【センサのお話】欠陥でセンサを作る?(酸素センサ、NOxセンサ、ダイヤモンドセンサの原理)
鉄鋼部品が、応力集中部に存在した不純物の非金属介在物を起点に破壊する例があるように、材料に関しては不純物や材料欠陥は「嫌われ者」です。
欠陥という言葉自体、とてもネガティブな響きがあります。
しかしながら、あえて欠陥を作ることによりセンサができたケースがあります。
酸素センサの原理
ジルコニア(二酸化ジルコニウム、化学式:ZrO2)に酸化イットリウムY2O3を添加することにより、格子欠陥(格子空孔)が作れます。この格子欠陥には、イオンが入り転々と移動できます。
実際には、ジルコニアが、O2-イオンの自由な移動ができる固体電解質と呼ばれる物質となります。
酸素センサで用いられるジルコニアは、酸化イットリウムの添加で結晶構造を安定化させますが、機械的特性向上のため変態の余地をわずかに残すため、部分安定化ジルコニアと呼ばれます。
ジルコニアを触媒金属でサンドイッチし、片側の面で、触媒金属による反応で酸素を酸素イオンO2-にすると、酸素は、イオンとして動けるようになります。ジルコニアの両側で、酸素イオン濃度差が有る場合には平衡化しようとして、酸素イオンが格子欠陥を渡り、反対側へ移動します。
O2-の移動は、e-電子の移動を意味しますから、電流が流れることになります。反対側で、酸素イオンは、別の触媒金属により、酸素イオンから、酸素に戻されます。
片側の酸素濃度が多いほど、大きい電流が流れるため、電流を検出することより酸素濃度を計測することができます。
NOxセンサの原理
エンジンから排出される窒素酸化物NOxは、NOとNO2です。
NOx濃度を検出するためにも、酸素センサの原理が活用できます。
すなわち、直接NOx濃度を検出するのではなく、触媒金属によりNOxから酸素を分離し、その分離された酸素濃度を酸素センサの原理で検出します。
この時の酸素濃度は、分離される前のNOx濃度と比例関係にあるため、NOx濃度を知ることができます。
この原理を応用すると、酸素を含むガス(例えばSOx)の濃度検出は、酸素を分離することにより可能だということになります。
ダイヤモンドセンサ(磁場センサ)の原理
ダイヤモンドに格子欠陥を作ることにより超微弱な磁場を検出することができます。
不純物の窒素を含んだダイヤモンドをベースに作ります。
窒素の隣に格子欠陥(空隙)を作り、この窒素と空隙の部分に、ダイヤモンドに元々あった電子e-を取り込みます。
窒素と空隙の部分は、窒素Nitrogenと空隙VacancyのNとVで、NVセンタと呼ばれています。
空隙は結晶格子中の炭素原子Cを高エネルギ電子線を用いてとばすことにより作ります。
最終的に、どうやって磁場を検出するかというと、電子e-を取り込んだNVセンタが、磁場に反応して向きを変えることと、磁場の強さに反応してスピン回転と呼ばれる回転数を変えることを利用します。
このような原理のため、超微弱な磁場を検出することができます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
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