- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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最近の機械装置は、殆どがマイコンと電子回路により制御されていると思います。
典型的な例として、自動車の電動パワーステアリング装置の構成を図1に示します。
【図1.電動パワーステアリング装置の構成例(特許第5793106号公報より】
図1の電動パワーステアリング装置は、運転者のハンドル操作情報を舵角センサ、トルクセンサで検出し、その情報をマイコン(図1ではECUと表記)で処理し、モータの回転量情報をモータ回転センサで読み取りながら車輪の舵角をモータを駆動し制御しています。図中に電子回路は明示的に示されていませんが、センサの信号は電気信号ですし、モータを駆動するのは電子回路です。
このように多くの場合、機械装置は機械的な部分、電子回路、マイコンとそれを制御するファームウェアから構成されており、その開発・設計は、機械技術者、電子回路技術者、ファームウェア技術者の共同作業となります。従って、それぞれの技術者が他分野の設計について、ある程度理解することが求められることになりますが、専門外の方にとって、電子回路部分を理解するのはかなりハードルが高いと感じる場合が少なくないと思います。
この連載コラムでは、機械装置の開発設計に携わっていて回路の設計がわかるようになりたいけれど、どこから勉強を始めればよいかわからず悩んでいる機械系技術者、ファームウェア技術者の方々向けに、電子回路設計を理解するための導入的な解説をしていきたいと思います。
目標とするイメージは、「担当する機械装置の回路設計資料を見て、どのようにして所望の動作が実現されているか、担当部分とのインタフェースを理解し、回路設計者と基本設計について議論ができる。」です。
また、回路設計の詳細についてさらに学習を進め、「コスト・性能にインパクトのある設計事項について、回路設計者と適切なコミュニケーションを行い、設計の全体最適化の議論を行うことができる。」というレベルを目指すための「導入」として読んで頂くことを想定しています。
あくまでも「導入」ですので、理論的な説明や数式による説明を極力避け、実際的な機能単位回路ブロック例を取り上げ説明しながら、回路設計の考え方を定性的・機能的な表現で説明していきます。理論的な理解もいずれは必要になりますが、それに対しては、入門者向けの教科書やセミナーの活用をおススメします。
なお、一般的にはトランジスタやIC/LSIなど能動的な素子を構成要素に含む電気回路を「電子回路」と呼び、能動的な素子を含まないものを「電気回路」と呼びますが、このコラムでは特に区別せず、これ以降単に「回路」と呼ぶことにします。
機械装置の回路でも、基本設計では「機能ブロック図」で全体構成が示され、そのブロック図中の機能ユニット毎に、機能・性能仕様、インタフェース仕様が規定されるものと思います。そして、回路の詳細設計がわからなくとも、その機能仕様は理解できるはずですし、性能仕様やインタフェース仕様を理解することは、詳細設計を理解するよりはるかに容易です。
例えば、図1に紹介した、自動車の電動パワーステアリング装置の回路部は図2のような機能ブロック図で表されます。
【図2.電動パワーステアリング装置の回路機能ブロック図】
回路の機能ブロック図及び関連する基本設計資料を関係者間で共有することで、装置仕様との関係確認や、機械設計と回路設計、ファームウェア設計と回路設計、の間におけるインタフェースの仕様確認が容易になりますし、機能ユニット単位で回路図を参照することで、回路の詳細設計の理解が容易になります。ぜひ機能ブロック図を見て回路の基本設計を把握するところから始めるようにしましょう。
また、一般的な機械装置の回路部の構成は、図2に紹介するものと類似したものになります。
すなわち、様々な環境情報や操作情報を入力するセンサ群があり、それらの入力情報をもとにファームウェアで規定される処理をマイコンが実行し、モータ、アクチュエータ、ディスプレイ、発光素子等を駆動して何らかの動作や表示を行う、というものです。
この後の連載では、機械装置の回路における主要な構成要素(機能ユニット)について、回路的な扱いを順次解説していきます。次回はセンサブロックについて取り上げます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・M)
【連載:機械装置設計者のための電子回路入門】
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