【半導体製造プロセス入門】後工程装置の種類と概要

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半導体後工程(後工程装置)の解説

本連載では、いままで主に前工程について解説してきました。
しかし、半導体デバイスは最終工程である後工程を経て完成します。
そこで今回は後工程装置について解説します。

1.後工程とは?《後工程の特徴、前工程の比較》

「前工程」がウエハーに対する加工であるのに対して、「後工程」は加工の終了したウエハーを実際に使用できるデバイスに加工する工程です。

前工程では原子や電子の動きをうまく利用して、物理的または化学的な性質を使って加工を行いますが、後工程は機械的な加工が多いです。原子や電子の動きは肉眼で見えず分かりにくい部分がありますが、後工程の装置は、研磨や切断といった、感覚的にもわかりやすい加工が多いです。

前工程に比べると加工が単純なものが多く、前工程のように複雑なプロセスはあまりありません。また、前工程の露光装置のように極限の精度を求められるものもありません。
もちろん切断や研磨の精度はある程度求められますが、一般的な機械加工の精度と同等か、それよりも少し高いレベルと考えてよいでしょう。

そのため、後工程装置は前工程装置のように、複雑な構造のものはあまりありません。そして、その分だけ、一台当たりの価格が前工程に比べると安価です。

また、同様の理由から設計や組み立ての技術的なハードルが低く、少し技術レベルの高い機械メーカであれば、一般的な製造装置製作の経験を生かして市場参入が可能ではあります。しかし、近年では後工程装置市場も寡占化が進んでいます。

なお、後工程でもクリーンルーム内で処理が行われますが、前工程よりもクリーン度は低くて済むため、設備投資が少なく電気代などの管理費用も減ります。

また、前工程の工場から後工程の工場への輸送はウエハーの形で行われますので、輸送コストがそれほどかからず、前工程と後工程の工場が離れていてもあまり影響しません。昔から日本国内において地方に後工程の工場が多いのはこのためです。また、前工程に比べると規模が小さいという特徴もあります。近年では、さらなる人件費削減のため、東南アジアや台湾、中国などに後工程の工場を設けることが多くなっています。
 

2.後処理工程に使用される装置

では、後処理工程で使われる装置を紹介します。
 

(1)プローピング装置

「プロービング装置」は後工程で最初に行われる作業で使われます。
チップとして切り離す前に、ウエハー上に「プローブ」と呼ばれる端子を接触させ、電気的な特性を検査します。検査で不合格となったチップの位置はプロービング装置に記憶され、最終的に製品としては出荷されません。

検査の方法は、予めプロービング装置の本体にプログラムされています。このプログラムはLSIの種類によって異なりますが、近年のLSIの大規模化・複雑化に伴って、検査プログラムも複雑なものとなっています。

プロービング装置の発注状況は、半導体市場の景気・不景気を最も受けるため、半導体市場の先行きを反映していると言われています。
 

(2)バックグラインド装置

プロービング装置で電気的な検査を行った後、「バックグラインド装置」でウエハーの裏面を削ります

前工程では、ウエハーにある程度の厚みがないと機械的強度が不足しますし、反りの影響が出てきます。しかし後工程では、ウエハーの厚みが薄い方がパッケージングを行う際に有利となります。そこで、ウエハーの厚みを数分の1に薄く削ります。

この工程は前工程のCMPと似ていますが、CMPが表面を「磨く」(研磨)というのに対して、バックグラインドでは「削る」(研削)という感覚になります。

バックグラインドの概念図
【図1 バックグラインドの概念図】

 

具体的には、図1に示したように、真空チャックに固定したウエハーに、ダイヤモンドの粒子を含んだ砥石を水平方向に毎分約5,000回転させながら接触させ、少しずつ削っていきます。最後に細かい粒子の砥石に変えて仕上げ研削を行います。その後、洗浄を行い、残ったカスを除去します。
 

(3)ダイシング装置

バックグラインドが終了したウエハーは「ダイシング装置」でチップに切り出されますが、このダイシングの前にウエハーの裏面にキャリアテープが貼られます。キャリアテープはウエハーやチップをフレームに固定するためのテープです。切断後にチップがバラバラになってしまうのを防ぐために使われます。

ウエハーの切断は、ダイヤモンドの粒子が付着されたプレード(カッター)を使用して行います。ブレードは、薄い方がチップとチップの「きりしろ」が小さくて済み、一枚のウエハーで作ることができるチップの数が多くなりますので、大変薄く作られています。

実際のダイシングでは、ブレードを毎秒数万回転させ純水で冷却しながら、切断していきます。このとき、キャリアテープまで切断しないようにする必要があり、プレードの高さの精度が重要となります。
また、近年では、ブレードを使用しないレーザーを使ったダイシングも研究されています。
 

