム(ISO 9001:2015)には多くの要求事項があります。
ISO 9001の要求事項は1~10項で構成され、1項は適用範囲、2項は引用規格、3項は用語及び定義なので、実施しなければならないのは4~10項となります。

なお「JIS Q 9001:2015」とはISO 9001を邦訳したものなので、ISO 9001の日本語版と捉えておきましょう。
ISO 9001の4~10項の要求事項を簡単にご紹介します。

 

  • 4項 組織の状況
    品質マネジメントシステムを構築するためにどんな情報を入手しなければならないかを示しています。
  • 5項 リーダーシップ
    品質目標の達成に全員が積極的に参加している状況を作り出すため、トップ(経営層)が行うべき項目が示されています。
  • 6項 計画
    PDCAサイクルのP(計画)にあたる部分で、社内の品質マネジメントシステムの計画を策定しその中身には何を含めなければいけないのかを示しています。
  • 7項 支援
    PDCAサイクルのD(実施)にあたり、品質マネジメントシステムを運用するのに必要な人員や教育、設備や知識について示されています。
  • 8項 運用
    8項の運用もPDCAサイクルのD(実施)に該当します。実際の企業活動を行うにあたり、どのような項目を管理しなければならないのかを示しています。
  • 9項 パフォーマンス評価
    ここまでの品質マネジメントシステムの運用結果とその有効性の評価が求められており、PDCAのC(評価)にあたる要素です。
  • 10項 改善
    9項の評価結果から次のアクションに繋げるPDCAのA(処置)にあたる部分です。

ISO9001の品証を受けるためには上記の4~10項の要求事項を満たすような社内ルールを作り、実際に運用し、その結果を第三者機関に示さなければなりません。

 
それでは例題にチャレンジしてみましょう。

 

《例題》

標準化、品質マネジメントシステムに関する次の文章について、正しい場合は〇、正しくない場合には×を記せ。

(1) 日本産業規格(JIS)は産業標準化法に基づく国家資格で、生産コストの削減や取引の公正化に寄与する。

(2) 国際標準化の代表的な機関としては、IMFとIECがある。

(3) JISマークには3つの種類があり、下図は加工技術用のマークである。
JISマーク

(4) 標準化とは「標準を設定しこれを活用する組織的行為」である。

(5) 標準は策定さえすればみんな守るものなので、教育などは必要ない。

(6) 品質マネジメントシステムにおける「リーダーシップ」とは「組織の目的および方向を一致させ、人々が組織の目標達成のために十分参画できるような内部環境をつくる」ことである。

(7) 品質マネジメントシステムにおける「プロセスアプローチ」とは「プロセスを1つのシステムとして明確にし、理解し、運営管理することで組織の目標を効果的で効率よく達成する」ことである。

 
《例題》[解答と解説]

解答と解説はここをクリック

[解答]

(1) 〇

(2) ×

(3) ×

(4) 〇

(5) ×

(6) 〇

(7) 〇

 
[解説]

(1) 問題文の通り。

(2) ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)があります。IMFは国際通貨基金です。

(3) このマークは鉱工業品用のJISマークです。

(4) 問題文の通り。 JIS Z 8101:1981の品質管理用語から。

(5) 標準を策定したあとも教育や定期的な見直しが必要です。

(6) )問題文の通り。

(7) )問題文の通り。

 

まとめ

今回はQC検定試験範囲の最終章「品質マネジメントシステム」について解説しました。
JISマークなど日常生活でも目にすることがあると思います。
消費者目線でも品質管理の重要性を意識すると、視野が広がると思います。

次回はQC検定2級3級に一発合格した筆者がおススメする勉強法と参考書について解説します。

 
(アイアール技術者教育研究所 A・K)

 

【法人向け研修サービス】QC検定3級取得をプロ講師がサポート!
 

Pocket

関連するセミナー

製造業eラーニングTech e-L講座リスト

製造業向けeラーニングライブラリ

アイアール技術者教育研究所の講師紹介

製造業の新入社員教育サービス

技術者育成プログラム策定の無料相談受付中

スモールステップ・スパイラル型の技術者教育

技術の超キホン

機械設計マスターへの道

生産技術のツボ

早わかり電気回路・電子回路

早わかり電気回路・電子回路

品質保証塾

機械製図道場

スぺシャルコンテンツ
Special Contents

導入・活用事例

テキスト/教材の制作・販売