《製図研修のプロが解説》職種別に必要な機械図面スキルと教育内容とは?

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職種別・機械製図教育のあり方とは

メーカー・機械商社等の人材育成・研修ご担当者様向け
「設計職だけじゃない!職種別・機械製図教育方法」

 
機械図面を扱う仕事、と聞くと、皆さんはどのような経歴や職種の方を想像しますか?
製造業では、かなりたくさんの職種の方が機械図面を読む必要があり、もちろん図面を描く必要のある方もいらっしゃいます。

このコラムでは、職種別に必要とされる機械図面を読み書きする能力の種類とレベル、およびその育成方法について、長年にわたり超大手~中小企業まで幅広いメーカーや技術系商社などで機械製図研修で講師を担当してきた、今井誠講師(技術士)が解説します。

ぜひ、貴社での製図スキル育成の参考となさってください。

1.設計職・製造技術職・生産技術職に求められる製図スキル

(1)入社~3年目程度の若手の方・中途入社で図面を描いたことのある方

機械図面を作成する代表的な職種である設計職にお勤めの方、またはその職種に採用される方の場合、多くが工業高校、高等専門学校、大学の工学部等で製図の基礎教育を受けているのではないでしょうか。
しかし、学校で学ぶ内容は、製図についてのルールをまとめたJIS規格に関する基本的な知識や、CADの操作方法が中心です。実は、これらの学校を出ても製造業の即戦力として必要なレベルの図面を描けるわけではないというケースは多いのです。

設計職として製図を行うには、JISの基本的な知識に加えて、寸法の入れ方、公差の設定の仕方、図面への設計意図の反映の基礎知識等、学校ではなかなか教えてくれない知識や経験が必要になります。

そのため、例えば私が担当している製図セミナーでは、まずJISの基本的な知識と最新版の知識のブラッシュアップを図るとともに、寸法の入れ方や順序についてもわかりやすく説明するようにしています(Stage4 初心者向け やさしい図面の書き方《最新JIS製図と図解力完成》)。

それらが頭にしっかり入ったうえで、次の段階にあたるセミナー(Stage5 やさしい図面の書き方 寸法公差編)では、設計者ならだれでも悩む寸法の公差の数値設定、表面粗さ等について説明することにしています。

これら2つのセミナーでは、演習をしっかり行うことで知識の定着を図っています。

 

機械製図の研修プログラム
【図1 ドラトレのステージ別レベルイメージ(下の層ほど基礎的な知識を扱います)】

 

製図スキル
【図2 製図に必要なスキルのイメージ】

 

(2)設計職5年目前後以降の中堅レベル以上の設計職の方

前述のStage4, Stage5の2つのセミナーでは、若手設計者に必要な知識やスキルの習得を目標としましたが、中堅レベルの設計者にはさらなるスキルアップが必要です。

しかし、社内のOJTや通信教育、市販の書籍などで入門レベルの知識は個人の努力でどうにか習得できたとしても、その先、どの方向に向かって、どのように学んでいけばよいかという指針が見えずに困っている方が多いというのも、このレベルの方々に特徴的な状況です。

中堅以上の設計者の方向け(Stage6 やさしい図面の書き方 図面情報編)では、設計や加工、計測などの「現場で必要な知識」を整理するとともに、その現場知識を図面に盛り込めるようにすることで、ベテラン設計者が描く図面に近づけることを目標としています。

 

2.購買・調達、検査、品質保証、営業の方などの図面スキル

まずは図面を正しく読めることから

購買・調達部門の方や、検査・計測部門の方、営業や技術営業職、品質関連の部門など、日常的に図面は読む業務が中心の方に製図の知識はいらないのでしょうか?
確かにこれらの職種の皆さんは、自らCADを使って図面を描く機会はほぼないといえるでしょう。しかしながら、描かれた図面の内容を確認してしっかり理解できなければ、これらの業務を行うことはできないことも多いです。
したがって、業務に就いてできるだけ早期のうちに、JIS製図の基本的な知識を得て、間違いのない図面の読み方・理解のしかたのスキルを自分のものにしておく必要があります。

そのためには、図面の用語や投影図の読み取り方、記号の意味(Stage1 はじめての図面の読み方)、図面に書かれている加工方法や公差記号やデータムなどの意味、図面の理解に必要な機械要素や材料について初歩の知識(Stage2 ステップアップ 図面の読み方)について知っていただくことで、自分でさらに学びを広げたり、現場の技術系の方々とコミュニケーションをとる中で必要な知識を得て頂くことが望ましいと考えます。

特にStage1やStage2は、上述の方々だけでなく、設計職に初めて就かれる方はもちろん、理系以外の分野から製造業に就職された方でも分かりやすい内容を心がけています。理工系のバックグラウンドの無い営業職から学び、設計・組立・納品まで一手に引き受けるまでになった講師が、初めて学ぶ方々の視点から丁寧に指導することがStage1・Stage2の特徴であり、多くの企業研修で活用されています。
これらの講座では、コスト感覚や材料系知識の基本などについても説明し、理系でも工学系以外の分野からメーカーに勤められる方、直接ものの製造にはかかわらなくとも図面にかかわる方々には必ず知っておいて頂きたい内容といえます。

 

