設計者として押さえておきたい「ロバスト性」とバラツキの考え方

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製品やシステムでは、ロバスト(頑健)であることが求められます。

ロバストという言葉が単純に耐久性があって頑丈という意味で使われる場合もあるかもしれませんが、開発においては、強度における劣化影響も含めたバラツキ特性も含めて考えることが重要です。

技術者の開発目標特性であるロバスト性について、もう少し具体的に掘り下げて考えてみましょう。
 

目標とする特性

以下の図は、設計変数や工程変数の変化、それに対する強度の変化、そして製品の設計(工程)公差の設定値の関係を表しています。

(b)のような特性に対して、(a)のような特性が、目標にすべきロバスト性の高い特性です。
 

設計変数工程変数
 

(a)は(b)に対して、以下の特長を持っています。

  • 設計変数や工程変数の変化に対して、強度変化が少なく、必要強度を越える幅が広い
  • 設定公差幅が許容強度ギリギリでなく充分な余裕を持っている
    ⇒ 何らかのアクシデントで、製造バラツキの分布が変化し、製造規格をわずかに外れても、必要強度範囲ならば設計保証強度は満たし、不具合に至らない。(ただし、このような場合には、不具合発生一歩手前なので、原因を究明して、すみやかにバラツキ分布を元の位置にもどしておかなければなりません)
  • 公差幅が広く、作り安い(コストを低減できる)

 

強度変化に崖がある設計とは?

設計目標として(a)をめざしますが、下図(c)や(d)のような特性となることが、避けられない場合は、設計変数や工程変数を規格設定値の範囲外まで変えた評価を徹底的に行わなければなりません。

強度が崖を落ちるように下がるポイントを知り、安全率を明確にしておかないと製造変数が、わずかに規格を外れただけで、大量の不具合を生む可能性があります

(c)は(d)に対して、更に悪い例です。設計変数や工程変数の影響で、強度分布がどう変化するかを知らずに、公差の中央値や規格幅を設定し、崖に近いところにバラツキ分布がきている場合です。
(d)は、バラツキ分布の位置設定が適正に行われている例です。
 

設計変数や工程変数
 

劣化時の強度分布を考える

開発においては、強度の時間変化、すなわち作動回数と樹脂やゴム材などの経時変化による強度変化を考えなければなりません。

強度劣化も含めて、(a)のような強度分布であることが求められます。
耐久テスト評価により、劣化後に強度分布がどのように変化するかを把握して、初期(新品時、出荷時)の公差設定をしなければなりません。
そのためには、耐久テストサンプルの数と仕様(設計変数、工程変数)が適切でなければなりません。(崖近くのサンプルでOKという結果を得て、崖の存在に気が付かないというようなことが無いように)
 

システムのロバスト性は?

上述では、製品のロバスト性を中心に説明しましたが、システムでは、下図(e)のように、製品での強度変化曲線のかわりに、故障による機能維持レベル曲線を考えます。

システムにおいても、製品での(a)の特性のような、よりフラットな曲線であることが、ロバスト性あるいは冗長性の向上のために求められます。

(e)は、車両システムの例で、リンプホーム可能レベル(※)というのは、ある故障レベル(Ⅰ)では、退避移動レベルの機能が保持されていることを表します。
 

システムの故障状態

(※)リンプホーム :最低限の機能維持。”limp home”の英語の意味は、‘足をひきずって、よたよた家までもどる’すなわち‘足を痛めても、最低限、家まではなんとかたどり着く’というということを表しています。

充分な性能評価や耐久性評価を行い、そのデータを解析・理解して、ロバスト性の高い製品やシステムとなるようにしましょう。
 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 


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