【半導体製造プロセス入門】リソグラフィー装置の基本② (コーター/現像装置/アッシング装置)
前回のコラムでは、リソグラフィー装置の中核を担う「露光装置」について紹介しました。
今回は、露光装置以外のリソグラフィー装置について説明します。
1.レジスト塗布装置(コーター)
レジスト塗布の際に使用されるのが「レジスト塗布装置(コーター)」です。
一般的には回転式のため、「スピンコーター」と呼ばれます。原理的に枚葉式しかありません。
レジストはウエハーの上に均一に塗布することが求められます。
図1に示すように、スピンコーターはまずノズルからウエハーの中央にレジストを少量落とします。その後、ウエハーを高速回転させることで遠心力を利用して、ウエハーの周辺部に向かってレジストを広げていきます。
レジストは加熱すると柔らかくなるため、レジストのコーティングがしやすいようにウエハーが載っているプレートは加熱されています。
【図1 スピンコーターの概念図】
レジストの膜厚は製造プロセス全体の様々な要因を考慮しながら決められます。
例えば、膜厚が薄いと露光時間は短くなりますが、エッチング工程での耐性は低くなります。膜厚が厚いと露光時間は長くなりますが、エッチング工程での耐性は高くなります。
実際の膜厚は、レジストの量、粘度、回転速度によって調整します。
スピンコーターの細かい配慮として、「エッジリンス機能」や「バックリンス機能」があります。
ウエハーの端は表面張力の影響によりレジストが少し盛り上がります。これを防ぐために設けられる機能が「エッジリンス機能」です。
また、レジストがウエハー裏面に回りこむのを防ぐ機能が「バックリンス機能」です。
スピンコーターは露光装置に比べると非常に簡便な装置ですが、細やかな配慮を行う必要があり、装置製造にあたってはそれなりのノウハウが求められます。
また、スピンコーターは露光装置との一体化を行う必要があり、露光装置とのインタフェースが重要なカギを握ります。露光装置とスピンコーターは、別のメーカーが製造している場合、露光装置メーカーとの経営的なアライアンスを組んで、インタフェースの共通化が図られています。
2.現像装置(デベロッパー)
「デベロッパー」は、露光後の処理を行う装置です。露光によってレジストが変質しますが、レジストがネガ型の場合、紫外線やX線が当たった部分が現像後に残り、レジストがポジ型の場合は、逆に紫外線やX線が当たらない部分が残ります。これも枚葉式です。
構造はスピンコーターとよく似ています。露光装置との一体化が必要な点も、スピンコーターと同様です。
デベロッパーでは、レジストの代わりに現像液をウエハーに噴射し、ウエハーを高速回転することで、均一に現像を行います。
また、ウエハーを回転させずにスプレーを用いる場合や、スリットを使ってウエハー全体に一度に現像液を噴射させるものもあります。
現像後には、残った現像液を洗い流す必要があることから、純水によるリンス工程があります。現像液用とリンス液用の二つのノズルが付いているのが普通です。すなわち、薬液を使用したウエットプロセスです。
3.アッシング装置
露光・現像されたウエハーに、エッチング等の必要な加工を行ったのち、不要になったレジストを除去します。
なぜかというとレジストの除去を行わないと、その上に構造を積み上げることができないからです。
(1)ウエットプロセスとアッシング
レジストの除去は大きく分けて二つあります。「ウエットプロセス」と「アッシング」です。
「ウエットプロセス」による方法では、洗浄装置を使用して専用のレジストの剥離剤を用います。
昔はよく使用されていましたが、近年のエッチングプロセスによる残渣がうまく剥離できないことや、廃液処理の問題があり、近年ではアッシングによる方法が主流となっています。
「アッシング」は、レジストを酸素プラズマで燃やしてしまう方法です。
プラズマは、簡単に言ってしまえば「炎」のことです。つまり、レジストを炎で焼いてしまう方法です。
具体的には、真空チャンバーに酸素ガスを注入し、マイクロ波を導入する等の方法で加熱します。酸素ガスを活性化(酸素プラズマ化)し、レジストと反応させることにより反応したレジストは有機物と水に分解します。
(2)アッシング装置の技術革新は?
アッシング装置にはバッチ式と枚葉式があります。ウエハーサイズが小さかった頃はバッチ式が主流でしたが、ウエハーのサイズが大きくなるにしたがって枚葉式が主流となっています。
アッシング装置はリソグラフィー装置の一種ですが、露光装置との一体化はあまり意識されていません。
なぜなら、アッシングは主にエッチング工程の後に行われるため、リソグラフィー装置群の中では独立しているからです。
また、アッシング装置はウエハーの大型化に対応する必要がありますが、他の半導体製造装置に比べると技術革新のスピードが遅いです。プロセス自体が単純であり、工夫の余地が少ない技術であるため、次から次へと新しい方式が現れるということが少なく「平和でのんびり」した装置といえます。
以上、2回に渡って、リソグラフィー装置について説明しました。
リソグラフィーの分野では装置、資材ともに日本のメーカーが高いシェアを持っています。
小さく精緻に作っていく日本のものづくりの特徴を生かしていると言えるでしょう。
次回は、エッチングの基礎知識について解説します。
(アイアール技術者教育研究所 F・S)