【トヨタとサムスン】実際に両社で勤務した専門家が語る、組織の考え方の違いとは?

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トヨタとサムスンの人事/組織の違い

我々が目指すべき「働き方」とは?

令和日本のビジネス界では、コロナ危機への対応とあいまって、働き方改革への対応が大きなウェイトを占めています。

その背景には、超高齢社会(総人口の21%以上が65歳以上)に人類史上最速のスピードで2007年に到達した日本で、さらに高齢者人口比が増加していることがあり、また「超少子化」(女性1人当たりの生涯における産子数=合計特殊出生率が1.5未満1.3以上 [*1] )も追い打ちをかけている、生産人口比率の低下が示唆されます。

2020年の敬老の日の総務省のデータでは、ついに28.7%に上った日本の高齢者人口比。老いも若きも日本社会を支えるために、働ける人は一生働かないと生きていけない時代に突入したといえます。
そんな社会では、企業は労働者個人に無理なく生産性を高めてもらえる仕組みを作らなければなりません。

今回は、日本の産業界リーダーともいえるトヨタ自動車(TOYOTA)と、押しも押されぬ韓国のトップ企業であるサムスン(Samsung)に、技術者としてお勤めの経験をお持ちの高原忠良先生から、世界のトップクラス企業両社の組織の考え方、働き方・働かせ方に関する違いと特徴についてご寄稿いただきました。

働き方改革につなげるために、皆様の会社の生産性向上のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。

 

そもそも、トヨタとサムスンってどんな会社?

事業の核に必ず自動車? “モビリティカンパニー” トヨタ

トヨタは、豊田佐吉の開発した織機の技術基盤に端を発し、豊田喜一郎が新たに自動車事業に進出したことで設立された、お馴染みの自動車メーカーです。

2020年の危機的状況から、いわゆる自動車メーカーから「モビリティカンパニー」と称する、輸送機器の範囲から輸送関連ビジネスへ拡大するという大変革を目下遂行中です。

静岡県裾野市東富士の工場跡地に作る「Woven City」というスマートシティは、輸送関連ビジネスも包括したインフラ開発と日常生活での利用を大々的に試す場であり、情報作業の雄 NTTと組むことで、最新のICTの活用も含めた一大実験として注目しています。
しかし、事業の核に必ず自動車があるということは、企業として一貫した姿勢のようです。

トヨタ自動車 グルーバル競争力

【トヨタ自動車 グルーバル競争力】

 

異業種への進出・撤退を繰り返しつつ進化する”コングロマリット” サムスン

一方のサムスンですが、こちらは、ありとあらゆる業種に多角的に取り組んでいます。
いわゆるコングロマリット、複合企業です。

日本で「サムスン」といったら、「サムスン電子」(Samsung Electronics Co., Ltd.)を示していることがほとんどです。
サムスン電子は確かに事業規模・売上でサムスングループ中で他を圧倒するものの、60を超える企業数のグループ全体からすると、その一角にすぎません。

サムスングループの歴史をふりかえると、そもそもは日本統治下の1938年に設立された商社、サムスン(三星)商会に由来します。朝鮮戦争後、戦後消費の急拡大が見込まれる砂糖と繊維製造を始めたことで、初めて製造の世界に踏み出しました。その後、建築、造船、電池等様々な製品を手掛けることになります。

1969年には日本の旧三洋電機と合弁で家電に進出し、現在のサムスン電子が誕生しました。
また、アジア通貨危機で2000年に撤退することにはなりましたが、自動車事業も行っていたことがあり、今でも「ルノーサムスン」というブランドを残してルノー車を輸入販売しています。

2020年現在、アメリカから新型コロナ治療薬の大規模な製造委託を受け活況を呈しているのはサムスンバイオロジクスです。
 

あくまでも自動車を本業とするトヨタと異なり、サムスンは利があるとみると異業種に進出し、収益性が下がると事業売却するということが特徴的です。合成樹脂や砂糖事業はすでに売却され、別の会社としてビジネスを継続しています。

現在では、たとえばBMWの電気自動車のバッテリはサムスンSDI製、世界一高いビルのブルジュ・ハリファ(ドバイ)はサムスン物産が主たる建設会社として建設するなど、話題性も高いのですが、おおよそ20年に一度程度、事業構造として大規模に変革しながら成長をしているようです。

 

共通点は「有言実行」、でもアプローチは正反対?

