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LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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タッチパネルは、スマートフォンに使用されているように現在の電子機器には非常に多く使われています。
そもそも、1980年代に登場したタッチパネルは、当初は、FA、医療機器、POSといった据え置き型端末の制御デバイスとして広がりを見せました。その後、パソコンやPDAといった情報端末に採用され、モバイル端末のスイッチとして一般化しました。最近は、スマートフォン、タブレットPCやデジタルサイネージといった用途で私たちが使用する機会が増えています。
今回は、タッチパネルの基礎知識として、種類(方式)とその特徴についてみていきましょう。
目次
タッチパネルとは、電子機器を操作するスイッチの一種です。
液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイと一体となって、電子機器を操作します。
タッチパネルは、指が触れた位置をセンサーで検知して、どの表示要素が指定されたのかを特定し、対応する動作を行なわせるためのものです。
まず、操作用機器としてのタッチパネルの特徴(メリットとデメリット)についてみてみましょう。
タッチパネルには、このような長所、短所がありますが、今では身近な入力デバイスとして様々な製品に採用され、無くてはならない電子部品になってきています。
次にタッチパネルには、どのような種類のものがあるか見ていきます。
代表的なタッチパネルの方式としては、大まかに、
の4つが挙げられます。
では、それぞれの原理や構造についてみていきましょう。
図1は、抵抗膜方式の簡易的な構造を示した図です。図2は、検出原理を示した図になります。
【図1 抵抗膜方式の構造】
【図2 抵抗膜方式の検出原理】
抵抗膜方式は、2枚の透明電極膜を使用して構成されており、それぞれの電極はスペーサによって少しだけ空間を設けられて上下に配置されます。
図1(b)のように指でタッチすると上下の電極が接触して、指を触れた際の抵抗値の変化によって、タッチを検出する方式です。厳密には抵抗値によって変化する電圧値を測定し、タッチを検出することが出来ます。
タッチの位置を検出する場合は、図2(B)のように、上側の電極をX電極、下側の電極をY電極として、2枚の透明電極膜に少しだけ空間を設けて上下に配置します。透明電極膜には、抵抗値があり、位置によって抵抗値が変わります。したがって、通電時、抵抗値によって変化する電圧値の変化から、それぞれの電極の座標を算出し位置を特定することが出来ます。
透明電極膜の材料には、ITO(酸化インジウムスズ)が使用されることが多いです。
抵抗膜方式の長所としては、ペンや手袋等どのようなものでタッチしても反応することが出来る、電磁ノイズに強い、コストが低いという点が挙げられます。
抵抗膜方式の短所としては、膜を2枚重ねないといけないので、透過率が低く表示品質が劣ることです。また、耐久性や耐衝撃性が比較的低く、画面サイズが大きくなるほど検出精度が下がるなどが挙げられます。
静電容量方式は、指を触れた際の静電容量の変化によって、タッチを検出する方法です。
図3は、静電容量方式の原理を示した図で、図4は位置検出の様子を示す図です。
【図3 静電容量方式の原理イメージ】
【図4 静電容量方式における位置検出】
図3においては、送信用と受信用の2つの電極が使用されています。
1つは電界を発生させることが出来、もう1つは電気力線を吸収するため、2つの電極の間には擬似的なコンデンサが生成されています。指を近づけた際に、電界と指の間に擬似的なコンデンサが生成された結果、静電容量が減少したタイミングで、タッチを検出するという原理になります。
図4のように送信用の電極と受信用の電極を格子状に配置することで、静電容量が減少したセンサの座標から、タッチの位置を検出することが出来ます。
静電容量方式の長所としては、複数タッチ検出が可能、湾曲状でもタッチ可能(柔軟性)、耐水性という点が挙げられます。
短所としては、静電気によって感知しますので、静電気の発生しないものや、手袋をした手では反応しないことが挙げられます。
超音波方式は、指を触れた際の超音波の変化によって、タッチを検出する方法です。
図5は、超音波方式の原理を示した図で、図6は、位置検出の様子を示す図です。
【図5 超音波方式の原理イメージ】
【図6 超音波方式における位置検出】
超音波方式は、図5に示すように、超音波を出力する発振子と受信する受信子を使用して構成されています。
発振子から出力された超音波は、表面弾性波として表面パネルを通り、受信子に伝わります。
受信子では常に信号強度を測定しており、指を触れて表面弾性波の信号強度が変化したタイミングで、タッチを検出するという原理となります。
タッチの位置を検出する場合は、発振子、受信子、反射アレイを図6のように配置します。
発振子から出力された超音波は辺に沿って直進しますが、反射アレイによって90°反射し、タッチパネル上を通過して対辺まで進みます。対辺にも反射アレイが配置されており、再度90°反射して受信子に伝わります。パネルを通過する位置によって、受信子までの到達時間が異なり、信号強度が変化した時間から、それぞれの軸の座標を算出し位置を特定することが出来ます。
超音波方式の長所としては、タッチパネル表面の映像が綺麗(透過性が高い)、表面が傷ついてもタッチ検出可能、故障が少ない(耐久性) という点が挙げられます。
短所としては、超音波を吸収できるやわらかさのあるものでは反応しにくいです。また、パネル上に付いた水滴や小さな虫などの異物にも反応してしまいます。
赤外線(光学)方式は、指を触れた際の赤外線の変化によって、タッチを検出する方法です。
図7は、赤外線方式の原理を示した図で、図8は、位置検出の様子を示す図です。
【図7 赤外線方式の原理イメージ】
【図8 赤外線方式における位置検出】
赤外線方式は、図7のように、発光素子と受光素子を使用して構成され、それぞれの素子は対面上に配置されます。発光素子から出力された赤外線が、常に受光素子で検知されます。指を触れた際に受光素子が赤外線を検知できなくなったタイミングで、タッチを検出するという原理となります。
タッチの位置を検出する場合は、いくつか種類があります。図8に示す方式では、発光素子と受光素子の組み合わせをX軸用とY軸用に用意します。指を触れた際に、受光素子が赤外線を検知できなくなったタイミングで、それぞれの軸の座標を算出し位置を特定することが出来ます。
赤外線(光学)方式び長所としては、10点以上のマルチタッチを検出可能、タッチパネル表面の映像が綺麗(透過性が高い)、軽量であるという点が挙げられます。
短所としては、イメージセンサーを表示領域の外側に付けると言う仕組み上、フレームが分厚くなります。また、赤外線の影で検知するため、外光にも影響されやすいです。
以上の4つの方式を比較すると、表1のようになります。
方式 | 抵抗膜方式 | 静電容量方式 | 超音波方式 | 赤外線方式 |
光透過性 | △ | ○ | ◎ | ◎ |
打鍵性能 | △ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐久性 | × | ◎ | ◎ | ◎ |
デザイン性 | 〇 | ◎ | × | × |
マルチタッチ | × | ◎ | 〇(最大2点) | ◎ |
コスト(小型) | ◎ | 〇 | △ | △ |
コスト(大型) | × | △ | △ | 〇 |
主な用途 | FA機器 券売機 工作機械 |
スマートフォン タッチモニタータブレット |
FA機器 券売機 |
デジタルサイネージ |
【表1 タッチパネル方式の比較】
タッチパネルの性能は、日々進化を続けていますので、今後は変わってくるかもしれません。
各方式の基本的な特徴を理解した上で、必要に応じて選択するのが良いでしょう。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
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