【半導体製造プロセス入門】PVD装置(スパッタリング装置)の要点解説 [成膜装置の基本③]
今回は、成膜装置のうち、気相成長装置としてPVD(物理的気相成長)装置について解説します。
1.PVD(物理的気相成長)とは?
気相成長装置には、エピタキシャル成長装置、CVD(化学的気相成長)装置、PVD(物理的気相成長)装置、蒸着装置などがあります。
[※CVD装置については、当連載の前回「CVD装置の種類・分類と特徴」で解説しています。]
ここでは、PVD装置である「スパッタリング装置」について説明します。
2.スパッタリング装置の仕組み
まず、反応室内でアルゴンガスのプラズマを発生させ、発生させたアルゴンイオンを「ターゲット」と呼ばれる金属の塊にぶつけると、ターゲットの表面の金属原子がはじき出されます。(図1)
このはじき出された金属原子をウエハー上に捕捉・集積させて成膜を行う方法が「スパッタリング」です。
エッチングの観点からみるとターゲットをエッチングしている格好になります。エッチングの場合、はじき出された金属原子は排気とともにチャンバーから外に排出されますが、スパッタリングではこの金属原子を利用しています。
【図1 スパッタリング装置の概念図】
3.スパッタリングの特徴、用途、トレンド
スパッタリングは、低温プラズマを使用するため、ウエハーへのダメージが少なく、特に金属膜(電極膜や配線膜)の成膜に利用されます。もちろんチャンバーは真空ですが、アルゴンイオンを発生させるためにはプラズマの真空度を上げる必要があり、真空システムはより高度なものが要求されます。このため、装置の価格がほかの成膜装置よりも高めです。
ターゲットには、さまざまな金属が用いられますが近年主流になっているのは、アルミニウム(アルミ)です。アルミニウムは融点が低く、電気抵抗が少ないというメリットがあります。このため、半導体製造では主に金属配線膜の材料として使用されます。
アルミの精製は電力を消費するため、従来は純度の高いアルミは高価でした。けれども、近年精製技術の進歩や原材料の変化(ボーキサイトの精製からリサイクル材料の精製に変化)により低価格化が進んでおり、金属配線膜の材料として盛んに使われています。
スパッタリングのデメリットになりますが、はじき出された金属原子(スパッタ粒子)は一定の角度を持ってウエハーに飛んでくるので、ウエハー上の段差の被覆、特に深い穴を埋めることが苦手です。このため、スパッタ粒子の方向を垂直方向にそろえる格子を設ける方法や、ターゲットとウエハーの距離を離す方法などが採られます。
なお、スパッタリング装置は枚葉式で、図2のようにクラスターツール化が進んでいます。
ここでも、プラズマの高密度化のための技術開発が行われています。
【図2 クラスターツールの概念図】
以上、今回はPVD装置の「スパッタリング装置」について基本的な知識をご紹介しました。
次回は、液相成長系の成膜装置についてご説明します。
(アイアール技術者教育研究所 F・S)
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