ジョハリの窓と人材育成|競争力の高い技術者を目指すための視点

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コミュニケーション

ジョハリの窓」は自己認識とコミュニケーションの話題で取りあげられることが多いですが、今回のコラムでは技術者のコンピテンス(競争力、強み)向上との関係から取り上げてみたいと思います。

 

1.ジョハリの四つの窓とは?

ジョハリの四つの窓」と呼ばれる考えでは、自己認識の領域を図1(a)のように四つの窓に分類します。

  • 開放の窓: 自分自身も認識しており、それを他者も認識している領域
  • 秘密の窓: 自分自身は認識しているが、それを他者にはオープンにしておらず他者は認識していない領域
  • 盲点の窓: 自分自身は認識できていないが、他者はそれを認識している領域
  • 未知の窓: 自分自身も他者も認識できていない領域

 

ジョハリの四つの窓
【図1 ジョハリの四つの窓】

 

コミュニケーションに関しては、他者にオープンする領域(開放の窓)を図1(b)のように拡大していくことが重要としています。
例えば、「弱み」についての認識であれば、秘密の窓の中にある自分の「弱み」をオープンにすることで相手からの理解や親近感が増したり、逆に盲点の窓にある「弱み」を相手から言ってもらえるような関係を築き上げることで、コミュニケーションの良い土台を作ることができるというものです。

 

2.技術者のコンピテンス分野

一方、図2は、技術者としてコンピテンス(competence、競争力)の分野をまとめたものです。

 

技術者のコンピテンス分野(業務を遂行するための知識・スキル、専門的な知識・スキル、広範な見識、技術者としての信念と考え方
【図2 技術者のコンピテンス分野】

 

技術者が、自信とやりがいを持ち、質の高い仕事をするための基礎として、各分野におけるコンピテンスを高める努力が必要となります。

 

3.競争力の改善・向上のためのプロセス

コンピテンス(競争力)の向上は個人としてももちろん重要ですが、チーム活動の場合には、チームで協力し合い、メンバー個々のコンピテンスが向上するようにしなければなりません。組織であれば、自己の努力によるものと、組織における教育プログラムの両方が求められます。

コンピテンスの改善のために、まずしなければならない重要なことは現状把握です。
図3に示すように、現状把握に基づき、何を強化していくかのターゲットを決め、それをどのような方法で強化をしていくかの計画を立て、実行していきます。

 

コンピデンス改善のプロセス
【図3 コンピテンス(競争力)改善のプロセス】

 

実行の過程では、方法の効果を見ながら軌道修正も必要で、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act、計画→活動→確認→対処)を回すプロセスとなります。

 

4.ジョハリの四つの窓の視点と「強み」の強化

コンピテンスの強化・向上のためには、弱みの改善だけではなく、強みのさらなる強化も必要です。
チーム活動では特に、弱みとなっている領域は、最低限必要レベルまで強化することは必要ですが、強みの部分をさらに強化することが、チームとしてのコンピテンスを大幅に向上させることに繋がります。

ジョハリの四つの窓の説明で、コミュニケーション改善のため、弱みをオープンにしたり、弱みを教えてもらうことについて述べましたが、コンピテンスの向上のためには、強みについても同様にオープンにしたり教えてもらうことが重要となります。(図4)

 

四つの領域とコンピテンスの改善
【図4 ジョハリの四つの領域と競争力の向上】

 

5.「未知の窓」の領域と「伸びしろ」

コンピテンスで言えば、「未知の窓」の領域は、本人も周りも気づいていない潜在能力(ポテンシャル)の領域です。この領域に関するコンピテンス向上のプロセスで言えば、最初は、本人も周りも認識できていませんから、現状把握では弱みとも強みとも認識されていません。この領域は、まず新しいことをやってみるというチャレンジから始まります。

ポテンシャルという言葉に関係するものとして、「伸びしろ」という言葉があります。現状値が普通であっても、伸びしろが目覚ましいという場合があります。伸びしろに本人が気づいて意欲を持つことにより、さらに向上が進むという良いサイクルが生まれる可能性もあります。
このような場合には、強みの可能性を「秘密の窓」の領域に置いておくことなく、「開放の窓」の領域のものとし、周りの理解とサポートのもとでコンピテンスを伸ばしていくことが重要です。

個々人の未知の領域にあったコンピテンスを発掘して伸ばすことは、チームとしても新しい可能性を掴むことに繋がります

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 

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