3分でわかる技術の超キホン 一次電池の種類/特徴/基本原理(マンガン電池・アルカリ電池など)
現代において「電池」は無くてはならないものとなっていますが、今回は電池の基礎について説明します。
世の中のほとんどの携帯機器は、電池で動作しています。
普段目にする電池には、充電できない「一次電池」と、充電可能な「二次電池」がありますが、今回のコラムでは「一次電池」を中心に説明していきます。
目次
1.電池の分類と基本原理
「電池」とは、熱や光、化学反応などのエネルギーを電気エネルギーに変換するもので、大まかには図1のように分類されます。
[図1 電池の大まかな分類]
生物電池は特殊なので、一般的には「化学電池」と「物理電池」の2種類に分類されると言ってよいでしょう。
普段我々が使用しているのは、化学電池の一次電池・二次電池や、物理電池の太陽電池などでしょう。
図2は、化学電池の原理を示した図です。
この図では、希硫酸の水溶液に亜鉛板と銅板を入れ電球を接続して、回路を形成しています。
[図2 化学電池の原理]
原理としては、希硫酸(電解液)に、銅板(プラス極)と亜鉛板(マイナス極)をいれると、亜鉛板から亜鉛イオンが電子を残して溶け出します。亜鉛板に残された電子は、導線を伝って銅板へ移動します。
こうした電子の移動によって電流が発生し、電気が起き、電球が点灯します。
銅板へ移動した電子は、希硫酸中の水素イオンとくっついて水素ガスになるので、銅板は亜鉛板よりも電子が増えることがありません。
また、マイナス極の金属が溶けていきますが、この金属の溶けやすさは、イオン化傾向(イオンになりやすさ)によって決まっています。
このイオン化傾向の異なる金属を組み合わせて電解液に浸すことで電気が起こります。
この時、イオン化傾向の大きいほうの金属が電子を電極に残しやすいのでマイナス極となり、両金属のイオン化傾向の差が大きいほうが大きな電圧を作ることができます。
2.一次電池の種類と特徴
(1)マンガン乾電池
マンガン乾電池は、1個あたり1.5Vの電圧を供給できる乾電池で、テレビのリモコンや時計など微小な電力を長時間使用する機器に適しています。
従来の単価は、アルカリ乾電池の半額程度でしたが、現在ではアルカリ乾電池の単価がかなり下がってきています。
マンガン乾電池は、掛け時計や置き時計など小さな電力で長時間動く電気機器や、大きな電力を必要とする場合でもそれが瞬間的であるもの(ガスコンロ点火用等)に使用する乾電池として適しています。
図3は、マンガン乾電池の概略構造を示す図です。
[図3 マンガン乾電池の構造]
マンガン乾電池は、中心に「集電体」と呼ばれる炭素棒があり、正極活物質に二酸化マンガン、負極活物質に亜鉛を充填し、電解液には塩化亜鉛を使用しています。
構造は、亜鉛缶の中に二酸化マンガンと電解液を混合したペーストを入れ、そのペーストの中に電気を取り出すための集電体として炭素棒を刺しています。
正極と負極は、互いがセパレータによって区分されています。炭素棒、正極、負極は絶縁チューブによって覆われ、外装に金属ジャケットを施してあるのが、一般的な構造です。
マンガン乾電池の電解液である塩化亜鉛水溶液は、その性質がほぼ中性であるため、万が一液漏れし、人体に接触しても被害を小さく抑えられます。電気機器の内部で液漏れが発生しても、粉が吹く状態とはなりますが、金属を腐食させることもなく比較的安全です。
(2)アルカリ乾電池
アルカリ乾電池は、マンガン乾電池と同様に1個あたり1.5Vの電圧を供給できる乾電池で、マンガン乾電池よりも高出力で、瞬時に大出力が必要なカメラのストロボや、モーター等の回転機械の駆動用に適している乾電池です。
CDプレイヤーやラジコンカーなど、モーターを長時間駆動させる電気機器に適しています。
図4は、アルカリ乾電池の概略構造を示す図です。
[図4 アルカリ乾電池の構造]
アルカリ乾電池は、集電棒にメッキ処理が施された真鍮棒が使用され、正極活物質に二酸化マンガン、負極活物質に亜鉛、電解液に水酸化カリウム溶液を使用しています。このため、アルカリ乾電池と呼ばれます。
最大の特徴は、マイナス極活物質の亜鉛を粉末にして表面積を拡大していることと、水酸化カリウムが電離して生じる水酸化物イオンの移動速度が水素イオンより速いために化学反応が速く進むことで、マンガン乾電池の約2倍の電流を長時間安定して取り出すことが可能になっていることです。
全体の構造は、亜鉛の粉末の周りを二酸化マンガンの粉末が取り囲み、その外側に電池のケースがあります。
電解液は、マンガン乾電池では二酸化マンガンに混ぜていましたが、アルカリ乾電池では亜鉛粉末に混ぜていて、集電棒も亜鉛粉末の中に刺さっています。
そのため、アルカリ乾電池では、缶がプラス極となり、マンガン乾電池と逆になっています。
アルカリ乾電池の電解液は、アルカリ濃度の高い水酸化カリウム水溶液が使用されているため、非常に腐食性が高いという欠点があります。そのため、密閉構造となっています。
(3)その他の一次電池
その他の一次電池について、簡単に紹介します。
① ニッケル系一次電池
プラス極活物質にオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)を使用していることから、「ニッケル系一次電池」と呼ばれています。
アルカリ乾電池より数倍長持ちします。
デジタルカメラのような大きな電力を必要とする機器に適しています。
② 酸化銀電池
プラス極活物質に酸化銀(Ag₂O)を使用しているため、「酸化銀電池」と呼ばれます。ボタン型電池として広く使用されています。
電圧が非常に安定しているのが特長です。
寿命にいたる直前まで、ほぼ最初の電圧を保つため、クオーツ時計、露出計などの精密機器に適しています。
③ (ボタン形)空気亜鉛電池
正極の材料に空気中の酸素を使っていますので、電池に負極の材料の亜鉛をたくさん詰めることができます。
このため、酸化銀電池などの他のボタン形電池より大きな電力容量を持っています。
同じ大きさの電池で、長く使えますので、連続して使う補聴器やページャーに使用されています。
④ アルカリボタン電池
酸化銀電池は正極の材料に高価な酸化銀を使っていますが、同じ電圧で、酸化銀電池の廉価版として、比較的安価な二酸化マンガンを使ったのがアルカリボタン電池です。
このため、経済性に優れていますが、使っていくと電圧が低くなります。
携帯ゲーム機、歩数計など幅広く使用されています。
⑤ (円筒形)リチウム電池
マイナス極の活物質にリチウムを使用しているものがリチウム電池です。
電圧が3Vと高く、軽いこと、自己放電(使用しないで置いておくだけで自然に放電してしまう現象)が少ないことが特長です。
大きな電力が出せるためカメラに使われています。また、ガスメーターや水道メーターにも使われています。
⑥ (コイン形)リチウム電池
電圧などの特長は円筒形と同じで、パソコン、ビデオデッキ、炊飯器などのメモリー(記憶保持)機能や時計機能のバックアップとして使われています
また、車のキーレスエントリー、電子手帳やポケット式のライトなどにも幅広く使われています。
以上、今回は一次電池の概要について説明しました。
一次電池には、他にも多くの種類の電池があるので、使用状況に合わせて最適な電池を選ぶことが必要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)