【半導体製造プロセス入門】「前工程」「後工程」の概要を凝縮まとめ!一気に読めて流れがわかる

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半導体製造プロセス(前工程と後工程の概要)

半導体プロセスは、大きく分けて二つの工程に分かれます。「前工程」と「後工程」です。

前工程」は、シリコンウェハーに回路を形成するまでの工程です。
後工程」は、回路が形成されたシリコンウェハーを半導体チップに切り出して、実際のIC・LSIとして出荷するまでの工程です。ちなみに、黒い物体からゲジゲジのような足が出ているIC・LSIの写真をよく見かけますが、これらは後工程で加工されたものです。

今回は、「前工程」「後工程」の概要について解説します。
 

1.半導体プロセス「前工程」の概要と流れ

前工程はさらに、「フロントエンド」と「バックエンド」に分かれます。

フロントエンド」は、シリコンウェハーにトランジスタ層を形成するまでの工程、「バックエンド」は多層配線層を形成するまでの工程です。
 

一般的な前工程を大まかに説明します。

まず入荷したシリコンウェハーを洗浄します。ここでウェハー洗浄装置群が必要になります。

そして、イオン注入装置熱処理装置を使って、シリコンウェハー全体にドーピングを施し、P型あるいはN型の半導体を形成します。

次に、写真の原理を使ったリソグラフィー装置をつかって、シリコンウェハー上にパターンを形成します。
これによって、加工したくない部分は「レジスト」と呼ばれる樹脂によって覆われますが、加工される部分はウェハー表面がむき出しになります。

そこで、エッチング装置や前述したイオン注入・熱処理装置、あるいは成膜装置によってレジストに覆われていない部分が加工されます。エッチング装置は、レジストに覆われていない部分のウェハー表面を削るための装置です。これによって、ウェハー表面に微細な凹凸を作ります。
そして、前述したイオン注入・熱処理装置によってレジストに覆われていない部分にドーピングを施します。ちなみに、ドーピングが行われた層のことを「拡散層」といいます。

さらに、成膜装置によって金属配線の部分や、電極となる部分、絶縁膜となる部分に必要な薄膜を載せます

この間、加工工程の要所で洗浄装置・乾燥装置によって頻繁に洗浄が行われます。

一連の加工が終了すると、レジストは取り除かれ、さらに上部の構造を形成する工程に入ります。
上部の構造の加工はレジストのパターンを変えてはいますが、前述の工程と同じように行われます。

つまり、前工程の加工は、レジストのパターンを変えながら、複数回同じ工程を繰り返してウェハーに積み重ねるように行われることになります。これは「循環型」の工程といえるかもしれません。

 

なお、バックエンドでは、ドーピングは必要ありません。
なぜかというと、多層配線層ではあくまでもトランジスタ層の素子間の配線を行っているだけで、素子そのものの形成を行っているわけではないからです。そのため、イオン注入・熱処理装置は使用しません。
ただ、トランジスタ層は原則として単一層なのに対して、多層配線層では複数の層が重なって形成されます。そのため、多層配線のための配慮が半導体製造装置に求められます。

また、近年、絶縁膜の材料が変化して、従来の成膜装置だけでは対応しきれないという状況になってきています。そのため、材料の変化に対応した技術開発が行われています。

 

2.半導体プロセス「後工程」の概要と流れ

後工程では、まずウェハーに形成された半導体チップを個々に切り出して、電気的特性を検査します。
これにはプローピング装置が用いられます。

そして、パッケージに収容可能な厚さまでウェハーの裏側を削ります
これにはバックグラインド装置が使用されます。

バックグラインドが終わると、ウェハーを半導体チップに切り出す「ダイシング」が行われます。

その後、パッケージに半導体チップを貼り付ける工程に入ります。
これには、ダイボンディング装置が用いられます。

前述したようにIC・LSIの最終的な姿はゲジゲジのような端子がついていますが、この端子と半導体チップは、パッケージ内部で金線によって接続されています。これを行うのがワイヤボンディング装置です。ワイヤボンディングはこの段階、ダイボンディングの後に行われます。

ワイヤボンディングが終了すると、モールディング・封止工程に入ります。樹脂で固めるようにして、外部を包装する工程です。

その後、型番を書いたり(マーキング工程)、外観を整える工程の後、初期不良の発生を抑制するため最終的な検査工程に入ります(外観検査、バーンイン検査)。検査工程が終了すると、いよいよ完成です。

前工程では同じ工程を繰り返しながらウェハー上の構造を一段階ずつ積み上げていく循環型の工程なのに対して、後工程は一度行った工程は二度とやらない「フロー型」の工程です。
また、前工程では、化学反応や物理的な現象をうまく使って加工するのに対して、後工程は、機械加工的な工程が多いという特徴があります。

前工程・後工程ともに高い技術が要求されますが、この点、日本の半導体製造装置メーカーは、現在のところ要求を満たす水準をおおむね維持しているといって良いでしょう。

 

以上、今回は半導体プロセスの前工程・後工程の概要について解説しました。
本文でも触れたように、日本の半導体製造装置メーカーの技術水準は非常に高いですが、半導体業界は競争が激化しています。このため半導体製造装置に求められる技術水準も年々高くなっています。

 
次回は、シリコンウエハーと半導体製造の必要資材について解説します。

 

(アイアール技術者教育研究所 F・S)
 

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