3分でわかる技術の超キホン シリカとは?主な用途、特徴と効果、分析方法、安全性など要点解説

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3分で分かる技術の超キホン シリカとは?

シリカ」とは、二酸化ケイ素 (SiO2)として表されるシリコン酸化物の総称であり、身近なところで様々な用途に利用されています。ここでは、シリカの代表的な使用例などについて紹介します。

1.乾燥剤としてのシリカゲル

シリカで一番身近な利用例は、乾燥剤、つまり水分を吸収するための利用です。
二酸化ケイ素は、n水和物を形成することから効率よく水蒸気を吸着することができるため、乾燥剤として利用されています。

食品では、水分により新鮮な食感が失われたり、カビが派生して劣化したりするのを防止する目的があります。シリカは食品添加物として認められている物質でもあるので、毒性や安全性にも問題はなく、包装用乾燥剤として唯一JIS(日本産業規格)にも認定されており、食品の保存容器に同梱されていることが多いです。

その他にも、機械類では水分により鉄が錆びるのを防ぐ目的や、住宅などの木材では、シロアリ被害やカビ発生による劣化防止の目的に使用されます。

 

(1)シリカの吸湿原理

吸湿原理は、物理吸着タイプです。
すなわち、シリカの表面上に空いている無数の穴が水分子との分子間力で穴に入り込むことにより物理的に水分子をキャッチして吸湿します。

シリカにはA型とB型があります。
A型は穴の径が小さく、低湿度での吸湿力に優れており、放湿が少ないという特徴があります。B型は穴の径が大きく、高湿度で大量の水分を吸い、吸湿と放湿を繰り返すという特徴があります。

一方、他の乾燥剤として有名な酸化カルシウムや塩化カルシウムは化学反応タイプの乾燥剤であり、水が他の化合物と反応して消費されることにより乾燥します。

 

(2)シリカの特長

シリカが汎用される理由として、化学的に安定であることも重要です。もし、生活環境下で乾燥剤自体が不安定であれば、普段使いする乾燥剤に不向きですが、シリカの場合、ケイ素原子と強い結合を形成するフッ化物などを除いては基本的に化学反応が起こりません。

さらに、水溶性や潮解性もないため、扱いやすい物質です。
加えて、シリカゲルの吸湿作用は可逆的であり、加熱再生することができるため繰り返し使用することが可能でコストを抑えることができます。

 

2.化粧品添加剤としてのシリカ

シリカは化粧品の添加剤として利用されており、ボディケア製品、ネイル製品や歯磨き粉など様々な製品に含まれています。先述の精製用途よりも粒子径の小さい100 nm以下のものがよく用いられます。

シリカが化粧品の添加剤に用いられる理由はいくつかありますが、今回はソフトフォーカス効果表面処理効果抗炎症作用について紹介します。

 

(1)ソフトフォーカス効果

人の肌には、毛穴や小じわなどくぼんだ部分など凹凸が多くあります。
表面に光が当たれば明るく見え、くぼんだ部分に光が当たれば暗く見えてしまうため、その明るさの差により、しわや毛穴が目立ってしまいます[1]

これに対し、くぼみ部分を目立ちにくくするためには、皮膚表面の凹凸感の輪郭をぼかすこと、皮膚表面の明度差を減少させること[2]、が重要というソフトフォーカス理論が報告されています。
シリカの粒子がくぼみに入り込むことにより、光を多方向へ散乱させることができ、上記のようなくぼみを目立ちにくくする効果が期待できるため、メイクアップ製品に添加されています。

 

(2)表面処理効果

シリカは、化学的安定性が非常に高く、かつ無機酸化物の中で最も光屈折率が低いため、他の顔料に被覆することにより使用感や持続性の向上が見られることから、体質顔料や着色顔料の表面処理剤として汎用されています。
また、光触媒活性や化学的活性のある他の顔料を被覆することにより、それらの活性を抑制して使用感を向上させる効果も期待されています[2]

 

(3)抗炎症作用(肌荒れ)

