【品質保証塾・中級編】製造業における再発防止の取り組み|手順と対策のポイント、事例など
製造業において品質保証は、非常に重要な機能の1つとなります。
品質保証が不十分な製品は、顧客の信頼を失い、企業イメージを損なうだけでなく、顧客の健康や安全に深刻な損害を与える可能性があります。そのため、品質保証を改善し、再発防止を徹底することが求められます。
今回の記事では、製造業における品質保証観点での再発防止について解説します。
目次
1.品質問題における再発防止の重要性
再発防止は、品質管理の重要な要素の1つになります。
品質問題が発生した場合、再発防止策を講じることで、同じ問題が再び発生しないようにすることができるためです。再発防止は、品質保証を改善するための取り組みの中で、最も重要なステップの1つと言えます。
再発防止を徹底することで、顧客満足度の向上や企業のイメージ向上につながります。
2.再発防止の手順とは?
再発防止には、次のような手法があります。
(1)問題の発生状況の確認
まずは、問題が発生した状況を把握することが必要です。
問題が発生した場所や時間、関係者、発生した事象や症状などを調べます。
また、問題に関するデータや資料などを収集し、問題の原因を特定するための材料を集めます。
この発生状況の確認にて、たくさんの情報を集めておくことは、次ステップの原因分析のヒントになるため、大切な活動になります。
(2)原因分析
品質問題が発生した場合、まずは原因を特定することが重要です。
原因分析は、品質問題の再発防止策を立てるために欠かせない作業です。
原因分析には、5W1H(Who、 What、 When、 Where、 Why、 Howの観点で事実に注目しながら原因を分析する方法)分析を使用します。これは、問題が発生した際に、誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのようにしたのかを考える手法です。
その他にも、魚の骨図法などの手法を用いることが一般的です。
(3)改善策の実施
原因を特定したら、改善策を立てます。
改善策には、製品やプロセスの改善、教育・トレーニングの実施、改善アクションの実施などがあります。
改善策は、品質問題が再発しないようにするための重要な取り組みです。
改善策を検討する際には、以下のようなポイントに注意してください。
- 効果的かつ実現可能な対策を検討すること
- 根本的な原因を取り除くことができる対策を講じること
- 再発防止対策が他の問題を引き起こさないことを確認すること
- 対策が実施されているかどうかを定期的に確認すること
(4)検証と評価
改善策を実施した後は、その効果を検証し、評価します。
検証の方法には、定量的なデータ分析や現地調査などがあります。
また、改善策の効果を評価するために、品質指標を設定し、定期的にモニタリングすることも重要です。
対策が効果的であれば、同様の問題が発生することはなくなりますが、効果がなかった場合は、対策の見直しを行う必要があります。
(5)源流へのフィードバック(ドキュメントへの反映)
実施した対策が永久的に実施されるように、組織が扱うドキュメントの改定を行いましょう。
例えば、図面、仕様、FMEA、作業指示書などのドキュメントに、対策を落とし込むことで、別の人が見ても同じ対策が反映されることになります。
しっかりと、組織の『仕組み』に対策を落とし込むことが重要となります。
(6)問題解決プロセスの改善
品質問題が発生した場合、問題解決プロセスの見直しが重要です。
問題解決プロセスを改善することで、品質問題の発生自体を減らすことができます。
品質問題が発生する度にではなく、定期的に『実際に行った問題解決における手順は、組織のルールとして定められていたか?』という視点で問題解決プロセスを見直すことにより、品質改善活動のボトムアップになります。
(7)品質文化の醸成
品質保証において重要なのは、品質意識の高揚です。
品質問題を防ぐためには、全社員が品質に対する意識を持ち、品質を追求することが必要です。
品質文化の醸成には、トップマネジメントからのメッセージや、品質に関する教育・トレーニングの実施などが有効です。
(8)情報共有の強化
品質問題の発生を防ぐためには、情報共有が重要です。
情報共有をすることで、同じ問題が再発しないようにすることができます。
情報共有には、品質に関する情報共有システムの構築や、定期的なミーティングの実施などがあります。
(9)再発防止の継続的改善
再発防止は、一度改善しただけで終わるものではありません。製品やプロセスは常に変化しており、新しい問題が発生する可能性があります。そのため、再発防止は継続的な改善が必要です
継続的改善を行うためには、定期的な品質監査や、品質指標の定期的なモニタリングが重要です。
