【早わかりポンプ】ウォーターハンマー(水撃)の発生原因と防止対策を徹底解説!

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シャワーヘッド

今回は、ポンプを使って水を送る配管系に時として発生する困りごとである「水撃現象」(ウォーターハンマー現象)の概要とその対策について解説します。

1.水撃(ウォーターハンマー)とは?

配管系統における管内流速が急変して液圧が急激に上昇して、鉄で打撃したような音が発生する現象を「水撃」または「ウォータハンマー」(Water Hammer)と呼びます。

配管やポンプ、弁などに損傷を及ぼすことがある有害な現象ですので、水撃が発生しないように対策を講じる必要があります。水撃現象は以下のような場合に発生しやすくなります。

  • ポンプ起動時
  • ポンプ停止時
  • ポンプ回転速度急変時
  • 弁開閉時

水撃による圧力上昇は、流速変化度(ポンプ起動停止の方法、回転速度変化率、弁開閉時間)と管路長さによって決まります。
一般的に、停電により駆動モータ動力が失われてポンプが急停止する場合の水撃発生が多く見られます。

 

2.水撃(ウォーターハンマー)の原因[発生原理]

(1)弁の急閉鎖(圧力上昇)

送水中の管路途中に設置されている弁を急速閉鎖すると、流速が一気にゼロとなり、大幅な圧力上昇をもたらします。
身近な例として、水道の蛇口がレバー式の場合、急に締めると「コン!」という音がします。
また、シャワーヘッドの手元開閉スイッチを操作して水の出を止めると手に軽い衝撃を受けると思います。
これらの現象も弁の急閉鎖による水撃です。

 

シャワーヘッド
【図1 シャワーヘッド】

 

(2)液柱分離(圧力低下⇒上昇)

停電などでポンプが急に停止した場合、あるいは高温液を扱う管内で液体が気化して瞬時に液に戻った場合などに、水撃現象は発生します。

 

① ポンプ急停止による発生

ポンプが急停止したとき、下流の水はポンプ運転時の流速で流れ続けます。ポンプが急停止することで上流側から水を送り出す速度が低下して、管路内の水(液柱)に引張り力が作用し、上流下流の間の圧力が急低下して飽和蒸気圧力以下になって空洞が発生します。これを「液柱分離」といいます。

空洞部の圧力が低下することで上流の水は加速され下流の水は減速されて、再び液柱が結合し、このときに水撃による大きな圧力上昇が発生します。

 

ポンプ急停止と液柱分離、圧力急変発生の模式図
【図2 ポンプ急停止と液柱分離、圧力急変発生の模式図】

 

② 揚液温度と圧力の釣り合いが崩れることによる発生

高温液を扱う配管系統において管内圧力が低下して、そのときの揚液温度における飽和蒸気圧力を下回ると液が気化します(沸騰)。高温液を扱う配管は断熱されているので、気化した液は断熱膨張して温度が低下して再び液の状態に戻ります
このときに液柱分離状態から短時間で再結合して液柱が復旧し、水撃による大きな圧力上昇が発生します。

 

3.水撃現象(ウォーターハンマー現象)の解析[計算式]

(1)解析基礎式

管路内の非定常時の運動方程式および連続の方程式が、水撃解析の基礎式として次式のように導出されます。

解析基礎式

  • H : 基準線からの静水頭
  • V : 流速[m/s]
  • x : 距離[m]
  • t : 時間[s]
  • a : 圧力波の伝播速度 [m/s]
  • g : 重力加速度 [m/s2]
  • D : 管内径[m]
  • f : 管摩擦係数
  • α : 管路の基準線に対する傾き角度

上記の基礎式に、ポンプ、貯水槽、弁、分岐、合流などの境界条件を加えて解析を行います。
算術解法図式解法特性曲線法などがあり、複雑な管路系を精度よく解析する場合には、電算機を用いた特性曲線法を適用します。
比較的単純な管路に対して圧力変動や、液柱分離の可能性を検討する場合には、図式解法を基本とする計算図表(パーマキアン線図など)の利用が便利です。

 

(2)Allieviの式と圧力上昇値の簡易計算

簡単のために、図のようなポンプ下流の長さ L[m] の直管内を、圧力波が速度 a[m/s] で伝播する場合を考えてみます。

遮断弁を閉じる時間が 2L/a より短いとき流速変化に基づく圧力上昇ヘッド h[m] は、次式で求められます。

流速変化に基づく圧力上昇ヘッドh[m]

V0 は定常状態における管内流速 [m/s]、V は弁を閉じたときの流速です。
弁が全閉となった場合は V=0 ですから、

弁が全閉となった場合

となります。

管内を伝播する圧力波の速度 a[m/s] はAllieviの式により

Allieviの式

Dは管内径[m]、tは管壁厚さ[m]、κは液の体積弾性係数、Eは管材の体積弾性係数です。

液が水の場合は κ=2.06[GPa]、鋼管の場合は E=208[GPa] となります。

たとえば D=0.1[m] 、t=0.005[m]の場合、(3)式より a=1302[m/s] 、管内流速が V0=2[m/s] であったときに弁を急速閉鎖すると(2)式より、

 圧力上昇ヘッドh = 1302/9.8 x1 = 265[m] = 2.6[MPa] (液が水の場合)

となり、配管や機器に影響を及ぼし得る圧力上昇が発生することがわかります。

 

直管内の圧力派伝播
【図3 直管内の圧力派伝播】

 