肌荒れを起こしているときの角層表面には、たんぱく質分解酵素(ウロキナーゼ)が存在しています。これが初期段階の肌荒れに大きく影響していますが、シリカにはウロキナーゼを吸着する効果があることから、肌荒れ防止抗炎症作用が認められています。

 

3.精製用担体としてのシリカ

新たな材料研究や医農薬研究では、合成した化合物を精製し、純粋な化合物として単離し、物性や活性を評価する必要があります。シリカは、このような化合物の精製工程において重宝されている化合物であり、カラムクロマトグラフィーの担体として用いられます。

ここでも、シリカの多孔質性がカギとなります。シリカゲルを充填したカラム管に種々の溶媒を流すことにより、混合物から化合物を単離します。各化合物とシリカゲルの相互作用(未修飾シリカゲルでは親水性相互作用)の違いにより、分離が可能となるわけです。

一般的な化学修飾なしのシリカゲルだけでも、粒子径(大: 150 mm~, 中: 75-150 mm, 小: ~75 mm)や細孔径(6 nm, 7 nmなど)、性状(球状、破砕状)など様々な種類が固定相として市販されています。これらを、性能と価格のバランスや用途(オープンカラムや中圧分取、高圧分取など)に応じて選びます。

その他にも、シリカゲルの末端がアミノプロピル基、オクタデシル(ODS)基、シアノ基やジオール基などに修飾されたものも市販されています。
特に、ODS疎水性相互作用により化合物を分離するシリカゲルであり、HPLC分析において逆相クロマトグラフィー担体として用いられます。分離能や再現性が良く、順相系と違い再生が容易であることも特徴として挙げられます。
アミノプロピル基を持つシリカゲルは、塩基性化合物や極性が高い化合物の分離に適しています。

 

4.シリカの評価・分析方法

シリカ表面水酸基は、吸着性や化学反応性、電気的特性などに多大な影響を与えているため、シリカを利用した材料等の開発においては、その性質や構造を分析し理解することが重要になります。

図1に示すように、表面水酸基の基本構造としては、Si原子に結合している水酸基の数によりタイプIからIIIまでに分類され、これらが近接して水素結合を形成したものがタイプIVに分類されます 。

シリカ表面水酸基の基本構造
【図1 シリカ表面水酸基の基本構造 ※引用[4]

 

このような水酸基の構造を知るための分析方法はNMR法IR法化学反応法があります。NMR法やIR法は吸着等の界面現象には関与しない内部の水酸基も測定してしまうため、知りたい表面水酸基のみを解析したいときには、水酸基と反応する反応剤を添加して定量する、化学反応法が向いています。

 

5.シリカの安全性と安全対策

シリカの安全性は、結晶性シリカと非結晶性シリカで大きく異なります

結晶性シリカは、吸引した場合に、珪肺や肺がんのリスクを生じることが知られています。

一方で、化粧品や食品添加物として用いられる非結晶性シリカは、皮膚や眼への刺激性やアレルギー性、光感作性、発がん性はほとんどないと認められています。

 

シリカを扱う際の安全対策

特に結晶性シリカを取り扱う場合には、適切な安全対策が必要です。
以下に、シリカへの曝露を最小限に抑えるための一般的な安全対策をいくつか紹介します。

  • 保護具の着用:シリカへの曝露を最小限に抑えるために、マスクや手袋などの適切な保護具を着用する必要があります。
  • 作業場所の風通しを良くする:シリカを取り扱う作業場所の通風を確保することで、シリカの粉塵が空気中に充満することを防ぐことができます。
  • 手洗いなど:シリカを扱った後は、手や顔を十分に洗浄し、シリカの付着を防ぐようにしましょう。

 

6.材料開発等への応用が期待されるシリカ

シリカについての基本事項をいくつか紹介しました。このほかにも様々な研究が積極的に行われている物質であり、今後の材料開発等への応用が期待されます。

 

(アイアール技術者教育研究所 Y・F)

 


《引用文献・参考文献》

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