- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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電子回路を構成する部品のなかに、「スイッチ」があります。
回路をオン/オフするための部品です。
スイッチは大きく分けて、機械的接点を持つものと、そうでないものに分けることができます。
そうでないものとは、例えばトランジスタなどの半導体で構成されたスイッチなどです。
今回のコラムでは、機械的接点を持つスイッチについて説明します。
目次
スイッチとは、外部からの力を受け、機械的に電気信号の切り替えを行う部品をいいます。
電子回路のオンやオフの操作をしたり、回路や機能の切り替えに使用されています。
【図1 スイッチのオン/オフ】
図1は、(a)スイッチのオフ状態と(b)スイッチのオン状態を示した図です。
スイッチのオフ状態から、スイッチの接点を閉じてオン状態にすると、電源と電球がつながって電球が点灯する状態を示しています。
【図2 切り替えスイッチ】
図2は、切り替えスイッチの様子を示した図です。
スイッチの切り替えによって、A電球を点灯させるか、B電球を点灯させるかを選択しています。
図2では、B電球を選択して点灯させている状態を示しています。
また、スイッチは大きく分けて、人が操作する「操作用スイッチ」と、何かの動きを検出する「検出用スイッチ」と、機器の設定を指定する「設定用スイッチ」があります。
スイッチの種類は、使用される状況や目的に応じて数多くのものに分かれますが、ここでは、機械的スイッチの中で、電子回路の回路図によく記載されているものについて説明します。
【図3 機械的スイッチの主な種類】
図3に、回路図によく用いられるスイッチの回路記号を示します。
青色の矢印は動作の方向を示しています。
このように、回路記号では、凡その動作が分かるように表現されています。
ただし、実際の形状は、使用状況に合わせて様々な形状となっています。
スイッチには、様々な用語がありますので、ここではそれについて説明します。
【図4 スイッチの「極」と「投」】
図4は、スイッチの極と投の状態を説明するための図です。
図4(a)は、1度の操作で1つの回路だけ入り切りしているので、「単極単投型(1極単投型)」と呼びます。
また(b)は、1度の操作で2つの回路を切り替えている(入り切りしている)ので「単極双投型(1極双投型)」と呼びます。
同様に、(c)は1度の操作で同時に2つの回路を開閉するので「2極単投型」、(d)は「2極双投型」と呼びます。
なお、スイッチを操作することで、同時に複数の回路を開閉するときは多極のスイッチを使います。
また、主に押ボタンスイッチで使われる用語に、「オルタネート」と「モーメンタリ」という用語があります。
スイッチの基本性能として重要なものとして、定格電流や定格電圧、また耐久性があります。
さらに、定格電流の関連でいうと接触抵抗があげられます。
「接触抵抗」は、スイッチの接点が接触した時の抵抗値です。
接触抵抗は小さな値ですが、発熱量は流れる電流の二乗に比例するので、電流の増加が大きな発熱を招きます。定格電流を超えて使用すると、スイッチが加熱したり、最悪の場合は、接点が溶融してしまう事もあります。
「定格電圧」は、主に電極間の耐電圧で決まります。具体的には接点間の距離と形状です。
電流はスイッチオン時が問題ですが、電圧定格は接点が開いているオフ時が対象です。
また、複数の回路が入っているスイッチでは、回路間の電圧(耐電圧)も確保されなければなりません。
したがって、定格電流や定格電圧などスイッチの仕様に注意して選ぶことが重要です。
「耐久性」(寿命)は、スイッチなど、接点を持つ部品を使い続けていくうちに、動作特性や性能が規定している値からはずれてしまうまでの開閉できる回数をいいます。
耐久性には、「電気的寿命」と「機械的寿命」があります。
「電気的寿命」とは、接点に定格負荷を接続して規定の条件で開閉したときの寿命をいいます。
「機械的寿命」とは、接点に通電せず規定の操作頻度で動作させたときの寿命をいいます。
どちらも仕様書に定められているので、スイッチを選択する際に注意すべき項目です。
実際には、採用される製品の使用状況に合わせて、評価試験等を実施するのがよいでしょう。
スイッチを使用する際には、その先に接続されている負荷にも注意することが必要となります。
スイッチの定格は、純抵抗負荷の回路で使う場合を想定して規定されています。この場合、電気的な過渡現象は発生しません。スイッチオフで電流ゼロ、オンした瞬間から一定の電流が流れます。
これに対して、実際の使用状態では負荷の種類によって様々な過渡現象が生じます。
ランプ(白熱電球)を点灯させる場合、オンした瞬間の温まっていないフィラメントの抵抗値はかなり小さく、定常電流の10~15倍の過渡電流が流れるため、接点が溶け、溶着してしまうことがあります。
対策として、電流容量に余裕を持たせることが必要です。
モーターの起動時(回転が始まるまでの短い時間)には、定常電流の3~8倍の突入電流が流れます。
そのため、モーターの種類及び起動電流に注意する必要があります。
ソレノイドなど巻線を持った誘導性のインダクタンス部品では、オフ時に大きな逆起電力が発生してスイッチの接点間に加わります。
したがって、オフ(遮断)時発生する逆起電力を吸収する回路を設けます。
図5は、逆起電力を吸収する保護回路の一例です。
抵抗とコンデンサによる保護回路を図5のように設けます。
【図5 逆起電力を吸収する保護回路】
コンデンサ負荷の場合、スイッチを入れた瞬間にコンデンサが電流を吸い込むため、非常に大きな突入電流が流れます。
コンデンサ負荷の場合は、実負荷で突入電流の大きさを確認し、それが定格電流を超えない範囲で使用することが必要です。
直流の場合は、交流と違い、電圧・電流が零になる点がないため、小負荷でも大きなアークが発生します。
定格電流や定格電圧に余裕を持たせることが必要です。
以上のように、スイッチには様々な特性があります。
スイッチを選定する際は、仕様書等を十分確認したうえで利用状況に最適なものを選ぶことが重要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)