3分でわかる技術の超キホン 半導体レーザ(LD)の構造と発光原理
光通信では、光源として半導体レーザ(レーザダイオード, LD)が使われています。
今回のコラムでは、半導体レーザの発光原理について説明します。
1.半導体レーザの構造
半導体レーザの構造には、高効率の発光出力を得るためにダブルヘテロ接合が使われています。
[※ダブルヘテロ接合の基礎知識についてはこちらをご覧ください。]
図1に半導体レーザの構造とエネルギーバンドを示します。
[図1 半導体レーザの構造とエネルギーバンド]
半導体レーザでは、図1に示すように、3層のダブルヘテロ構造のP型半導体とN型半導体に挟まれた活性層に反射鏡を設け、「ファブリ・ペロ共振器」(※)を形成します。
このときの反射鏡は、半導体レーザを構成する半導体結晶の劈開面を利用することができます。実用上は、劈開面の保護と反射率を高める目的で被膜も形成することが多いです。
半導体レーザでの共振器の構成法としては、主に「端面発光型」と「面発光型」が用いられます。
「端面発光型」は先に紹介した方法です。
「面発光型」は、半導体基板面と垂直に共振器を構成する方法になります。
その他にも、共振器を半導体レーザの外部に設けた構成とすることもあります。
また、活性層においては、光を活性層内に強く閉じ込めるために、屈折率を周囲よりも大きくするといった工夫も施されます。これにより、活性層には、いわゆる誘電体導波路が形成された状態となります。
(※)ファブリ・ペロ共振器については別コラムで解説いたします。
2.半導体レーザの発光原理
(1)活性層内で反転分布形成
ダブルヘテロ接合に順方向バイアスをかけると電界が生じ、ヘテロ障壁のために活性層内で反転分布が形成されます。
そして、電子と正孔は活性層内で結合して自然放出により光が放射されます。
自然放出光は様々な方向へ放射されるので、反射鏡のない方向に進む光は、活性層内から出て行ってしまいます。
(2)誘導放出
電界が生じたことにより活性層内に供給される原子に、自然放出光が照射されることで誘導放出が起こり、光が増幅されます。
(3)増幅・定在波
反射鏡の方向へ進む光は誘導放出によって増幅され、減衰することなく同位相の光が重なり合い、定在波ができます。
その結果、レーザ発振することになります。
(4)電子と正孔の閉じ込め効果と光の閉じ込め効果
半導体においては、エネルギーバンドギャップが小さい方が屈折率は大きくなります。
したがって、レーザ発振時には、電子や正孔だけでなく再結合によって発生したフォトンも同じ活性層内に閉じ込められます。
キャリアとフォトンを同じ領域に閉じ込めることで相互作用が促進されて、活性層では誘導放出が高効率で起こります。
その結果として、より効率の高い発光を実現させています。
3.LDとLEDの違いは?
半導体レーザ(LD:Laser Diode)と発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)の構造には、どちらもダブルヘテロ接合が使われています。
LDとLEDの差異としては、LDが活性層に共振器の機能を有していることです。
すなわち、LDはレーザの発振条件を満たしたLEDといえます。
LDとLEDは、どちらも電気をそのまま光に変換でき、少ない消費電力で効率が高く、駆動する際には同じ回路を流用することもできます。
ただし入力においては同じでも、出力は異なります。
LDの出力はレーザ光であり、位相が揃っています。そのため、光の広がりが少なくエネルギーを制御しやすいので、光ファイバ通信用の光源として使われています。
一方、LEDの出力は、電子と正孔の結合による自然放出光のため光出力パワー自体は高いものの、その出力光が広がりを持つ性質があるため、照明などに使われます。
LDとLEDは、似て非なるデバイスなのです。
(日本アイアール株式会社 N・S)