【センサのお話】回転センサー/回転検出の技術
エンジンの制御が始まった時、まず検出しようとしたのはエンジン回転とエンジン負荷でした。
この際に技術導入された回転センサの技術は、精度の進化とともに、ただ単に回転を検出するだけではなく、回転の位相角(クランクシャフト位相角、カムシャフト位相角)も検出するようになり、さらには回転角速度変動を検出し、さらに逆回転を検出できるようになりました。
電磁ピックアップ方式回転センサ
回転センサのルーツと言えば電磁ピックアップ方式の回転センサです。
円周に突起(又はヘコミ)を持つ磁性材回転体(パルサー)と電磁ピックアップを用いて回転を検出します。
電磁ピックアップの基本構成は、ポールピースとマグネットそして検出コイルです。ポールピースとパルサーのギャップがパルサーの回転による突起の接近・通過・離反時に変化し、その際発生する磁束密度変化により検出コイルに発生する電流の変化をとらえます。
ターボチャージャースピードセンサ
ターボチャージャーの回転センサでは、毎分20万回転以上の回転を検出しなければなりません。
回転検出をしないシステムでは、ターボチャージャーの回転能力に対して大幅な余裕をもって回転制限をおこなっていますが、回転検出をすることによって、制限値を上げることができ、出力、燃費、排気浄化性能を向上することが可能となります。
さらにターボチャージャーの排気タービンの回転検出は、燃焼ガスの流入速度変化に比例するため、各気筒の燃焼状態を知ることもできます。
センサの方式として、電磁ピックアップが適用される場合がありますが、検出コイルをよりポールピース側に近づけるためには検出コイルの小型化が必要となります。この場合には、非常に小さい径の銅線をテンションを与えながら巻き線する技術が必要となります。
閾値可変という考え方
電磁ピックアップでは、回転体の突起の接近・通過・離反以外に回転体の他の部分の磁束密度変化への影響がノイズとして電流出力に加わります。
出力信号とノイズの比をS/N比(シグナル・ノイズ比)と呼びますが、S/N比が大きいほど精度の高い検出が可能になります。
電磁ピックアップ方式の回転センサの場合、磁束密度変化は回転数が高くなるほど大きくなるため、出力も大きくなります。逆に低回転では出力が低くなります。
突起通過を判定するため、電流変化に対してある閾値(スレッシュホールド)となる所定電流値レベルを決めますが、低回転低出力時にあわせて閾値を決めると、高回転時にはノイズ出力も大きいため、ノイズが閾値を越える可能性が高くなります。
閾値の最適化という方法もありますが、出力レベルに合わせて閾値を変化させるという技術もあります。
ホール素子、MR素子を使った回転センサ
電磁ピックアップは構造がシンプルなため、コストパフォーマンスが高いセンサです。
一方、上述のように回転に依存した出力の大きさ、ノイズ特性を持つため、より低回転からの検出と高精度検出のために、ホール素子や磁気抵抗素子を用いたもの、あるいはLED(光源)とフォトダイオード(受光)を用いた回転センサもあります。磁気抵抗素子(MR素子)を用いたものは、電磁ピックアップが「電磁式」と呼ばれるのに対して「磁電式」と呼ばれます。
磁気抵抗素子は、磁界の強さによって抵抗値が変化します。マグネットによって一定磁界を与えておき、パルサー(歯車)の突起が素子に近くときの磁界変化により抵抗値が変化することをとらえます。
電磁ピックアップでは、逆回転を検出できませんが、磁電式ではMR素子の複数列レイアウトが可能で、回転方向性があるため、逆回転検出が可能となります。
回転検出をしながらアクチュエータを動かす
これまで説明したセンサでは、パルサーの回転に影響を受けて変化する現象を利用して回転を検出しました。
基本に戻ると、回転を検出するには、回転に比例する物理量をとらえれば良いことになります。回転に比例する他の物理量を考えると遠心力があります。
上述のセンサは、アクチェータの制御に用いる場合、例えば次のような順序になります。
物理量の変化 → センサ信号処理 → コントローラでの制御上の演算処理 → アクチェータへの制御電流 → アクチェータの作動
一方、遠心力をアクチェータの推力に変える機構(例えば遠心力式調速機)の場合には、
物理量の変化(回転変化による遠心力の変化)→アクチェータの作動(遠心力による作動)
となり、デジタル制御の場合のような時間遅れが無いアナログ機構となります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
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