4.水撃(ウォーターハンマー)の防止対策

(1)圧力上昇防止対策

① 管径の選定

ポンプ吐出し配管内の流速が低くなるような管径を選択します。
水撃が予想されるときは流速を1m/s程度に抑えるようにします。

 

② 自閉式逆止弁の設置

蝶番にコイルバネを設けた構造のスイング式逆止弁を設置します。
バネ力により自閉効果を持たせ、逆止弁の閉止遅れに伴う逆流による圧力上昇を緩和します。
ただし、ポンプ実揚程の2倍程度の圧力上昇は発生します。

 

蝶番をばね付きとし、停止時に急速閉止
【図4 蝶番をばね付きとし、停止時に急速閉止】

 

③ 緩閉式逆止弁の設置

逆止弁を一定時間かけて徐々に閉鎖して、ある程度の逆流を許すことで圧力上昇を緩和する方法です。
逆止弁の開閉機構に油圧ダッシュポッドを取り付けて開閉速度を遅くする構造などを採用します。
図のようにスイング式逆止弁の出口側につい立状のカバーを設けて、逆流時の閉鎖速度が遅くなるようにした構造のものもあります。相当量の逆流が発生するため、停止ポンプの逆転速度が問題となる可能性があります。

 

つい立カバーで停止時に緩慢閉止
【図5 つい立カバーで停止時に緩慢閉止】

 

④ 緩閉バイパス付き逆止弁の設置

スイング式逆止弁にバイパスを設けて、バイパスを緩閉式とする構造です。
②と③の利点を両方取り入れた構造となり、ポンプ停止により主逆止弁は直ちに閉止して大きな逆流は防止するとともに、圧力上昇はバイパスから逃がすことができます。

 

⑤ 自動圧力調整弁の設置

水撃による圧力上昇値に対して自動的に開く設定のレリーフ弁を設置することで、有害な圧力上昇が発生することを防止できます。

 

(2)液柱分離防止対策

① フライホイール(ポンプ)

ポンプ側でとれる対策として、停電などで急にポンプ駆動機が停止しても、慣性効果により回転速度が緩慢に低下することで管内の流速変化率が小さくなって液柱分離を防止できる方法があります。

ポンプと駆動機を結合する軸継手を大きいものにするか、下図のようにフライホイールを別に設けて慣性モーメントを大きくする方法です。

 

フライホイール
【図6 フライホイール】

 

② サージタンクの設置

ポンプ吐出し配管途中にサージタンクを設けて、圧力上昇の緩和あるいは配管内の圧力が低下したときにタンクから水を補給して負圧の発生による液柱分離を防止します。

圧力上昇時のアップサージと圧力低下時のダウンサージと両方に対応可能な「普通型」と、一方向のみ対応の「ワンウェイ型」とがあります。

図はダウンサージ一方向型(ワンウェイ)サージタンクの配置模式図です。配管との接続部に逆止弁、あるいはボールタップが付属し、管側からタンク内へ逆流することがないようにします。上水設備に設置する場合は、タンク内の水質悪化に対する対策が必要となります。

 

一方向サージタンクの設置
【図7 一方向サージタンクの設置】

 

③ 圧力空気槽(アキュムレータ)の設置

ポンプ吐出し配管途中に、圧縮空気で高圧にした空気を閉じ込める空気層を設け、配管内の圧力が低下したときに空気槽内から高圧空気により水が押し出されて管内に供給され、液柱分離発生を防止できます。
圧縮機や水位検出器などの付属機器が必要です。

 

圧力空気槽の設置
【図8 圧力空気槽の設置】

 

④ 空気弁の設置

管路の負圧が発生する可能性がある地点に空気弁を設けて、負圧発生時に空気を吸い込ませる方式です。空気圧により管内圧力を回復させて、液柱分離の発生を防止します。

空気が気泡となって混入した場合は、圧力伝播速度aが気泡無しの時と比べて小さくなるので、液柱再結合時の圧力上昇を低下させる効果も期待できます。ただし、空気混入の状況によっては、気泡ではなくまとまった空気柱となって圧縮されてしまい、過渡的に管内圧力を上昇させる有害な作用をもたらすおそれもあるので注意が必要です。

 

⑤ 液温変化率の緩和(BFPなど高温液の場合)

液の飽和蒸気圧力は、温度が上昇すると2次関数的に増大します。
下図は、水の温度‐飽和蒸気圧力特性です。

 

水の温度‐飽和蒸気圧力特性
【図9 水の温度‐飽和蒸気圧力特性】

 

ボイラ給水ポンプBFP)の運転中に発電負荷が下がって給水温度が急激に低下した場合、吸込み槽(脱気器)の圧力は、その温度における飽和蒸気圧力Pv’まで低下しますが、下流のBFP入口の液温は高い状態で飽和蒸気圧力はPvのままです。これにより給水は気化(フラッシュ)した後、断熱膨張により温度低下して液状態に戻るため、液柱分離から再結合による圧力上昇が発生し、BFP軸封部品(メカニカルシール)などに損傷を与える可能性があります。

脱気器循環ポンプを設置するなど、給水温度変化率が緩やかになるような対策を施す必要があります。

 

液温変化率の緩和
【図10 液温変化率の緩和】

 

 

このように水撃対策には、雪道での運転(急発進、急停止、急ハンドルを避ける)と同様に、「急」を伴う機器の動作を回避(ポンプ急停止、弁の急閉鎖、揚液温度急変)するための方法が数多くあります

このコラムが、水撃・ウォーターハンマー現象の理解と対策の参考になれば幸いです。

 
 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)

 

 

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