技術者のコミュニケーションとアビリーンのパラドックス

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技術者とコミュニケーション

開発プロセスにおける議論やレビュー会議、あるいは顧客との議論におけるコミュニケーションの改善のためのヒントとして、「アビリーンのパラドックス」という話をまじえながら説明したいと思います。

 

1.アビリーンのパラドックスとは

アビリーンのパラドックス」(Abilene paradox, アバリンパラドクス)は、簡単に言えば、ある家族が全員行きたくなかったアビリーンという町にあるレストランに、合意して行ってしまったという話です。

最初にアビリーン行きを提案した者は、元々行きたくはなかったのですが、皆に良かれと思い提案しました。
ある者は、実は行きたくなかったけど、提案者がせっかく提案してくれたのだからと賛成して行きました。
またある者も、実は行きたくなかったけど、皆が賛成するので、同調して賛成して行きました。
結局楽しくはなかったのですが、帰ってきてから全員が実は行きたくはなかったというのが分かり、何故行ってしまったんだろうと話し合ったというお話です。

他への思いやりは良かったのですが、本音を語れず、全員が望むことのなかった結果にたどりついたというものです。

 

2.技術者に必要な気配りと不要な気配り

開発プロセスにおける議論やレビュー会議において、データや資料を分かりやすく見える化したり、簡潔で論理的な説明にしようとするような気配りは重要です。

一方、懸念点について言及して不安にさせるのは止めようとか、質問すると困るかもしれないので言わないでおこうというような気配りは、技術議論には全く不要で、誤った方向に進んでしまう可能性があります。

知識が浅いメンバーは、素朴な疑問・気付き・考えを遠慮して言えなかったりすることもあります。
しかし、それらが発言された場合に、それをきっかけに経験豊富なメンバーが深いポイントに気づいたり、より深い思考をめぐらすことができたりすることで、議論が深まるケースも多いです。大至急アクションを取らなければいけないような重要なポイントにたどりつく可能性もあります。

 

3.コミュニケーションの土台は信頼関係

コミュニケーションは、信頼関係を土台にしています。
立場や経験の違いにかかわらず、風通しの良いオープンな会話ができるような信頼関係を作れるよう、平素からの意識と継続的な努力が必要です。

発言をしない空気感、発言をしにくい空気感があるとしたら、改善の努力をしなければなりません。
まずは遠慮せず発言をするそれを歓迎してまずはよく聞くという感じが望ましいですね。

図1は競争力のある製品を開発するためのキーファクタをまとめたものですが、良いコミュニケーションと良い討議は重要なファクタです。
懸念点に対してオープンで深い本音での議論ができることにより、より良い製品やシステムができます。

開発プロセス、品質マネジメントプロセスにおける議論が形骸化して、「やらないよりはマシ」のようになるのではなく、深く質の高い議論をすることで、そのプロセスの効果を最大化するように活用すべきです。

 

競争力のある製品を開発するためのキーファクタ
【図1 競争力のある製品を開発するためのキーファクタ】

 

そして、開発プロセスなどにおける議論やレビュー会議での議論を深く質の高いものにすることは、競争力あるエンジニアの要素を強化することにも繋がっています。さらにマネジメントを行う者も含め、全ての関係者の成長とモチベーション向上にも役立ちます。(図2)

 

競争力あるエンジニアと環境
【図2 競争力あるエンジニアと環境】

 

良好なコミュニケーションは、双方の努力で築き上げるものです。

不要な気配りで本音を言えていない状況はありませんか?
自分自身にも問いかけてみましょう。
Am I going to Abilene? Are we going to Abilene?

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 

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