- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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前回この連載コラムでは、シール部品であるガスケットについて解説しました。
ガスケットは配管フランジに多く使用されています。
そこで今回は、知っておきたい配管フランジの基礎知識をご紹介いたします。
機械やプラントには様々な配管が張り巡らされています。
配管は必要長さに切った管(パイプ)を、曲がり(エルボ)、分岐(ティー)、拡縮(レジューサ)、といった各種配管継手でつないで構成します。
配管全部を溶接継手でつなぐと、長くて曲がりくねった形状になり、取り扱いや機械の保守点検に不便となるため、必要に応じて分解できる個所を設ける必要があります。
流体がスラリーを含む場合は、定期的に分解して内部を清掃することも必要となります。
配管フランジは、配管部品の分解・組立を容易にするための配管継手の一つで、組立・連結のための多数のボルト穴と、ガスケットを挟むための座が、管と同心に配置された円板状の部品です。
配管フランジは、配管同士を接続するだけではなく、弁(バルブ)、計器(流量計など)、ポンプなどの機器類との接続にも使用されます。
したがって、取合い寸法が一致するように、ある共通の規格に則って設計製造する必要があります。
世界には様々なフランジ規格がありますが、我が国で多く採用されているのはJIS,JPIとASME/ANSIです。
配管口径にはmm系列とinch系列とがあります。
我が国ではmm系列をA呼称(15A,25A,50Aなど)、inch系列をB呼称(1/2B,1B,2Bなど)としています。
原則としてJISフランジはmm系列のA呼称で、ANSIとJPIフランジはinch系列のB呼称で、それぞれ接続配管口径を表します。
ただし、JIS規格の配管であれば対応するA呼称、B呼称で管外径は同一です。
(例:15A=1/2B、25A=1B、50A=2B)
しかし、配管がANSI規格の場合は、管外径が微妙に相違するので注意が必要となります。
たとえば、JIS規格25Aの管外径は34.0mmに対して、ANSI規格1Bの管外径は1.315inch=33.4mmです。
流体の種類、圧力、温度や用途などの条件に応じて、鋳鉄、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼など様々な材料のフランジが規格化されています。
高圧ガスでは、鋳鉄製フランジを使用することはできません。
フランジは内包する流体の圧力・温度に対して十分な強度を有している必要があります。
各フランジ規格には、配管の設計条件や流体の種類に応じて適切な形状と材質のフランジを容易に選定できるようにするための、呼び圧力(レーティング)という値が定められています。
JISフランジは、5k,10k,10k薄形,16k,20k,30kの6種類と、参考として2k,40k,63kの呼び圧力が、JIS B2230(鋼製管フランジ)に規定されています。(kは、工学系の圧力単位[kg/cm2]のkを表しています。)
ANSIフランジは、クラス150,300,400,600,900,1500,2500の7種類の呼び圧力が、JPIフランジはこれに加えて、クラス75と800の呼び圧力が規定されています。
この数値は、ヤード・ポンド系の圧力単位[psi]を表しています。
さらに、各フランジ規格には圧力‐温度基準という指標が定められていて、フランジの材質と流体の温度によって、その圧力レーティングのフランジが適用可能な最高使用圧力を知ることができるようになっています。
開先加工を施して管と突合せ溶接します。
熱応力や振動に対する強度に優れ、信頼性の高い構造です。
内面を滑らかに仕上げることができるという利点もあります。高温や高圧の用途に適しています。
フランジに管を差し込んで、フランジ背面の管外側と、内径部の内側を2か所スミ肉溶接します。
開先加工の必要がないので簡便に施工可能ですが、溶接強度と信頼性の面で劣るので高温配管には使用しません。
フランジに胴付部を設けておいて管を差し込み、フランジ背面の管外側1か所をスミ肉溶接します。
SOフランジと異なり溶接ビードがフランジシール面を傷つける恐れがなくなりますが、溶接1か所で信頼性が低下するので高圧高温配管には使用しません。
フランジ内径にテーパめねじ、管にテーパおねじを施工し、ねじ込み接合します。
溶接が不要となりますが、シール性の点で信頼性が低く、常温、定圧で危険性のない流体の用途に適用します。
「スタブエンド」と呼ばれるつば付きの配管継手と管を突合せ溶接し、管をフランジ穴に通してスタブエンドのつば部分をフランジに当てます。
フランジと管の間には拘束がないので、フランジボルト位置を自由に調整することができます。
また、フランジと管を溶接する必要がないので、溶接性と無関係に異なる材料で製作することができます。
主に常温、定圧で危険性の低い流体の用途に適用します。
フランジ面が全面にわたって同一平面で、ガスケット座面とボルト締結面の間に段差がない形状のフランジです。
主にJIS10k以下、もしくはJPIクラス150以下の低圧用途で鋳鉄製の場合に使用されます。ガスケットはゴムシートなどの軟質のものを使用します。
ガスケット座面をボルト締結面よりも高くした形状のフランジです。
ガスケットの装着と圧縮をより確実に行うことができ、最も多く利用される形状です。
ガスケット面を一対のオス・メス座として、ガスケットを挟み込む構造のフランジです。
バルブや機器との接合の際に心出し精度を要求される場合などに適用します。
フランジ合せ面の一方に凸(タング)部、他方に溝(グルーブ)部を設け、溝内にガスケットを装着します。
はめ込み形と似ていますが、ガスケット受圧面が小さく、同じ締め込み力に対して面圧を大きく取ることができます。
気密性を要求される高圧配管や真空用途などに適用します。
金属製のリングジョイントガスケットを使用する場合に適用します。
シール性に優れ、他のガスケットよりも配管荷重に強い特長があります。
またシール面が溝中にあって露出しないためシール面損傷が少ない利点もあります。
ANSI規格フランジは、ガスケット座面に「セレーション」という、渦巻き状(スパイラル)または同心円状(コンセントリック)の細かい溝(1inchあたり45~55本)加工を施します。
目的は、ガスケット面圧を上げることによるシール性の向上と、ガスケットの安定装着(ガスケット切れ防止)です。
ということで今回は、配管フランジの基本をまとめて解説しました。
設計に必要な前提知識として必ず押さえておきましょう。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)