3分でわかる技術の超キホン 可視光応答型光触媒と人工光合成

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可視光応答型光触媒の解説(人工光合成)

1.可視光応答型光触媒とは?

光触媒に関する前回のコラム、”「光触媒」とは?酸化チタンと「超親水性」の基礎知識” でお話しましたが、酸化チタンに光を照射することによって、水が酸素と水素に分解されます(式1)。

 H2O → H2 + O2  (式1)

このように、太陽エネルギーを変換して、水から水素を生成する光触媒の開発にも注目されます。
酸化チタン光触媒は主に紫外光を利用しますが、実は太陽光に含まれる紫外光の割合は約3%と言われて、残り約50%は可視光です。そのため、可視光にも応答する光触媒の開発は盛んに行っています。
 

可視光応答型光触媒の種類

① 酸化チタンの半導体光触媒

現在、可視光応答型酸化チタンの半導体光触媒の開発には、色素増感型酸化チタン金属イオンドープ酸化チタン還元型酸化チタン窒素ドープ酸化チタンなどさまざまなタイプがあります。

ドープ」とは、半導体の性質を調節するために不純物を添加することを言い、ドープにより、電子や正孔の濃度やバンドギャップの大きさなどを調節して、目的とする性質をもった半導体を得ることができます。
 

② 光増感剤(化学反応の促進)

可視光を有効利用するためには、可視光を吸収できる増感剤の添加が必要となります。
最近は有機色素をはじめとする有機物触媒が注目されていますが、古くからルテニウムやイリジウムの有機金属錯体を用いた研究があります。
このほか安価な銅錯体をはじめ、様々な金属錯体が触媒として作用します。
ここでは、ルテニウム触媒を例に、反応機構(原理)をご説明します。
 

化学反応の促進
[図1. Ru錯体の構造及び光触媒反応機構のイメージ図]

 

可視光照射によるルテニウム(Ru)中心金属のd軌道の一つの電子は、三重項励起状態へ遷移して、2つの半占軌道となります(3Ru)。
これらの2つの半占軌道は、近傍の電子受容体(A)或いは供与体(D)によるそれぞれ一電子還元、酸化作用を示し、一電子を移動してラジカル中間体(A+・と D−・)を発生します。
同時に生成する酸化されたRu(Ⅲ)と還元されたRu(I)種は、次の段階で、共存する別の基質に対する逆の一電子酸化か還元過程を経て新たなラジカル種を発生させ、基底状態に戻ります。そのため、右回りか左回りいずれの経路を通って、一巡する間に連続的な一電子酸化-還元/還元-酸化を達成できます。

この一電子移動系をこれらの機能を必要とする有機反応と組み合わせると、可視光を照射するだけで適切な前駆体から有機ラジカルを発生させて、有機物の官能基化を達成できます。
例えば、芳香環官能基化及び含フッ素医農薬の中間体としてのフルオロアルキル化方法などが挙げられます。

 

2.二酸化炭素の還元/資源化を目指す「人工光合成」系

 CO2 + H2O → CO + HCOOH
 CO2 + H2O → CO + H2 + O2 式2

近年、地球温暖化の主な要因となっているCO2を資源化するための光触媒開発が世界中で活発化しています。
例えば式2、3に示したような「人工光合成系」はその一つです。

この「人工光合成」と呼ばれる技術が実用化できれば、大気中CO2濃度の上昇を抑制することだけではなく、将来的に枯渇が心配されている化石資源の代替として、CO2を原料にして、太陽光だけをエネルギー源として合成できるようになります。

実用性にはまだまだ距離がありますが、業界の進歩も日進月歩です。
2021年4月21日、自動車関連技術の開発を手掛けるトヨタグループの研究所は、「人工光合成」で世界最高の変換率を実現したと発表しました。
トヨタは2011年、人工光合成の原理実証に世界で初めて成功しましたが、当時の変換効率(太陽光のエネルギーを有機物の生産に使える割合)は0.04%でした。しかし、今回発表された新たな方式では、太陽光パネルと電極などを組み合わせでセルのサイズを36cmに拡張し、変換効率も7.2%となって植物を上回るほどの水準を実現しました。
工場から排出されるCO2を回収することで、脱炭素化の実現や燃料電池の燃料生産への活用が期待されます。 

これまで開発されてきた高効率なCO2還元光触媒反応は、希少高価な貴金属(ルテニウム、イリジウム等)を光触媒として用いなければ駆動しなかったことが実用化には最大な課題です。

その点について、東京工業大学の研究グループは、銅錯体とマンガン錯体から成る光触媒に可視光を照射すると、二酸化炭素(CO2)が一酸化炭素(CO)やギ酸(HCOOH)に効率良く還元されることを発見しています(図2)。

人工光合成イメージ
[図2.銅錯体とマンガン錯体から成る人工光合成イメージ図]

以上、今回は注目される光触媒技術について簡単にご紹介しました。
地球温暖化問題に対する取り組みとして、特に人工光合成に関する技術開発にはこれからも期待が高まっていくと思われます。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

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