(4)ダイボンディング装置

ダイシングの後はダイボンディングです。
「ダイボンディング」は、チップをパッケージ用の台座(ダイパッド)に載せてから、接着剤で固定する工程です。

まず、ダイパッドに接着剤を塗布し、チップをその上に載せた後、250℃程度の温度で加熱します。加熱しつつ圧力をかけ、すり合わせを行い接着させます、
この接着法は樹脂ベースの接着剤を使用するので、「樹脂接着法」といいます。接着剤は、エポキシ樹脂に銀の粒子を混ぜたものが使われます。
 

(5)ワイヤーボンディング装置

「ワイヤーボンディング装置」はチップと端子を接続する装置です。
LSIのパッケージを見たことがある人も多いと思いますが、このLSIのパッケージから出ているムカデのようなリード端子とチップとを接続する装置がワイヤーボンディング装置です。

リード端子とチップの接続には金線(金ワイヤー)が用いられます。チップ上の端子(ボンディングパッド)とリード端子のチップ側(インナーフレーム)を金線で結びます。

ワイヤーボンディングの概念図
【図2 ワイヤーボンディングの概念図】

 

図2のように、ワイヤーボンディングは「キャピラリー」と呼ばれる部分に金線を引き出してきて、金線の先端とボール形成用電気トーチを電極として放電させます。これにより、金線の先端を球状にします。

この球状の金線先端をボンディングパッドに押し付け、キャピラリーに超音波をかけて、200~250℃の温度で熱圧着します。
さらに、キャピラリーから金線を引き出し、インナーリードにも同様のプロセスでボンディングを行いますが、ここでは球状の部分は作らず、金線をキャピラリーで押しつぶすだけです。

これを、他のボンディングパッドとインナーリードについて繰り返して行います。
なお、この、ワイヤーボンディング工程の様子は、テレビで半導体関連のニュース映像としてよく出てくるシーンでもあります。
 

(6)モールディンク装置

ワイヤーボンディングが終了すると、チップをパッケージングする「モールディング工程」にはいります。

ワイヤーボンディングの終わったチップを金型の上に置き、金型の上部をかぶせて圧力をかけて、上下の金型を密着させます。すると、金型の上部と下部の間にできた隙間(キャビティー)にチップが収容されている状態になります。

この状態で金型を160~180℃に加熱してキャビティーに溶けたエポキシ樹脂を流し込みます。

その後金型を冷却すると、キャビティー内のエポキシ樹脂は硬化し、チップはエポキシ樹脂によって覆われることになります。
 

(7)マーキング装置

モールディング後には、「マーキング」を行います。マーキングは会社名やデバイスの型番、ロット番号などを記入する工程です。

ロット番号を記入する意味は、市場に出たデバイスが実際に使用された結果、不具合が発生した場合に不具合の解析を行う必要があるためです。ロット番号を追いかけることで、いつどのように作られたかを知ることができるのです。

マーキングにはレーザー光線(レーザーマーカー)が使用されます。レーザー光線でパッケージ表面を焼くことによって変色させ文字を記入しています。
 

(8)リードフォーミング装置

マーキングが終了すると、リード端子を成型します。
リードフレームは同じ種類の複数のデバイスから構成されているので、リードフレームからそれぞれのデバイスを切り離します。そして、リードを曲げて成型し、実際の使用に耐えられる形状にします。
 

(9)バーンイン装置

「バーンイン」は最終検査工程です。
半導体デバイスを含めた工業製品は、新品の不良率と、長く使った結果の不良率が高くなるという性質があります。言い方をかえると新品を買ってきて使い始めたときは不良率が高く(初期不良)、使っているうちに不良率が低くなり、長く使っていると劣化で、また不良率が高くなる(経年劣化)という性質があります(バスタブ曲線)。

バーンインではこの初期不良をできるだけ少なくするために電源電圧を規定の電圧より高くして、さらに周囲の温度を高くして動作させます。つまり、デバイスを通常よりも過酷な条件で動作し検査を行います。これにより、初期不良の発生する可能性のある製品を排除して、市場に流通する製品の信頼性を確保しています。
 

3.後工程装置は単純な原理が基になっている

以上、後工程装置の概要について解説しました。
冒頭でも述べたように、後工程装置は一般的な機械加工の延長線上の感覚で理解することができます。
そして、前工程装置に比べると価格が安いものも多く、単純な原理に基づいている場合が多いことも理解いただけたと思います。
 

(アイアール技術者教育研究所 F・S)

 

【半導体後工程についてさらに詳しく】連載「半導体の後工程を学ぶ」(全4回)

 

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