ベースメタル、レアメタル、そしてレアアース《混同しやすい金属の用語解説》

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ベースメタル、レアメタル、レアアースの違い

金属とは、内部のカチオン化した金属イオンが金属結合で規則正しく並んで、電子が自由に流れる固体結晶のことです(水銀は例外)。
電気や熱の良導体であり、常温常圧状態では透明でない固体状態となるの通常です。
皆さんがよく耳にする金属は、金、銀、銅、鉄などでしょう。実は、地球上に存在する約100種の元素のうち、金属元素は約70種もあります。

一般的に、周期表上で[ホウ素(B)―ケイ素(Si)―ヒ素(As)―テルル(Te)―アスタチン(At)]を斜めに結んだ線を、ほぼ金属元素と非金属元素の境界線とし、その左側と下側の元素を金属元素、右側・上側(および境界線上)の元素を非金属元素として分類することが多いです(図1)。
しかし、金属の種類は、分け方によってさまざまです。

今回のコラムでは、混乱しやすいベースメタル、レアメタルおよびレアアースの違いについて解説します。

 

1.金属元素の種類とベースメタル

鉄や銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなどのように、社会の中で大量に使用され、生産量が多く、様々な材料に使用される金属は、一般的に「ベースメタル」(汎用金属)と呼ばれています(図1、緑色部分)。

元素周期表と金属の分類
【図1 元素周期表と金属の分類】

 

※緑色枠は「ベースメタル」、青色枠は「貴金属」、赤色枠は「レアメタル」、赤色枠内が黄色のものは「レアアース」と分類されます。この図では色分けされていますが、レアアースはレアメタルに属しています

 

2.レアメタル(希少金属)とレアアース(希土類金属)

ベースメタルの反対がレアメタル(希少金属)です。
明確な定義はありませんが、経済産業省の資料では、「『地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属』のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるものを、鉱業審議会においてレアメタルと定義。」との記載があります1)

レアメタルとして、一般的に下記のような金属が挙げられます。

リチウム・ベリリウム・ホウ素・希土類・チタン・バナジウム・クロム・マンガン・コバルト・ニッケル・ガリウム・ゲルマニウム・セレン・ルビジウム・ストロンチウム・ジルコニウム・ニオブ・モリブデン・パラジウム・インジウム・アンチモン・テルル・セシウム・バリウム・ハフニウム・タンタル・タングステン・レニウム・白金・タリウム・ビスマス(図1、赤色枠)

レアアース」(希土類金属)もレアメタルの一種で、下位に分類されています。
レアアースを含むレアメタルは、ベースメタルとは異なり、産出量が少なく、需要に対して安定的な供給が難しい金属です。高付加価値産業を支えている金属であるため、注目されることが多いです。
レアアース(希土類金属)は性質のとても近い 21Scスカンジウム39Yイットリウムと、ランタノイドの15元素計17元素の総称です(図1、表1)。

希土類金属の元素記号と和名
【表1 レアアース(希土類金属)の元素記号と和名】

 

レアメタルは、[典型元素 15種類 + 希土類以外の遷移元素 15種類 + 希土類金属(レアアース) 17種類]の合計47種類があり、この中には半金属のホウ素セレンテルルも含まれています。

 

3.貴金属とは?

では、よく耳にする「貴金属」とは何でしょうか?
おなじみの 金、銀、銅、鉄 の中では、貴金属が2つ含まれています。

一般的には金、銀、白金(プラチナ)やパラジウムなどの8元素が「貴金属」と呼ばれ、希少で耐腐食性があるのが特徴の金属です。
貴金属の反対は、大量産出される卑金属(ベースメタルのこと)となります。

貴金属は古くから財貨として流通して、世界経済を支える役割も担ってきました。そして、錬金術から現代の化学を生み出してきました。

 
以上、今回はベースメタル、レアメタル及びレアアースの違いなどを中心にご紹介しました。

ちなみに、元素周期表の境界線付近のケイ素、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルルなどの元素は、しばしば金属と非金属の中間的な挙動を示し、条件によって金属的な形態と非金属的な形態をとるものや、半導体となるものなど、特異な性質が現れます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
 


《引用文献・参考文献》


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