【自動車部品と制御を学ぶ】回生ブレーキと廃熱回収の技術

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回生ブレーキと廃熱回収の基本を解説
システムや装置では効率の向上が重要ですが、車両システムにおいて効率を向上することは、燃費(電費)の低減を通じてCO2を低減する方策にもなります。
(電気自動車でも電気生成工程でCO2発生をともないますので、電費低減はCO2低減に貢献します)

環境活動に関する言葉に”3R“と呼ばれるものがあります。
3Rの三つのRは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)です。

「無駄のないように資源を使おう」という精神が基本ですが、車両においても「せっかく得た運動エネルギーや熱エネルギーを無駄にせず使おう」、それにより「効率を上げよう」というのが、ブレーキ回生と廃熱回収の狙いです。

 

「回生」と「再生」

ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)でブレーキ回生という言葉を使いますが、英語表現では、回復を意味する”recuperation“を用いる場合と、再生を意味する”regeneration“を用いる場合があります。
(例えば、”braking recuperation” または “braking regeneration”)
そのため、ブレーキ回生システムの略称で”R”があったら両方の可能性があります。
英単語の話はともかくとして、回生の考え方と原理を説明します。
 
回生と再生
 

図(A)は、ハイブリッド車や電気自動車のブレーキ回生の原理を示しています。図(A1)がモータによる走行時を表し、図(A2)がブレーキ回生時を表しています。

走行時には、図(A1)のようにモータによりタイヤを回転させますが、ブレーキ回生時には、図(A2)のようにタイヤの回転によりジェネレータ(generator、発電機)を回転させます。(図中の赤点線はエネルギの流れを表しています)

モータとジェネレータは基本構造が同じです。モータとジェネレータを独立に設ける場合と、一つの装置でモータとジェネレータ両方の機能を行う場合があります。
車両にブレーキをかける時にブレーキ回生システムは作動し、ジェネレータを回す負荷がタイヤの回転に対して抵抗力となり制動力(ブレーキ力)としてはたらきます

運転状況により、回生ブレーキとともに油圧ブレーキも使いますが、油圧ブレーキを作動させるには、そのためのエネルギを必要とすることと、ブレーキディスク部の摩擦に発熱ロスをともないますので、回生ブレーキの使用を増やした方が省燃費(電費)となります。

回生システムでのジェネレータによるバッテリ充電は、ブレーキ時だけでなく、アクセルを踏まない惰性走行時にも行われます。(惰性走行モードは「グライダーモード」などとも呼ばれます)

 

その他の回生ブレーキ

これまで説明した回生の原理の理解をベースにして、他の方式を見てみましょう。
以下図(B)は、モータや発電機を使うブレーキ回生システムの原理を一般化したものです。
 
その他のブレーキ回生システム
 
モータは回転力発生装置の一つで、ジェネレータは回転力吸収装置の一つです。
そしてバッテリは、電気というエネルギを蓄えるアキュムレータ(蓄積器)です。
そう考え、似たようなものを考えていくと、他の方式も理解できると思います。

実際の例としては、回転力によりポンプを回転させ、空圧力や油圧力を蓄え、発進や加速時など必要な時に、蓄えた空圧力や油圧力で回転力発生装置を作動させ最終的にタイヤを駆動させるものがあります。

プジョー(Peugeot)の「ハイブリッド・エア」と呼ばれるシステムでは、窒素と空気の混合物をアキュムレータタンクに蓄圧し、再発進時などには、蓄圧した圧力をタイヤ駆動力へと変換しています。

 

廃熱回収システム

ブレーキ回生システムでは、「せっかく加速して得られた運動エネルギを無駄にせずに利用する」という考え方ですが、廃熱回収システムでも同様で「せっかくの熱エネルギを捨てたり、わざわざ冷却せずに利用する」と考えます。エンジンや排気管などの部品だけでなく、モータ、インバータなど電気部品でも多くの熱を発生します。

ブレーキ回生システムでは運動エネルギを電気に変換しましたが、廃熱回収システムでは、以下図(C)に示すように熱を他のエネルギに変換します。

例えば、熱により蒸気を作り、蒸気力により回転力という機械エネルギを生み出します。
図(C)で「駆動装置」としているものは機械エネルギによって動かされる装置です。
車両では車両の駆動系装置を動かす場合もあれば、補機類など小さい装置を動かす場合もあります。
 
廃熱回収システム
 
図(C1)のケースでは、エネルギ変換装置と駆動装置が直結ですが、図(C2)のケースでは、一旦、エネルギ・アキュムレータに変換されたエネルギを蓄え、最適なタイミングで駆動装置を動かします
例えば廃熱により機械エネルギを得てその機械力でジェネレータを回し、発電した電気をバッテリに蓄えます。(ブレーキ回生システムで運動エネルギを使って蓄電するのと同様です)

原理を絵で描くと簡単ですが、廃熱回収システムでは、その構成・部品構造により新たな機械損失を生み、熱サイクル(例えばランキンサイクル)における熱損失もあります。車両全体効率を上げ、かつコストパフォーマンスの高いシステムにする開発が必要です。

ブレーキ回生の「回生」では、”regeneration”や”recuperation”という言葉を使いましたが、廃熱回収システムの「回収」では、一般的に”recovery“が使われます。
例えば、廃熱回収システムは”waste heat recovery system“(ウェイスト・ヒート・リカバリー・システム)と呼ばれています。

 

廃熱とゼーベック素子

廃熱を電気エネルギに変換する方法としては、ゼーベック素子を使うというアイデアもあります。

図(D1)に原理を示すように、二種類の金属(半導体)間に熱の差があると起電力が発生するという「ゼーベック効果」(seebeck effect)を利用します。
廃熱源からゼーベック素子の一方の金属(半導体)に高熱を導き、他方の金属(半導体)は低温部品と熱的に連結します。

ゼーベック素子には、逆に電気を与えると熱を発生するという「ペルチェ効果」(Peltier effect)もあります。(この場合、ゼーベック素子はペルチェ素子として機能)
そのため、発生させた電気をバッテリなどに蓄え、必要な時に熱に戻すということができます。
 
ゼーベック素子
 

図(D2)で示す例として、リチウムイオン電池のように温度コントロールが必要な装置に対しては、冷却が必要な時にゼーベック素子に吸熱・電気変換をし、加熱が必要な時には、蓄えた電気を用いてゼーベック素子から放熱させることができます。

図(D3)で示す例として、エンジン排気熱をゼーベック素子で吸熱・電気変換し、低温時に、蓄えた電気を用いてゼーベック素子から触媒に放熱させ、触媒の早期活性化を行うことができます。

ゼーベック素子は、熱・電気変換にのみ用いて、熱を必要とする時は、蓄えた電気を電気ヒータで使って触媒を加熱するという考えもあります。

いずれにしても、実際の適用のためには、システムとしてのコストパフォーマンスが重要というのは他の廃熱回収システムの場合と同様です。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
 

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