《強磁性3元素》鉄(Fe),コバルト(Co), ニッケル(Ni)の特徴を比較して整理!磁性材料の基礎がわかる

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磁性材料の解説

磁性材料は、外部磁場の印加によって強く磁化され、外部磁場を取り去っても自発磁化(残留磁化)が残る強磁性の性質を示します。

[※関連記事:磁性材料と磁気特性の必須基礎知識を解説!軟磁性材料と硬磁性材料の違いは?

室温で強磁性の性質を持つ元素は、元素周期表の第4周期に位置する遷移金属、鉄(Fe)コバルト(Co)ニッケル(Ni)3種類だけで、磁性材料はこれらの何れかを含みます

今回は、その強磁性3元素「鉄」「コバルト」「ニッケル」について、特徴や磁気特性などを比較しながらご紹介します。

1.鉄/コバルト/ニッケルと磁気モーメントの源

最も小さい磁気モーメントは電子のスピンが作り、電流の磁気作用と同じく周囲に磁場が発生します。

図1の矢印は電子を、矢印の向きはスピンの方向を示します。
遷移金属の鉄、コバルト、ニッケルは、M殻3d軌道の収容可能電子数に達する前にエネルギーが低いN殻4s軌道に電子が入り、M殻3d軌道の電子の数は、それぞれ6,7,8個です。
同じ電子軌道内に振る舞いの異なる二種類のスピンの電子が存在し、多くの原子の電子はスピンが互いに逆向きの電子対となっているので、磁気モーメントは打ち消されます。

鉄、コバルト、ニッケルのM殻3d軌道の電子は、フントの法則により同じ方向のスピンの数を多くするように配置されますので、スピンを打消す相手をもたない不対電子の数は、図1の赤色↑で示す、それぞれ4,3,2個となります。

磁気モーメントの源は不対電子であり、強磁性は磁場を印加したときに、スピンが平行に配列されその方向が揃っていることで発現します。

なお原子番号25のマンガン(Mn)の不対電子数は5ですが、スピンの方向が揃っていないので強磁性ではなく常磁性です。

 

電子配置
【図1 電子配置】

[※関連記事:3分でわかる 磁性体の基礎知識|磁性体とは?磁気の源は?強磁性体になる理由は?

 

2.鉄/コバルト/ニッケルの概要(基本的な特徴や使い方など)

は最もポピュラーな金属の一つといえます。
地殻における元素存在度は桁違いに大きく、産出地域も多いので、磁性材料の原料として広く使われています。純粋な鉄は磁壁が移動しやすく軟磁性材料なので、磁石として使用するときは酸化鉄、または他の原料と混合されます。

コバルトは白銀色をした金属です。
単体で用いることは多くありませんが、耐熱特性に優れ、丈夫な酸化被膜を形成し摩耗にも強く、さまざまな合金材料として使用されます。

ニッケルは銀白色をした金属です。相変態がなく磁気特性が安定です。
錆びにくいので、メッキとして使用され、日本の硬貨もニッケルを含みます。
ニッケル単独の状態で用いられることは多くありませんが、さまざまな合金材料として使用されます。

 

3.鉄/コバルト/ニッケルの特性比較

表1に、鉄、コバルト、ニッケルの特性(1磁気モーメントの大きさ、2キュリー温度、3結晶構造と変態点温度・キュリー温度、4結晶磁気異方性)を示します。

 

鉄、コバルト、ニッケルの特性
【表1 鉄、コバルト、ニッケルの特性】

 

 

(1)磁気モーメントの大きさ

1電子当たりの磁気モーメントMの大きさは下記となります。

 M=gJ(µB)=(µB)

  • g3d遷移金属の磁気モーメント。スピン角運動量によるものなので、2となります。
  • Jスピン角運動量の磁場方向成分。1/2となります。
  • (µB)ボーア磁子。電子の軌道角運動量、スピン角運動量によって生じる磁気モーメントの単位。

鉄、コバルト、ニッケル金属1原子当たりの磁気モーメントの大きさ(µ)は、不対電子数が4、3,2ですので、それぞれ4(µB)、3(µB)、2(µB)であるはずです。

しかし、実験で求められる磁気モーメントの大きさ(µ)は、表1に示すように、鉄、コバルト、ニッケルそれぞれ、2.2(µB)、1.7(µB)、0.6(µB)です。
大きさの順番は変わりなく、鉄が最も大きな磁気モーメントを有しますが、値は小さくなっています。

磁気モーメントMから得られる値と較べ小さく、また整数でない要因は、鉄、コバルト、ニッケル金属では、上向きスピンと下向きスピンの状態密度(単位エネルギーレベルに存在できる電子の割合)が異なるため、上向きスピンと下向きスピンの数の差が発生し、磁気モーメントはこのスピンの数の差により発現するためと考えられています。

