共感によるコミュニケーション「ラポール」とは?ラポール形成の基本と実践《社会人のコミュ力UP講座③》
目次
1.ラポールとは?
心が通い合った状態を、心理学用語で「ラポール」と言います。
お互いの心に橋がかかったように、治療者と患者が治療に向かって信頼しあっている様子を表しており、相手とラポールを形成できれば、トラブルが起こりにくいといわれます。
このラポールの状態は、次の3つの要素がポイントになってできるとされています。
とはいえ、ラポールを築くためにはどうしたらよいでしょう?
王道は、相手の話をよく聞くことです。「話し上手は聞き上手」という言葉があります。人は相手に自分の話を聴いてもらいたいもの。自分が話すことばかり考えている人とは、話をしたくなくなるものです。
逆に、自分の話を聞いてくれた人、恩義を感じた人については、話を聞いてあげたり、なにかやってあげてもいいかなと思うようになります。これを「返報性の原理」といいます。見返りだけを求めてコミュニケーションをするわけではありませんが、情けは人のためならず。相手の話に耳を傾けましょう。
2.ラポール形成の基本
ラポールを作る話の聞き方には、根底となる考え方が3つあります。
朝礼など、定期的に行うコミュニケーションの場で早速取り組んでみましょう。
(1)ペースを合わせる
姿勢、表情、言葉の感じ、返すタイミング、早口さなどを相手に合わせましょう。
(2)共感性のない言葉を使わない
否定的、共感のない接続詞を使う、解釈と事実を混同するなどはいずれも不可です。
例えば、「いや」「でも」「私は(あなたと違って)」、さらには、「それは違うよ」と主張を断定してしまうのはいずれも良くありません。
(3)相手からとことん聞く
最後まで聞かずに自分の話にする、答えを当てに行くのも不可です。
「ああそうなんですね。私の場合~」「ああ、それってあれのことですか?」などは悪い例です。
3.ラポール対話の実践手順
ラポールの状態に至るには、できるだけ人間関係の初期段階に以下のような実践を行うのが効果的です。
ラポール形成のテクニックはすぐに取り入れやすいものが多いです。
ぜひ名刺交換や定例ミーティングで実践してみましょう。
(1)笑顔でアイコンタクトをして話を聴く(関心)
笑顔とアイコンタクトは相手への関心の高さを示します。常には、やりにくければ、話す・あいづちのタイミングで。相手が真剣な話をする時や、相手へ指摘をする時に笑顔だとマイナスになりうることもあるので注意しましょう。
(2)相手の言葉に、ゆっくり大きくうなずく(承認)
うなずきは承認のサインです。相手は、自分の存在が認められていると安心します。肯定する言葉と一緒に、大きくうなずくとよいでしょう。ゆっくり、10センチが目安です。
(3)「ありがとう」を何度も言葉にする(敬意)
ありがとうは敬意のしるしです。1分に3回くらいは言えるはずです。口癖にしてしまいましょう。
(4)相手のメッセージを「おうむ返し」する(理解)
おうむ返しは理解の表現。下手に評価や判定をせず、相手の感覚と同じようにメッセージを受け取ったことを伝えることができます。
(5)同意の言葉「私もです」を重ねて伝える(共感)
「私もです」は共感、相手との類似性を表わします。嘘はつかないで、自然が一番です。
「私も同じ地元です。」「私も●●のファンです。」
(6)「好きなこと、楽しかったこと」を聴く(価値)
好きなこと、興味のあることについて聴くことは、相手の内面を知ることにつながり、近接性を高めます。返答があればそれを話題の中心に。楽しかったこと、大変だったことなど、さらに内面を聴く。NGは、早々に自分の話にすり替える事!
4.ラポール対話の効果
ラポール形成のための共感コミュニケーションを実践していくと、仕事を取り巻く環境の中で、次のような変化が起こります。
このような効果があることを理解して、コミュニケーションへの取り組みのモチベーションにしましょう。
次回は、これまでに説明したことを実際のケースに応用してみましょう。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)
- 第1回: なぜ重要?仕事におけるコミュニケーション能力
- 第2回: 職場で良い人間関係を築けるコミュニケーションのポイント
- 第3回: 共感によるコミュニケーション「ラポール」とは?ラポール形成の基本と実践
- 第4回: 職場でのコミュニケーションスキル応用編|よくある場面での対応のコツ
- 第5回: メールコミュニケーションの特徴とトラブルを防ぐポイント
- 第6回: 会議におけるファシリテーションのコツ