3分でわかる技術の超キホン 「ダブルヘテロ接合」とは?(ホモ接合/ヘテロ接合との比較)

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ダブルヘテロ結合(二重ヘテロ結合)

光通信では、光源として半導体レーザが使われています。
今回は、その半導体レーザに最もよく使われている構造である「ダブルヘテロ接合」(ダブルヘテロ構造)について「ホモ接合」、「ヘテロ接合」と比較しながら説明します。

1.ホモ接合とは?

「ホモ接合」とは、同じ半導体でpn接合を作る接合をいいます。
(※pn接合の説明は「pn接合とは?P型/N型半導体の基礎知識と接合の原理」をご参照ください。)
 
例えば、P型半導体のSiとN型半導体のSiでpn接合を作る場合がホモ接合になります。
Siに異なるドーパントをppmレベルで入れるだけで、P型半導体もしくはN型半導体になります。
しかし、キャリアの種類以外の性質はほぼ変わりません。
また、エネルギーバンドギャップの大きさも変化しません。

ホモ接合に順方向バイアスをかけると、電子も正孔も接合の境界部分を通過して拡散します。
これは、キャリアの運動エネルギーが大きいためで、電子と正孔が再結合する領域が大きく広がり、再結合する確率も低くなります。
すなわち、再結合する領域が広がることによって単位面積当たりの光エネルギーが低下するので、反転分布の形成が困難になり、自然放出光のみが放射されることになります。

発光を目的としないダイオードやトランジスタは、主にホモ接合で構成されています。

 

2.ヘテロ接合とは?

「ヘテロ接合」とは、性質の異なる半導体でpn接合を作る接合をいいます。

実用上使われているヘテロ接合は、Ⅲ-V族化合物半導体や混晶半導体の組み合わせを使ったものが多いです。
例えば、P型半導体をGaAs、N型半導体をAlGaAsとしたヘテロ接合が使われています。

図1にホモ接合とヘテロ接合のエネルギーバンドを示します。
ホモ接合では、P型半導体とN型半導体のエネルギーバンドギャップが同じであるのに対し、ヘテロ接合では、エネルギーバンドギャップの大きさが異なります
 

ホモ接合とヘテロ接合
[図1 ホモ接合とヘテロ接合のエネルギーバンド]

 

ヘテロ接合の発光原理

ここでは図1に示すように、N型半導体のエネルギーバンドギャップをP型半導体よりも大きくしています。
ヘテロ接合に順方向バイアスをかけると、N型半導体の電子は、P型半導体側に流れ込み、P型半導体の接合の境界付近にあるくぼみに閉じ込められます。
そのため、電子はP型半導体内には僅かしか拡散しません。

一方、P型半導体の正孔は、ホモ接合の場合に比べると接合部分のエネルギー(図1の赤い部分で「ヘテロ障壁」と呼ばれます)が高いため、N型半導体にほとんど拡散しません。
つまり、正孔も接合の境界付近の価電子帯のくぼみに閉じ込められます。

このように、電子と正孔はP型半導体の接合の境界付近に閉じ込められ再結合し、発光が起きます。
ホモ接合と比べると、ヘテロ接合は電子と正孔が再結合する確率が高いため、発光効率が高くなります。

また、このときP型半導体の接合の境界付近で再結合することから、発光する光の波長は、P型半導体のエネルギーバンドギャップに相当するものになります。

 

3.ダブルヘテロ接合とは?

「ダブルヘテロ接合」(二重ヘテロ接合)とは、P型半導体とN型半導体の間に異種の半導体を挟むpn接合をいいます。

図2にダブルヘテロ構造のエネルギーバンド図を示します。
P型半導体とN型半導体とそれぞれに挟まれた半導体の3層構造になっています。

挟まれた半導体は、「活性層」と呼ばれ、電子と正孔が結合して発光が起きる層です。
また活性層を挟む層は「クラッド層」と呼ばれます。
 

ダブルヘテロ接合
 
[図2  ダブルヘテロ接合のエネルギーバンド]

 

ダブルヘテロ接合の接合条件

ダブルヘテロ接合では、以下の3条件を満たすように半導体同士を接合させます。

  • エネルギーバンドギャップの大きいP型半導体とN型半導体で、エネルギーバンドギャップの小さい活性層を挟みます。
  • P型半導体の伝導帯と活性層の伝導帯とのエネルギー準位差を大きくします。
  • N型半導体の価電子帯のエネルギー準位を活性層の価電子帯よりも低くします。

 

ダブルヘテロ接合が高効率の発光を実現できる理由

ダブルヘテロ接合に順方向バイアスをかけると、N型半導体から活性層に電子が注入され、P型半導体からは活性層に正孔が注入されます。
エネルギーバンドギャップが大きなP型半導体とN型半導体から注入されたキャリアは、「ヘテロ障壁」というエネルギーの壁のために、エネルギーバンドギャップが小さな活性層内に閉じ込められます。
したがって、活性層で反転分布が形成されます。

このため活性層に電子と正孔が貯まることになり、電子は近くにいる正孔に引き寄せられて結合しやすくなります。
供給される電子と正孔のほとんどがこの活性層内で結合し、光を出します。また、無駄になる電子、正孔が少ないため、同じ電流でもシングルヘテロ構造の場合より強い発光となります。
そして、電子と正孔は活性層内で結合して自然放出光が放射され、この自然放出光に誘導されて、誘導放出が起こります。
 
活性層の屈折率を大きくしておくと、再結合によって発生した光子も同じ活性層内に閉じ込められることになります。(半導体においては、エネルギーバンドギャップが小さい方が屈折率は大きくなります。)

したがって、ダブルヘテロ接合では、活性層内のキャリアの閉じ込め効果と光の閉じ込め効果により、より高効率の発光が実現できます。
そのため、発光を目的とするLEDやLD(レーザダイオード)は、一般的にダブルヘテロ接合で構成されています。

 
(日本アイアール株式会社 N・S)

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