 

(2)キュリー温度

キュリー温度(Tc)は、鉄、コバルト、ニッケルそれぞれ約770℃、約1100℃、約360℃です。

コバルトは、原子間の電子のスピン方向が揃う交換相互作用が非常に強いので、キュリー温度が高く耐熱特性に優れています

 

(3)結晶構造

  • : 常温では体心立方構造(BCC)、変態点温度(約910℃)以上では、面心立法構造(FCC)に転移します。
  • コバルト: 常温では六方最密構造(hcp)、変態点温度(約420℃)以上では面心立方構造(FCC)に転移します。
  • ニッケル: 面心立方構造(FCC)で、相変態はありません。磁気特性、化学・機械特性が安定です。

 

(4)結晶磁気異方性

強磁性体には、結晶方向により磁化し易い方向(磁化容易軸)と、磁化し難い方向(磁化困難軸)があります。磁化の方向を磁化困難軸方向に変化させようとすると、仕事が必要で、この結晶の方向性依存を「結晶磁気異方性」と呼びます。

磁化に依存する内部エネルギーを結晶磁気異方性エネルギー Eaと呼び、磁化はエネルギーが小さくなる磁化容易軸方向に向こうとします。結晶磁気異方性エネルギー Eaは、磁化容易軸方向から角度θの方向の場合、結晶異方性定数K1、K2、K3、・・・を用いて、以下のようになります。

 Ea=K1sin2θ+K2sin4θ+K3sin6θ+・・・

結晶磁気異方性エネルギー Eaが小さい原料による磁性材料は、外部磁場により敏感に素早く磁化され、Eaが大きい原料による磁性材料は保持力が大きくなります。

  • : 結晶磁気異方性定数(K1)は、約4x104 [J/m3] 。磁化容易軸は[100]方向、磁化困難軸は[111]です。
  • コバルト: 結晶磁気異方性定数(K1)は、約5x105 [J/m3] 。鉄と較べ大きいですが、希土類金属のネオジム(Nd)の約5x106 [J/m3]と較べると小さいです。磁化容易軸は[0001]、磁化困難軸は[1000] 。六方最密構造(hcp)なので、c軸が磁化容易軸となります。
  • ニッケル: 磁気異方性定数(K1)は負になり、約 -5x103J/m3 。鉄と較べ小さいです。磁化容易軸は[111]、磁化困難軸は[100] です。鉄と磁化容易軸、磁化困難軸がお互いを打ち消すようになっています。

 

4.鉄/コバルト/ニッケルを原料とする磁性材料

  • アルニコ磁石(Al-Ni-Co): アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)と鉄(Fe)を主成分とする鋳造および焼結磁石。希土類磁石に較べ、ビッカーズ硬度などで示される耐久性,キュリー温度などで示される耐温度特性が優れています。
  • 鉄クロムコバルト磁石(Fe-Cr-Co): 鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)を主成分とした鋳造磁石。アルニコ磁石よりも残留磁束密度(Br)および最大エネルギー積が大きい磁性材料です。加工性に優れ、切削加工や穴加工、圧延、打ち抜き等が可能です。
  • パーマロイ(Fe-Ni): 透磁率(permeability)が高い合金(alloy)です。鉄(Fe)とニッケル(Ni)は結晶磁気異方性の磁化容易軸と磁化困難軸が互いに打ち消す方向になっているため、高透磁率特性を有すると考えられています。
    • 「PBパーマロイ」は、代表組成がFe-(40~50%)Niで、パーマロイ系で飽和磁化が大きい合金です。
    • 「PCパーマロイ」は、Fe-(70~80%)Niの代表組成に添加元素(Cu、CuーCrなど)を含有したもので、パーマロイ系で透磁率が高い合金です。
  • インバー合金(Fe-Ni): 鉄(Fe)に(35~36%)のニッケル(Ni)を加えた合金です。熱膨張係数が小さい磁性材料です。熱膨張による体積膨張と、温度上昇に伴う強磁性自発磁化の減少による体積磁歪(磁性体に磁場を印加したときの体積変化)の減少が相殺されるため熱膨張係数が小さいと考えられています。
  • パーメンジュール(Fe-Co-V): 鉄(Fe)とコバルト(Co)にバナジウム(V)を添加した合金です。実用化された磁性材料のなかで、最も飽和磁化が大きい材料です。

※磁性材料について詳しく知りたい方は、下記コラムも併せてご参照ください。
・「主な希土類磁石と金属合金磁石 [サマコバ磁石,ネオジム磁石,アルニコ磁石]
・「高透磁率材料の特徴と用途は?(パーマロイ/センダスト/パーメンジュール)

 

以上、今回は「鉄」「コバルト」「ニッケル」という3つの強磁性元素を解説しました。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・O)
 

 

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