3分でわかる技術の超キホン MEMSとは?製造工程の概要、MEMSセンサーの用途などを解説

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MEMS

1.MEMSとは

MEMS」(Micro Electro Mechanical Systems)は、日本語で「微小電子機械システム」と訳され、電子回路と機械的に動作するアクチュエーターやセンサーが組み込まれた立体構造で構成されます。

半導体チップと同じ、成膜工程、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程などの微細加工技術を活用した製造プロセスを経て、立体的な微小構造を形成します。

 

MEMSプロセス(製膜⇒フォトリソ⇒エッチング⇒接合)
【図1 MEMSプロセス】

 

2.MEMSの製造工程

各工程の具体的な製造方法を成膜工程から追っていきます。

(1)成膜

成膜の種類には、絶縁層やエッチングのストップ層となる酸化膜や、配線となる銅やアルミなどの金属膜、圧電効果をもたらす圧電膜が主に挙げられます。

成膜方法は、成膜成分を含んだガスを高温やプラズマで化学反応を起こして成膜するCVD法や、真空状態で電圧を印加することで、アルゴンガス粒子を成膜したい材料に衝突させて基板上に付着させるスパッタ法があります。

 

(2)リソグラフィー(パターニング)とエッチング

成膜後はリソグラフィーによるパターニングと、エッチングを行います。

リソグラフィーとは、フォトレジストと呼ばれる感光樹脂を基盤に塗布し、光や電子ビームなどでパターンを転写する技術です。フォトレジスト工程で形成したレジストパターンがマスクとなり、レジストのない部分がエッチングされます。

MEMSデバイスに使用されるエッチングの一つに、深堀エッチングボッシュ法)があります。
ボッシュ法は、[等方性エッチング保護膜の堆積異方性エッチング]による保護膜の除去を繰り返すことで、アスペクト比の高い、深い穴を形成することができます。
基板表面にトレンチ(溝)を形成することで、素子分離したり、キャパシタ膜を作るために用いられる手法ですが、これを応用し、加速度センサー素子の櫛歯電極部分を形成1)したり、貫通孔を設けて配線を取り出したり、インクジェットのシリコンノズルを加工する2)目的にも使用されています。

 

ボッシュ法のエッチングプロセス
【図2 ボッシュ法のエッチングプロセス】

 

(3)基盤接合

最後に、基盤接合を行います。基盤接合には直接接合と陽極接合があります。

直接接合」は、熱処理による分子間力が働き、ウエハ同士が張り合わされる接合です。
陽極接合」は、シリコン側を陽極とし、電圧をかけることで静電引力により接合する方法です。

 

3.MEMSセンサーと圧電材料

このようにMEMSは半導体の微細加工技術を利用していますが、LSIなどの一般的な半導体とMEMSとの違いは、何でしょうか?

LSIはシリコンの上にトランジスタやコンデンサといった回路素子を作りこみ、その電子回路を集積したもので、電気信号のみを処理します。
一方MEMSは、電子回路に加えて、上下左右と駆動する機械的特性も信号として処理します。

加速度センサーを例に、その中身をみていきましょう。
加速度センサーには、主にピエゾ抵抗型と静電容量型があります。
ピエゾ抵抗型は、歪みにより変形したピエゾ抵抗の変化量を加速度に変換します。
静電容量型は、固定部と可動部の電極間の静電容量変化を検知し、加速度に変換します。

ピエゾ抵抗型や静電容量型の可動部には、電圧を印加すると、周波数に応じて振動する圧電効果を利用した圧電材料が用いられています。MEMSの特徴となる機械的に動作する部分を担っているのがこの圧電材料です。

圧電材料には、水晶などの圧電単結晶や、多結晶体を高温で焼成することで得られる圧電セラミックス、スパッタ法などで作製する酸化亜鉛(ZnO)を代表とする圧電薄膜などがあげられます。

 

[圧電材料の種類と用途]

材料 用途
圧電単結晶
・水晶
・強誘電体
 
振動子
表面弾性波SAW
圧電セラミックス
・PZT
・BaTiO3
・PbTiO3
 
ジャイロセンサー
加速度センサー
アクチュエータ
圧電薄膜
・ZnO
・PZT
 
インクジェット
バルク弾性波BAW

 

4.MEMSの応用(今後の展開)

様々な用途に使用されているMEMSセンサーですが、最も身近で使用されているものの一つにスマートフォンが挙げられます。スマートフォンに搭載されているMEMSセンサーの数は20個以上あり、上述の圧力センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーはもちろんのこと、特定周波数帯域の信号を取り出すBAWフィルターMEMSマイクなどが挙げられます。スマートフォンによってMEMSセンサーは、小型・軽量化と低消費電力が求められるようになりました。

それに伴い、スマートフォンよりも軽さや付け心地が求められているスマートウォッチやスマートグラスといったウェアラブルデバイスにも応用されるようになりました。MEMS加速度センサーは、0.12平方mmまで小型化3)されています。

また、MEMSの生産は既存の半導体製造装置を流用しているため、少量多品種製造であっても低コストで提供できる点も、MEMSセンサーの普及や技術力の成長に繋がっています。

バイオ研究の分野では、ガラスやPDMS材料を使用し、MEMSの微細加工技術を応用したマイクロ流路デバイスが開発され、これまでの検査よりも、高精度でかつ迅速に検査結果を出すことが可能となりました。
AI学習が組み込まれたMEMSセンサーも登場し4)、今後、ますます分野を超えて、生活の中で活躍していきそうですね。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 J・K)

 


《引用文献、参考文献》


 

 

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