適切な「ポンチ絵」を描くスキルも意外に大事

先ほども述べたように、これらの職種の方々は自ら図面を描くことはあまりありませんが、一方で現場でのトラブル解決や業務の円滑な遂行のために簡単なスケッチ図を描いて、設計部門にトラブルの内容の伝達や情報のフィードバックを行っています。
この簡単なスケッチ図は「ポンチ絵」、または「ポンチ図」とも言い、練習をすればある程度描けるようになります。

1日完成「ポンチ絵」習得塾では、ポンチ図を描くのに必要な最低限の知識と豊富な演習を通してポンチ図作成能力を養うこともできますので、図面が読める方はこちらの手描きポンチ絵をマスターして、業務でより指導的な立場を目指されてはいかがでしょうか。

 

3.機械商社の方に求められる図面スキル

製造業の営業職の方とも共通する点が多いかもしれませんが、機械商社の方は、文系出身の方や、理系であっても工業系以外の専攻の方が多い傾向にあるかと思います。
また、昨今の人手不足の背景で、他業種から中途採用で商社に来られる方も多いと思いますが、たとえ大学等で機械製図の教育を受けていたとしても、図面を普段描いていない職種から移ってこられた方や、久しぶりに機械図面に触れることになった方は、学んだ内容を忘れてしまったり、JISの最近の改定内容を知らずに知識が陳腐化してしまっている場合があります。
もちろん、今まで全く製造業に関わっていなかった方もいらっしゃるでしょう。とはいえ、機械商社の方に必要とされるのは、製造業に携わる方々のニーズを感知する能力ですから、これから関わっていくことになる機械製図の知識を知ることはもちろん、それを通して製造業の事情を熟知することは大きな武器になります。

また、製造業からの転職者であったとしても、中小企業出身の多くの方、最近では大手企業出身の方でさえも、就職氷河期世代やリーマンショック世代の中堅層(35歳~50歳前後)の人材不足や離職等により、社内での技術系スキル継承が困難になっており、製造現場のカンやコツを学ぶ機会なく転職を余儀なくされている方もいらっしゃいます。
このような背景から、製造業現場の知識やセンスを身に着けるには、個人の努力だけでは突破できない壁があるのです。これから入社される方々のこれまでの経験や学習意欲はもちろん大事ですが、これだけに頼るのではなく、必要なポイントではしっかり外部の図面教育の専門家に教育をゆだねるのが長期的に見ても最も効率的です。

少なくとも、「前職が製造業でバリバリ図面を毎日読んでいました、描いていました」、というご経験の方でない限りは、雇用者側の視点として即戦力として活躍していただくためにも、また被雇用者側の仕事へのモチベーションを持ち続けてもらい職場への定着を促すためにも、製造業のものの考え方や専門用語に最低限ついていけるだけの知識と能力を早期に習得しなければなりません。

そこでおすすめの教育方法ですが、まずは入社時の研修では、クライアントとなる製造業の方が持っている図面を理解し、ニーズをくみ取るための基礎知識として、JISルールに書かれている最低限の知識や、図面に注記として書かれる記号の意味、そして紙上に描かれている図面を見て立体形状をイメージできるようになる能力(Step1、Step2 図面の読み方)と、クライアントに部品を手配するうえで必ず必要になる部品の加工方法に関するコスト感覚(設計目線で見る部品加工基礎講座)を身につけることをおすすめします。

また、より丁寧に専門用語の理解を促すためには、機械材料の知識(機械材料の選定の基礎)と機械要素(機械要素の基礎)について学ぶことで物性の理解や機構の役割を知り、ここで得た知識をもとに自分で学習を拡げていけるきっかけを与えてあげることも大切です。

 

図面は読めるが、現場とのコミュニケーション力をさらにアップしたい場合

機械商社で新人~若手として経験と知識の吸収を重ねる時期を経て、職場の主軸として動くことになる中堅の立場にいる方々は、CADで図面を描くことはないながらも、いよいよ効率のよいコミュニケーション方法を使って、クライアントや他部署、部品そのものや加工の外注先の人と技術情報を迅速に正確にやり取りする必要が生じます。
この時に必要になるのが、上述の簡単なスケッチ(ポンチ図、ポンチ絵)をもとにやり取りする能力です。

このポンチ図を使って能動的にコミュニケーションするレベルの方には、ポンチ図作成やその情報伝達に必要な図面の読み書きの知識と、実際の作図が本当にできるようになるまでの繰り返し練習が必要です。
私の担当する講座(ポンチ図実践塾)では、ポンチ図に必要な作図法に関する知識伝達の座学の後、時間終了までひたすらポンチ図作成の演習を繰り返し行い、演習ごとに講師がひとりひとりを添削指導するという、実践重視の塾形式の教育方法をとっています。講義終了後にはポンチ図の作図能力がしっかり定着しているはずです。

 

アイアールの機械製図セミナー「ドラトレ」シリーズでは、体系的な教育プログラムを通じて、各自のレベルに合わせたスキルアップが可能です。
このコラムでもしピンときたセミナー・研修がありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい!

 

今井誠講師 《この記事の執筆者》

 技術士(機械部門) 今井 誠

 日本アイアール株式会社 技術コンサルティング部
 やなか技術士事務所 代表

 ※機械製図研修「ドラトレ」シリーズについてはこちら

 

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