【センサのお話】ステレオカメラとは?測距の原理・方法の解説と主な車載用メーカーを紹介

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車載用ステレオカメラの解説

前回のこの連載では、「先進運転支援システム(ADAS)と測距センサ」をテーマとして、アクティブ測距方式の3D-LIDAR・ミリ波レーダー・超音波センサについて解説しました。

今回はパッシブ測距方式として知られるステレオカメラについて話題として取り上げたいと思います。

ステレオカメラも自動車のADAS (Advanced Driver Assistance System :先進運転支援システム)に関連する分野などで利用される重要な手段です。

1.ステレオカメラとは?

「ステレオカメラ」は、複数のカメラを用いて立体的に撮影することで測距が可能となるカメラのことです。

単眼カメラでも測距を行うことが可能ですが、精度がステレオカメラに比較して低く、主に画像認識により例えば道路の走行レーンを検出してこれを逸脱しない制御や横断歩道の検出などに利用されます。

これに対してステレオカメラは、測距が可能であり障害物や前方の車の検知が可能となるため、衝突回避や車間距離を保つ制御などへの利用が可能となります。

そのステレオカメラですが、歴史は古く欧州で1850年頃に特許が取得されているとのことです。
また、ステレオカメラを利用した立体像の取得が可能な機器である「ステレオスコープ」が1950年代に発明されています。
ステレオカメラ自体は、主に欧米などで製品化されましたが、1990年代以降に国内でも開発・製品化が盛んに行われました。自動車などへの利用が後押しになりました。

デジタルカメラと同様に、ステレオカメラではイメージセンサとしてCCDやCMOSが利用されます。

 

2.ステレオカメラの測距方法(原理)

左右二つのカメラを利用した場合の、ステレオカメラの測距方法について説明したいと思います。

まず測距の前準備として、両方のカメラについて歪み補正などのキャリブレーションを行い、左右のカメラで撮影した2つの画像の対応する点が同じ座標を持つようにマッチングのための平行化処理などを行います。

その後に測距に入りますが、測距の原理としては三角測量の手法を用います。

測距のためのパラメーターとして、複数のカメラ間の視差および焦点距離とカメラ間の距離である基線長をもとに対象物との距離を算出します。

詳細については以下の図を用いて説明します。

測距方法
【左右二つのカメラを利用した場合の測距方法イメージ】

 

3.主な車載用ステレオカメラメーカー

ここでは、車載用として製品を行っているメーカーについて簡単に紹介します。

① Robert Bosch GmbH

お馴染み、世界最大級の自動車部品メーカー・Boschもステレオカメラを手掛けています。
 

② Aptiv PLC

アメリカの大手自動車部品メーカーです。(旧・Delphi Corporation)
インテリジェント前方視認カメラ(Mobileye社と共同開発)などを提供しています。
 

③ Hyundai Mobis

Hyundai向けにカメラを供給しています。
カメラ認識技術の向上のため韓国のスタートアップ企業に投資して車両・歩行者の識別技術の向上を図っています。
 

④ 日立オートモティブシステムズ

多くの日系自動車メーカーにステレオカメラが採用されています。
特徴として細かな路面形状の高精度検知が可能です。
 

⑤ リコーインダストリアルソリューションズ

デンソーとの共同開発によるステレオカメラが、様々な車種に採用されています。
デンスステレオマッチング技術(高密度視差演算技術)を開発して路面解析を向上させています。
 

⑥ ZMP

自動運転技術やロボット開発を研究する日本のベンチャー企業です。
特徴として4つのレンズを採用して高性能な測距を行う「RoboVisin3」を提供しています。

 

4.アクティブセンサとパッシブセンサの統合的制御

これまで、ステレオカメラについて主に車載用の紹介をしてきました。
ステレオカメラの性能を向上させるために、例えば広視野角を求めていくと検知可能範囲が狭まってきます。
このため分解能を向上させるために高画素にすると、画像分析の演算量が増えて判定に時間を費やする結果となります。

そこで、前回アクティブ測距方式の3D-LIDAR・ミリ波レーダー・超音波センサについて紹介しましたが、これらのアクティブセンサとの連携による統合制御で、広視野角の検知領域と遠距離の障害物を検知可能で、さらに高速、高精度で検出を行うことを実現する必要があります。アクティブセンサとパッシブセンサの統合的な制御利用です。

これは、ロボットなどの分野において既にいくつかのセンサの情報を利用して制御のための判断を決定しているように実用化されていますが、これと同じ作用です。

統合的センサ制御
【アクティブセンサとパッシブセンサの組み合わせ】

このためには、今後さらにステレオカメラからの入力画像による視野角の広さの向上と画像認識アルゴリズムの高速化、及びアクティブセンサーの対象物とのターゲットマッチング技術の高速化および高精度化がさらに求められるのではないでしょうか。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)
 


★関連コラム:「自動車産業のキーワード”CASE”とは?センサとの関わりと用語のまとめ」はこちら


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