こんなに会社としての考え方の違いがあるトヨタとサムスンですが、一つ大きな共通点があります。
それは有言実行、ということです。

会社方針として目標に掲げたことは必ず達成します。
これが世界的に成功するための指標となのかもしれません。

「目標は大きく持つとよい。それに向かって努力すれば、方向性は間違っていない。頑張った事実があれば、達成できたことがそれよりも小さくなっても仕方ない。」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれが社員の士気にも大きくかかわります。
会社方針が実現できないこともしばしばという会社では、「どうせできなくてもいつものことだ」と、社員も考え抜くことをせず、ほどほどの力しか出さずに終わりかねません。

しかし、面白いことに、両社の違いがでてくるのが、実際の達成方法です。
 

組織的、段階的なやり方のトヨタ

会社方針、部門方針、各部方針、個々人の実行計画というふうに、頂点の目標をそれぞれの階層で細分化し、あますところなく展開、実行するのです。
ピラミッド型の業務指揮系統と言い換えてもよいでしょう。

このような組織では、仕組みとしてピラミッドの各所にノウハウや情報が蓄積されるので、安定性の高い組織となります。
またこの方法が各組織に均一に敷衍され、徹底した社員教育で社員の質も均質ですので、上からの指示もよく通りますし、組織内の別部署との連携も取りやすいといえるでしょう。

しかし、構成員個人が別組織に出て活動する際は、このような仕組みがないと動きにくいということもあるようです。
 

垂直統合型のサムスン

一方のサムスンは、いわば垂直統合型の指揮系統です。
各事業のトップから、上意下達にストレートに情報伝達がなされるので、実行のスピードが格段に速くなるのです。

別部門とのつながりはほぼ皆無ですが、超優秀な人材のみから構成されるので、無駄もなくアウトプットもハイレベルです。

韓国に限らず、日本以外の国の企業はおおむねこのような傾向にあるようです。

ただし、仕事のやり方はいわゆる「個人商店」で完結するので、組織には情報やノウハウが残らないという特徴もあります。

 

敢えて高度な組織化をしない、という第3の選択も・・・?

また、別の自動車会社で勤務した際にトヨタ自動車と比べて面白かったも、これらの組織構造からくる社風の違いでした。

この自動車会社は、自由闊達で横並び、穏やかに過ごすのも挑戦するのも本人次第、というところです。
指揮系統としては、文鎮型、といえるでしょうか。

このような組織では、時に天才的な発想が生まれることもあり、その発案者を中心としたプロジェクトチームを作って実行する、というやり方でした。

しかし、上層部からするとコントロールが難しい組織体制でもあります。

指揮系統

【トヨタ/サムスン/別の自動車会社 実際に勤務した3社の組織イメージ】

これらの指揮系統がいかなるものであるかは、職場の雰囲気にもにじみ出てくるものです。

働く側も、働かせる側も、このような組織や人材のタイプを知って、働き方・働かせ方の最良の方向性、組織や個人の能力の伸ばし方を考えるとよいのではないでしょうか。

 
次回は、トヨタとサムスンの社員の特徴・働き方・業績評価の違いについて考えてみます。

 
(※この記事は、技術オフィスTech-T代表 高原忠良講師からのご寄稿を、当研究所が再構成したものです。)
 


※参考文献:
[*1] 佐藤龍三郎「日本の「超少子化」―その原因と政策対応をめぐって―」


 

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