また、品質問題の発生を予防するために、品質保証プロセスの改善や、品質文化の醸成を継続的に行うことが必要です。
3.再発防止における事例
以下に、実際に発生した問題に対する再発防止の事例を紹介します。
(1)ブローアウトの再発防止
ある製造業で、部品の製造工程でブローアウトという現象が発生しました。
「ブローアウト」とは、高圧のガスや液体が急激に放出されることで、部品や設備が破損することです。
この問題が発生した原因は、設備の点検が不十分であったことでした。
そこで、点検計画を見直し、始業前に行う点検項目チェックシートを充実させる再発防止策を講じました。
(2)プレス機の不良品発生の再発防止
ある製造業で、プレス機によって製造された製品の一部に不良品が発生しました。
原因は、プレス機の不良によるものでした。
再発防止策として、プレス機の点検項目と頻度を見直し、異常があった場合は速やかに修理を行うことを決定しました。
(3)品質不良の再発防止
ある製造業で、製品の品質が不良だったため、顧客から苦情が寄せられました。
原因は、製造ラインの一部で、製品の検査が不十分であったことでした。
再発防止策として、製造ラインの検査体制を見直し、検査項目を充実させ、検査実施手順書の改定を行いました。また、品質不良が発生した場合は速やかに調査を行い、再発防止策を講じることを徹底しました。
4.再発防止における人材育成と教育
再発防止において、人材育成と教育は非常に重要な役割を果たします。
従業員が問題を解決し、原因を特定することができるようになると、再発防止のための取り組みが劇的に改善される可能性があります。
以下では、人材育成と教育において重要な4つの項目について説明します。
(1)問題解決能力の育成
問題解決能力の育成は、再発防止において最も重要なスキルの一つです。問題が発生した場合、従業員はその原因を特定し、防止策を考えることができる必要があります。
問題解決能力を育成するには、トレーニングや研修を提供することが必要です。トレーニングは、問題解決の手順や方法、原因分析の手法、チームワークなどを含むことがあります。
(2)原因分析の手法の習得
原因分析は、再発防止のために必要なスキルです。原因分析の手法を習得することにより、従業員は問題の原因を正確に特定することができます。
代表的な原因分析の手法には、5W1H、魚の骨図法、PDCAサイクルなどがあります。これらの手法を習得することにより、従業員は問題を深く掘り下げ、原因を正確に特定することができます。
(3)実践的なトレーニングの提供
従業員が再発防止のスキルを習得するためには、実践的なトレーニングが必要です。トレーニングでは、実際の問題に取り組んで、原因分析や解決策の提案を行うことができます。
このようなトレーニングを通じて、従業員は問題解決能力を向上させ、再発防止の取り組みに貢献することができます。
(4)人材育成の取り組みの評価
人材育成の取り組みは、再発防止において非常に重要ですが、その効果を定量的に評価することも重要です。
人材育成の取り組みには、研修やトレーニングなどの費用がかかりますが、それらの投資が企業にとって有益なものであることを示すことが必要です。
従業員のスキルや知識を向上させることで、生産性の向上や再発防止の費用削減につながる可能性があります。
そのため、人材育成の取り組みの評価は、再発防止の取り組みを継続する上で必要不可欠です。
以上のように、再発防止における人材育成と教育には、問題解決能力の育成、原因分析の手法の習得、実践的なトレーニングの提供、人材育成の取り組みの評価といった重要な項目があります。
企業は、これらの項目を適切に取り組むことで、再発防止のための取り組みを強化し、より安全な製品やサービスを提供することができます。
また、従業員にとっても、スキルや知識の向上が期待できるため、モチベーションやキャリアアップの機会を提供することで、企業の成長につながる効果が見込めます。
5.まとめ
今回は、製造業における再発防止についてまとめました。
ものづくりをしていれば、必ず問題は発生してしまいます。
その問題をしっかりと改善し、再発防止を徹底することで、企業としての信頼度が向上するのです。
- 品質問題が発生した場合、再発防止を徹底することが大切
- 再発防止には、原因分析、改善策の実施、検証と評価、問題解決プロセスの改善、品質文化の醸成、情報共有の強化などの手段がある
- 再発防止は継続的な改善が必要(定期的な品質監査や品質指標のモニタリング、品質保証プロセスの改善など)
- 再発防止は、品質問題の発生を防ぐことで、製品やプロセスの品質を確保することができる
- 再発防止の実施により企業の競争力を高め、持続可能な経営を行うことができる
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)