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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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前回のコラム「若手技術者の力をどう伸ばせばよいか?不確実な時代の日本製造業の組織づくり」では、ストレスの多い現代社会を耐え抜くには、会社組織そのものがもたらすストレスを排除する必要があり、それについては組織のトップが積極的に変わる必要があるということを説明しました。
とはいえ、自ら変わろうと努力された指導者である岩出監督は非常に稀有な例です。現実には、トップの考えをいきなり変えるのは難しいものです。
今回は、人材育成担当者や技術系の管理職が、技術者(エンジニア)をよりストレスに負けない優秀な技術者にするという目的に絞って、取り入れるべき考え方のポイントを見てみましょう。
古典的な心理学の実験ですが、教師が名簿から無作為に抽出した生徒について「優秀になる」と生徒たちの前で公言することで、名指しされた生徒たちの成績が上がるという結果が得られたといいます。
この結果には様々な反論もあるようで、必ずしもほめればよいというものではありません。不適切なタイミングで褒められれば人間は増長しますし、妬みも買うかもしれません。
しかし、少なくとも前回コラムの帝京大学の例のように、会社の先輩が後輩の世話を焼き、誰の目にもわかるように大事に育てようという姿勢を見せるならば、後輩のやる気を引きだすことにつながり、無駄にはならないかもしれません。
だれしも褒められて嫌な気持ちはしません。そして、大切にされた後輩のような例が増え、組織にそのように目下の人を大事にする考えが浸透すれば、いずれは人の成長を支えるられる組織に変われるかもしれませんね。
密室に入れた被験者である4歳児の前に、皿に入った1個のマシュマロを置き、実験者は部屋を出ます。部屋を出る前に、実験者は、自分が部屋に戻ってくるまでマシュマロが残っていれば2個のマシュマロがもらえる、と4歳児に告げます。実験者が戻ってくるまでに20分もかかるようですが、そんな長時間マシュマロのつまみ食いを我慢できた子は自制心が高く、将来社会的に成功する者が多かった、という実験がありました。
しかし、この話はこれで終わりではありません。実験は、人が「食べたい」という本能的な欲求をどうやって耐えるか、というその方法まで明らかにしてくれたのです。
マシュマロを我慢できた子の多くは、実験者が戻ってくるまでマシュマロから目をそらして、できるだけそのことを考えないようにしていたそうです。
つまり、誘惑に耐えるストレスを感じずに済ませるには、誘惑の源自体に触れないということが大切だということです。
ラグビー日本代表は強化合宿中の長期間、家族との時間も制限されたということです。このように期間を決めて、誘惑源から離れてやるべきことに集中するというのも、基本的ですが目標達成のためには大切なことなのかもしれません。
従って、チームで取り組む人材育成には、誘惑そのものに向き合わないで済む環境づくりを個人個人に意識させるということも必要かもしれません。
環境の変化自体がストレスになるように、先のことを憂い、昔のことを嘆くことも同様に大きなストレスになります。
つまり、いま取り組んでいることに対して結果を出したければ、余計なことを考えず、「今この瞬間」にやるべきことにのみに集中することが最大のパフォーマンスを出すという考えです。
そのためには、【勝手に未来や過去のことを考えてとらわれる】ことがないよう、脳を訓練する必要があります。
脳を訓練、というとなにかアブナい響きかもしれませんが、昔から仏教では雑念を排除して思考をクリアにするいわば訓練として、座禅を取り入れてきました。
マインドフルネスとはこの座禅が心身を整えるという効果に注目して、アメリカの医療界で発達した手法です。一定の指示に従って自分の体の各所の感覚を意識する訓練や、自分が今感じている思考を一歩引いた部分から観察する訓練をすることで、自分の思考を客観的に眺めたり、「今この瞬間」のみに集中して他の煩わしい思考を切り、ストレスを軽減する手法です。
もし、自分のプライドの高さや過去の失敗にとらわれてストレスを感じてしまう技術者の場合は、このような研修を取り入れて自分でできる対処法を身に付けるというのも必要かもしれませんね。
(アイアール技術者教育研究所 M・H)