3分でわかる 磁性体の基礎知識|磁性体とは?磁気の源は?強磁性体になる理由は?

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磁性体の基礎知識

1.磁性体とは

その材質に外部から磁界をかけたとき、材質内部が強く磁化する、つまり強く磁気を帯びるとき、その材質を「強磁性体」と呼びます。

外部磁界

そして外部磁界を取り除いても磁化が多く残るものを「硬磁性体」と呼びます。
磁石は硬磁性体といえます。

また外部磁界を取り除いたらほとんど磁化が残らないものを「軟磁性体」と呼びます。
鉄やニッケルなどは軟磁性体です。

一方、外部磁界をかけた時にごく弱く磁化するものがあり、それを「常磁性体」と呼びます。
空気やアルミなどは常磁性体です。

また、外部磁界をかけたときにわずかですが反対方向に磁化するものがあります。それは「反磁性体」と呼びます。
水、銅、亜鉛がそうです。
常磁性体

では、なぜ物質によって磁気を帯びたりするのでしょうか。
磁気とは何なのでしょうか?
 

2.磁気とは

磁気とは磁石に吸いよせられたり、反発したり、磁界中で力を受けたりすることを言いますし、磁界とはそういう力を与えるポテンシャルを言います。では磁気の源は何でしょうか。

磁気の源は電子のスピンです。スピンには原子核の周りを回る公転と自分が回る自転がありますが、自転が支配的です。

たくさんある電子のスピンの向きが偏っていると磁気を帯びますし偏ってないと帯びないということになります。

スピン
 

3.強磁性体になる理由

なぜ外部から磁界をかけられた材質は強く磁気を帯びるのか、電子のスピンの向きが偏る理由を説明します。
 

(1)原子の構造と電子の収容ルール

原子には原子核とその周囲を回転運動する電子からなることはご存じと思います。
個々の電子はルールによって軌道配置されており、決められた軌道内を運動します。
また各軌道は「殻」(カク)とよばれる軌道の収容場のようなものに収容されています。

そもそも原子核の周りには原子番号が増えるに従い、K殻、L殻、M殻、N殻・・・が配置されています。そしてK殻にはs軌道が一つ存在できます。s軌道には電子2つまで入ることができますので、Kから1つでHとHeに対応できます。

原子番号3になりますと、Kからにはもう電子が入りませんのでL殻ができ、L殻に入っていきます。L殻には電子が2つまで入庫できるs軌道に加えp軌道というものが加わります。p軌道は3つの直交する軌道からなり各軌道には電子が2個入庫可能ですので、最大3×2=6個の電子が入庫できるということになります。

先ほど述べましたK殻のs軌道は1番目なので1s軌道といい、L殻のs軌道は2s軌道、p軌道は2p軌道ということになっています。ですからK殻+L殻で電子は2+(2+3×2)=10個、つまり原子番号10のNeまで収容できます。

さらに原子番号が大きくなると次はM殻に入っていきます。M殻には電子2個の3s軌道、電子3×2個の3p軌道、に加え3d軌道を持っています。d軌道には5つの軌道があり各軌道には電子が2個入庫可能ですので5×2=10個入庫できます。そしてM殻には2+(3×2)+(5×2)=18個の電子が収容できることになります。M殻の外側にはさらにN殻が配置されます。

原子核

 

《電子殻への電子配置》

通常は原子番号の順にエネルギー順位の低い殻の内側から順序よく埋まっていき、電子は逆向きのスピンがペアになるよう入っていくので、磁気モーメントは小さくなります。

電子殻への電子配置

 

(2)ルール破りな遷移金属

M殻の3P軌道がいっぱいになったら3d軌道にいくかと思いきや、エネルギー順位はわずかにN殻の4s軌道のほうが小さいため、3d軌道ではなく4s軌道に電子は埋まっていきます。そのあと3d軌道に電子が入っていきます。これまでと異なり内殻のd軌道が閉殻になっていないわけです。

 

ルール破りな遷移金属

今までは電子スピンは正方向が来たら次は負方向と順番にバランスよく軌道に埋まっていきましたが、21Sc(原子番号21のSc)からはそうはいきません。原子番号21番から25番までは5つの軌道に同じスピンの方向でどんどん入ってきます。それから26番から30番まで反対向きの電子が入ってきます。

つまり21番から29番のところが非常にスピンモーメントがアンバランスな形になります。それを「遷移金属」と呼び、同じような性質を持っています。
 

そのようなわけで26Fe、27Co、28Niなどは強磁性の性質を持つのです。

遷移金属の例外

なお、この中に例外がありますので、補足しておきます。
24Cr4s23d4 ではなくd軌道5個で準安定のため 4s13d5 となり、29Cu4s23d9 のはずですが、d軌道10個で安定となりたいので 4s13d10 となっています。

 

なおアイアール技術者教育研究所では、磁性材料に関連する技術セミナーも開催しております。
例えば、自動車用センサの中でも最も応用範囲の広い「磁気センサ」については、「磁石や磁気デバイスの知識」を詳しく解説した講座があります。センサ開発の一般的進め方についても説明していますので、磁気センサ開発を始めて新しい方や、中堅の方で知識の再確認と補充をするにはお勧めです。

 

(※この記事は岩瀬技術士事務所 代表 岩瀬 栄一郎 講師からのご寄稿です。)
 

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